- Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480063137
作品紹介・あらすじ
武田、上杉、北条…数々の群雄が割拠し、しのぎを削った戦国時代。飢饉と戦争で疲弊した百姓は、社会的危機には公然と「世直し」を求めた。生き延びるために、ときに大名の戦争に参加し、また、隣村との境界争いなどにも武具を携えて参集した。いっぽう大名は、百姓に礼を尽くした施策を講じて領国の安定を図った。庶民の視点から乱世期の権力構造と社会システムをとらえなおす。
感想・レビュー・書評
-
村と戦国大名は相互主義的な関係であった。明治以降の官尊民卑の固定観念を払しょくする。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
戦国時代を、底辺(とよく言われる)の農民の目線で見てみる。「村」という単位で見てみる。
戦国時代は、飢饉の連続の時代だったという。それに加えて(なのか、こっちが鶏なのか?)大きな権力がなかったので、戦争が頻発する。
大河ドラマでは描かないけど、どの大名も、戦争となると、戦場地域を荒らし、農作物を略奪、女性はレイプ。
それどころか、ニンゲンを、その昔の黒人奴隷のように「商品」として拉致して売りさばいている。
北朝鮮の拉致問題どころの騒ぎじゃない(笑)。
というか、そういう、「簒奪」という経済活動だったと言っても良い。
その戦争=紛争をブレイクダウン。細分化してクローズアップしてみると。
結局のところ、村と村との、「水=川=水源」や「山=山からの収穫」という「食べるものを得る権益」の奪い合い。
要は細かい境界争い。
例えば、武田信玄さんは、とにかく戦争が強かった?甲斐の国の統治が名君だった?
その裏には。
日常的に恒常的に、常に他国領地に侵略戦争を行った。打って出た。
そうすると、甲斐の国は戦場にはならない理屈。
そうすると、甲斐の村は簒奪されない理屈。
なるほど納得。
上杉謙信は、秋に関東に打って出て、快進撃。越冬して春に越後に戻る。
秋に打って出れば、収穫物を簒奪できる。
そこで大軍を食べさせる。
自国の厳しい冬の食べ物を節約できる(笑)。
で、厳しい冬が終わると、母国に帰る。
うーん、納得。
内政的には、強い権力がなくなったせい?で、頻発する村同士の諍いを調停する。
戦争=殺し合いはいちばん、経済的に不合理だから。
それが一歩進んで、調停ではなく、裁判官役になる。
一歩進んで、「俺に訴えろ、戦うな」という法制になる。
そこからさらに進むと、「戦ったものは理非問わず罰する」。
更に進むと、「もともと、刀や銃を持つんじゃない」。
それはそれで、中央集権の支配を受け入れることになるけど、「村」から見ても、「戦う自由」を手放す代わりに、「とりあえず突然殺されたり犯されたり奴隷にされたりすることはない」という平和を保証されることになる。ギブ&テイク。
ある観点から見ると、大名は百姓=村を支配しているのだけど、
別の観点から見ると、大名は百姓=村の生産、つまり平和を維持するために、場合によっては武力行使せねばならない。
「権力=殺す権利」を持っている人と、「生産手段」を持っている人。
お互いがお互いを必要としている。役割がある。だから、戦国を紐解くと、「徴兵制」的に大名のため、権力のために命を捨てる百姓は、ほぼいない。
みんな平気で、強力な人が来たら寝返る。秀吉が、家康が来たら寝返る。
ここ、一歩踏み込むと。
おらが村、の、水や山などの死活問題なら、隣村と殺しあう。
だが、統合した領地を、裁判官として束ねて他国からの武力行使を抑止してくれる権力。その権力の成り立ちのために殺しあうことはしません。
そういうことですね。
ここ、つまりは…
「そりゃ家族が飢えて死ぬかもなら、殺しあわねばならぬ。
だけど、例えばだけど。
アメリカが戦争するから、アメリカと仲良くしている日本としては、付き合いで戦争せねばならぬ。
だから、アメリカの費用節減のために、日本人も戦場に行って、他人と殺しあう。
そりゃ、ナンセンス。いやです」
とまあ、そういうことなんですね。
そこまでこの本はハッキリ言及していませんが、そこまで香りを漂わせようとしているなあ、と。
その辺はなかなか、「へー、面白いじゃん」と。
一方で、ちょっともやっとしたのは。
「じゃあ、室町時代、鎌倉時代は、村と、より大きな権力の関係は?どういう社会だったのか」
「戦国が飢饉だった、と特記して言えるのか」
「村の基幹が農業ならば、農業の技術進歩とも大いに関係があるはず、だがそこの考察はない」
というあたりでしょうか。
戦国時代っていうのが…
中央権力の化けの皮がはがれて、いっとき、弱肉強食が剥き出しになった時代。
ユーゴスラビアじゃないけど、タガが外れて、極論、村々レベルで弱肉強食仁義なき戦いの奪い合いになった時代。
それまでのモラルやルールがご破算になった時代。
そこで徐々に勝ち抜きトーナメントのように、ゼロベースから「合理的な権力と生産者の共存」が構築された時代。
そう考えることができるのかもしれませんね。
大河ドラマとも、司馬遼太郎ともちょっと違う。
敢えて言えば、カムイ伝の日置村の、前史的なオハナシの本というか。
割と、悪く無かったです。 -
めっちゃ面白かった。
北条氏の統治システムを中心に書かれており、百姓と領主の関係がよくわかる一冊。 -
3.7
-
面白かった。今までは教科書に書いてある、通り一遍的な理解しかしてなかったが、住民との関係で領国経営のあり方を描いた本を初めて読んだ。ただ、資料が北条氏に偏っている(北条氏しかない?)のは残念。
-
2020/3/5
戦国大名の統治について、百姓や農民の視点からそのあり方を述べた一冊。
戦国大名たちからの視点ではなく、百姓、農民からの視点であるというところが画期的、
内容はかなりコアなために難しいものもたくさんあったけど、大筋は2つに分かれていて、1つは、百姓、農民の世界では室町時代あたりからは常に飢饉に晒されることが多くて隣村や近隣の村とのトラブルが絶えない戦争状態が長く続いていたこと。2つ目は、そうした村同士の争いに次第に権力者が介入していうことになっていく。その過程で、北条氏の統治方法に目を向けながら、幕府の権力に従うのではなく、領国を統治する戦国大名に従っていくという構図がどうして出来上がっていったのかを検証していく、というものである。
当時の百姓たちは惣を形成していたというのは学生の頃に勉強する内容ではあるが、それが具体的にどういうことなのかというのがこの本に書いてある。
川の水や山の資源を巡っての諍いはかなりあったようで、権益を得るために仲間集めに必死になったり結構大変だったんだなあと。
また、北条氏の統治方法を見ていくと、そうした村の争いを大名に判断を委ねる仕組みである目安制を作ることで争いをしない方向に持って行くことや、戦国大名の領民から、御国という概念を生み出して、大名のために、国のために、という思いが人々の間に生まれるようになっていったり、現代の戦前のような感じなっていたり…ということにも深く解説がなされている。
新しい視点を持たせてくれる内容である。 -
前半が深刻な飢饉を背景として、戦争や戦争中の略奪が頻発する話。後半は検地、裁判、楽市など大名が領国経営を発展させていく話が北条氏におもに注目して論じられている。
著者は明言してないが、深刻な飢饉・戦争が経営ノウハウを発展させる土壌になったということだろうか。「では、なぜそれができたのか」ということがさらに気になった。 -
戦国の百姓ってなるほど、戦争と背中わせだったのねと。そういう世の中を終わらせたのが信長から家康に至る三傑の偉大さであり、かつ自由をも奪ったのがわかる。
-
室町が楽しい!時代の前提がわかると社会現象に説明がつくし、一つ一つ腑に落ちると面白味が深くなる
飢餓⇒食料確保⇒争い(戦国時代といわれる背景)
徳政も出される背景を考えれば納得ですね