越境の古代史: 倭と日本をめぐるアジアンネットワーク (ちくま新書 767)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480064684

作品紹介・あらすじ

古代の列島社会は、内と外が交錯しあうアジアのネットワークの舞台である。大王と異なるチャンネルで朝鮮諸国と結びつき、国内の政治を牽制する豪族たち。渡来人や留学生によって運ばれる技術・文化、そして政治的な思惑。外交と交易を独占し、中華的な国家形成を目指す日本王権と、国家の枠を飛び越え成長する国際商人の動き。倭国の時代から、律令国家成立以後まで、歴史を動かし続けた「人の交流」を、実証的に再現し、国家間関係として描かれがちな古代日本とアジアの関係史を捉え直す。

感想・レビュー・書評

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  • 日本の古代史を、東アジアにおける諸地域の密接なネットワークのもとに置きなおす試みがなされている本です。

    著者はまず、従来の古代史研究が、西嶋定生の東アジア世界論と石母田正の国際的契機論の枠組みによって規定されていたと述べて、その限界を指摘します。西嶋と石母田の枠組みにおいて古代の東アジア世界は、各国・各民族が中国を中心とした国際的政治秩序とそれによって伝播する文化を共有する一つの歴史的世界として理解されています。しかしそれにもかかわらず、両者は日本一国史を世界史的見地から把握するという姿勢が垣間見られると著者はいい、そうした一国史ないし民族史という枠組みそのものが見なおされなければならないと論じられます。

    そのうえで著者は、ヤマトの大王の力が強大な時代においても、国際交流は大王によって独占されていたのではなく、ヤマト王権のもとにつどう各地の首長層のそれぞれに独自の国際交流があったという事実を示しています。とくに新羅とのさまざまなレヴェルにおける交流について立ち入った説明がなされており、サブタイトルにも用いられている「アジアンネットワーク」の歴史的実態が明らかにされています。

  • 3世紀頃から11世紀頃までの、主に朝鮮半島と日本の交流史。「日本列島という枠で考えがち」ということを批判していながら、それでも結局はその枠を越えた話がなかったのが残念。記録に残ってないものはしょうがないのかもしれませんが。

  • 2009年刊行。4、5世紀に関しては好太王碑文等、日本(倭)と東アジア諸国との関連性の存在は知られ、それ以降も、少なくとも白村江戦までは、東アジアとの外交的関連性はよく描かれるところ。しかし、奈良時代・平安時代になると、遣唐使に矮小化され、遣唐使の廃止とともに交流がなくなったというようなイメージで語られることが多い。ところが、本書は、主として奈良・平安時代の日羅関係、交易関係を軸に議論を展開していく。教科書的内容から一歩前進した内容は、個人的にも興味深い。著者は関東学院大学経済学部教授。

  • 近代国家で棲息する現代人の意識を離れ、如何に古代における日本列島に棲息した人々の思い、生活、経済、政治などを読み解くか。東アジアにおける中国、朝鮮半島の豪族、国際商人たちの動きに翻弄されながらも、倭の立ち位置、身の処し方が実証的に再現されている。
    団塊の世代が学校でならった歴史、また、当時の古代にかかる学説から如何に頭の中の情報を入れ替えるか。
    越境の古代史、倭と日本をめぐるアジアンネットワーク、ますます古代にかかる色んな角度からの本を読みたいきっかけになりました(笑)。

  • 東アジア史という枠組みで何を教えるかを考える資料として。

  • 日本での倭から平安時代までの間の、主に日本、朝鮮、中国における交易や文化の輸入輸出などの歴史について。
    国を跨いだネットワークが国を築いて、また滅ぼす大きな要因となっているのだと感じた。その影には、ネットワーカーとしての交易者達がいた。
    歴史で習う以上に古代から常に外部からの視線を国家が伺い、深く影響、規定されていたし、また物や思想も思っている以上に流動していたことが分かる。
    中国型の権力構造を持つ天皇制国家と律令制、漢字の輸入、遣唐使など、中国が日本に与えた影響の大きさは目にする機会が多かったが、今まで、あまり語られてこなかった朝鮮の高句麗、百済、新羅との深い関わりについて書かれている。
    むしろ朝鮮半島諸国、(始めは百済で、のちに新羅と)の関係の方が特に初期はより大きかったと述べられている。
    中国は強大な国家としてあり、文化の発信源としてアジアの中心としてあり、日本は中国との繋がりを、朝鮮諸国を媒介として作っていた。
    地理的に見てみると当たり前に朝鮮半島が中国との間にあることが分かるのだが。
    仏教伝来にも、漢字伝来にも飛鳥の時代の百済からの渡来人達の技術無しにはなし得ないものだった。


    また流動するネットワークの結節点としての港町、ネットワーカーの新羅商人たちについて、琉球の関わりなど非常に面白く、今まで知らなかった歴史を知ることが出来た。

  • 難しい内容で、読み進むのが大変でしたが、アジアンネットワークという言葉が示す通り、日本はずっと昔からいろんな地域と関わりながら出来上がったのだと認識できた一冊でした。

  • [ 内容 ]
    古代の列島社会は、内と外が交錯しあうアジアのネットワークの舞台である。
    大王と異なるチャンネルで朝鮮諸国と結びつき、国内の政治を牽制する豪族たち。
    渡来人や留学生によって運ばれる技術・文化、そして政治的な思惑。
    外交と交易を独占し、中華的な国家形成を目指す日本王権と、国家の枠を飛び越え成長する国際商人の動き。
    倭国の時代から、律令国家成立以後まで、歴史を動かし続けた「人の交流」を、実証的に再現し、国家間関係として描かれがちな古代日本とアジアの関係史を捉え直す。

    [ 目次 ]
    序章 列島の古代史とアジア史を結ぶ視座
    第1章 アジア史のなかの倭国史
    第2章 渡来の身体と技能・文化
    第3章 血と知のアジアンネットワーク
    第4章 天皇制と中華思想
    第5章 国際商人の時代へ
    第6章 国際交易の拡大と社会変動
    第7章 列島の南から

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  • 日本という概念で思考するとよくわからなるなるところを、
    韓国、台湾、中国、も含めて、海辺の「その辺」のところを研究してみると、まあそういう内容だったような。

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著者プロフィール

田中 史生
早稲田大学文学学術院教授。日本古代史。
〔主な著作〕『日本古代国家の民族支配と渡来人』(校倉書房、1997年)・『国際交易と古代日本』(吉川弘文館、2012年)・『渡来人と帰化人』(角川選書、2019年)他多数。

「2021年 『古代日本対外交流史事典』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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