論理病をなおす!: 処方箋としての詭弁 (ちくま新書 816)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480065162

作品紹介・あらすじ

論理ではなく、詭弁を身につけてみないか?詭弁と聞くと、子供だましの芸当と聞こえるが、口先だけ達者になることではない。詭弁には、思考そのものを鍛える力がある。人が詭弁を使う時、その人特有の癖があらわれる。その癖を見抜くことで、思考のパターンが理解でき、おのずと論議も強くなる。論理的思考に満足しない人のための一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 人間には考えるにあたっての「癖」のようなものがあり、どうしてもある種の非論理的な思考法を採用しちゃう。
    でもそれがどんな「癖」かを知識として持っていれば、いくぶん「まし」にはなるんじゃないか。
    そんな考えのもと、豊富な実例をもって「癖」を紹介するとともに、平易ながら本質的な考察が添えられた本。
    本書にどこまで「効用」があるかはわからないけれど、面白く読めることは間違いない。

    本書のこの前提は、もう少し広げて考えることもできるんじゃないかな。
    たとえば、「自分だけの失敗学」を確立する。そこまで行かなくても、「自分の失敗データベース」を構築して、ときに整理する。
    そこからもし「自分の失敗の癖」を見出すことができたのであれば、今よりもずいぶんと「まし」な行動ができるんじゃないか、と僕は思うのだ。

    そしてもし実際にそれ(データベース構築)を実行した場合、失敗すればするほどデータが増えてデータベースが強化されるわけで、だから失敗することを望んでしまうという倒錯した心境に至るかもしれない、と想像したりもする。
    それはそれで「失敗にも折れない強い心」を手に入れたということで、歓迎すべき事態なのだろうか。あ、なんか話がどんどん違う方向に行っちゃってるので、この話題はこのへんで。

    最後に。本筋とは違うのだけれど、僕たちが議論に勝ちたがるのは不死を望んでいるからだというロジックは、なんだか否定できない魅力に溢れていて、さすがは修辞学者(なのかな?)と思わせる。

  • 詭弁を学ぶことで、詭弁に対抗する術をみにつけようという本。

    論理にこだわる人は詭弁にはぐらかされやすいしね。

    詭弁は構造から学ぶととても対処しやすいということがわかります。

    でも詭弁使う奴はクソ

  • 二章の「多義あるいは曖昧の詭弁」と五章の「性急な一般化」は自分自身も相当悩み悩まされている問題なので参考になった。この方はレトリックを専門になさっているそうで、例証の仕方に説得力がある。「実例はすべて普段の読書で記憶しているものから取り、わざわざそのために本を読んだりすることはない」と仰ってますが、謙遜ですよね?

  • 詭弁のパターンを研究することは、人間の思考・認識の癖を浮き彫りにし、レトリックや詭弁を研究する面白味がある。なぜなら、人間が繰り返し詭弁に翻弄されるのは、詭弁(とされるもの)の中にも、一概に虚偽とは言えない場合があるからだという。 語り口は軽妙、内容も知的好奇心をそそる本。だが、使われている例文が外語の翻訳と保守対立をテーマにしたものが多く、内容に取っつきにくくしているきらいがあるのが惜しい。もっとも、筆者が示唆するように、実際にあからさまな詭弁をよく目にするのが、そういった場面でのかもしれないが……

  • Sun, 06 Dec 2009

    著者は詭弁に関する研究者

    これって科学技術の分野で言えば科学哲学に相当する,ところだと
    おもう.

    詭弁とは 一見,論理的にみえてそうでないもの.
    世の中はホントに詭弁に満ちている.
    詭弁と言ってもピンと来ないかも知れない.
    たとえば

    「世の中の専門家というやつは,大体視野が狭くなる.
    僕の知っている専門家というのはみんな視野が狭かった.
    まぁ,専門家だというやつで,『僕は視野が狭くない』と言うやつもいる.確かにそういうやつもいるが,それはむしろ,僕に言わせたら,そいつの専門家としての水準が低いだけだ.ホント,専門家というのは視野が狭くて困る」

    これは,「先決問題要求の虚偽」というらしい.
    このどの辺が詭弁かは,ブログ読者に任せる.

    論証すべきことは 専門家が視野が狭いということなのに,
    それはほったらかして,トートロジックな議論をすることで
    まるで補強しているかのような錯覚におちいる.

    他にも
    ・過度な一般化
    ・時間的順序関係と論理的因果関係のとりちがえ
    など
    が,詭弁の代表例としてあげられている.

    これらも,非常に多い.
    たとえば,
    Aってことが起こったあとに,Bが起こったら
    ついつい,AがBの原因ではないかと考えてしまったりするのだ.
    前者は数事例だけから一般化して,一般的に通用する真理だとしてしまう件.

    例えば,姉歯事件を受けて建築士はみんなモラルが無くなっていると
    一般化するのは完全な詭弁だ.

    しかし,「藁人形攻撃」という詭弁には
    「あちゃー,この類のものは,ときどきやってしまっているかも・・・」
    と,思ってしまいました.・・・・・反省.
    僕にこの種の返しをやられた人は思い出して「ヘヘン!」と思ってください.

    以下,本書より引用(一部改変)
    教師が漢字を読めない学生に
    教師 「君は帰国子女か!?」
    生徒 「侮辱です!」
    教師 「何っ!君は帰国子女を馬鹿にしているのか」
    ある種の論点のすり替えをしているんですね.

    返しで相手の言葉を,その本意と違うところに意味づけしてしまって,
    「ええ?」って感じにさせながら,
    自分の失言をカバーしてしまうという.
    構造的には,結構ややこしいですよ.

    ある種,論理の枠の中では解釈しきれないし,上記が本質的に詭弁になりうるのは
    人間の文脈に依存した意味づけの傾向があってのこと.
    生徒が「帰国子女と言われたのは侮辱だ!」
    というのに答えて 
    教師が「何っ!君は帰国子女を馬鹿にしているのか」
    という分には,まったく詭弁では無いわけで.

    さてさて,
    なぜ,詭弁研究をするのか?
    別に本書は「詭弁上手になりましょう」とか「それは詭弁だ!と論破しましょう」という
    自己啓発本でもなんでもない.
    もちろんそういう使い方もできるが,
    本質はp.20
    「詭弁にだまされる人は,単に馬鹿だからではなく,人間の思考が,
    そのようなものを受け入れてしまう癖をもっているから騙されるのである.」
    つまり,詭弁というは,それ自体が
    往々にして「人間の言語解釈,世界認識,学習,推論の機構」と関わっているのです.
    だから,詭弁研究によって人間を知る事が出来る.
    これは,かなり本質だと思う.

  • 詭弁から学ぶというスタンスが新鮮だった。
    詭弁かそうでないかは、判断のレベル次第で判定が変わってくる、非常に微妙な問題を含むことも、心しておかなければ、と思う。
    それから、よくディベートの本などでも、「人と議論は別」などと書かれているが、本書では人と意見は完全には分離できないとあるのも、面白いところ。

    詭弁には部分的な真実が含まれているだけに、詭弁と判別しづらいとのこと。
    しかし…相手の議論をうまくかわせない人にとって、うかつに人の議論を聞こうとすると、取り込まれてしまう危険があるということでもある。
    他者の議論に対し、生産的で批判的に向き合うということがいかに難しいことか。

    それから、本書で「虚偽論」という学問分野があることを知った。
    もう少し知りたいとも思う。

    なるほど、この本は「だれでも言い負かせる」ための本ではなく、自分が詭弁を用いないようにという自戒を促すための本、ということなのだな。

  • 確証バイアス。自分の信念に整合する論理を構築し,反駁する。結論は,以下の引用(p.183)だろう。
    「人間は正しいと思って論理的な誤りを犯し,正しいと思って論理的な誤りを受け入れる」
    ここに至る過程が本書。「正しい」「誤り」はどの立場(観点)に立ち,踏まえる前提条件は何で,結論が適用される範囲はどこか。
    「理屈と膏薬はどこにでも貼り付く」:うん。

  • この本読んで、他の本の詭弁な文章を読み取る能力がスズメの糞ぐらいついたかもしれない。

    引用が多くてわかりやすいが、
    理解しにくい部分も多い。

    詭弁でうちまかせてやる!と下衆な誓いを立てたものから
    論争の中での詭弁の起点を知りたい
    と思う方にはこれ以上の本はない。

  • 詭弁を取り上げている本だが、人間が論理的であろうとすることには限界もあるようだ。具体的な例を示しつつ、詭弁の形態を挙げている。
    理屈を積み上げてみれば、明らかにおかしいと分かるもの、そうとも言えないものもあったり、人間の思考の癖というものは、なかなか厄介なものだとも思える。

  • 典型的な詭弁について,多くの例を挙げながら,また,過去の哲学者等の詭弁の分類等を含めながら,説明している.分かりやすく非常に面白い.

    本編とは離れるがあとがきの「語学の達人に学べるか?」が,また楽しかった.読ませる文章である.

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著者プロフィール

1958年香川県生まれ、筑波大学第一学群人文学類卒業。同大学院博士課程教育学研究科単位修了、琉球大学助手を経て、現在、宇都宮大学教育学部教授。専攻は修辞学(レトリック)と国語科教育学。著書に『反論の技術』『議論の技を学ぶ論法集』『修辞的思考』『論争と「詭弁」』『議論術速成法』『論より詭弁』『論理病をなおす! 』など。

「2010年 『レトリックと詭弁 禁断の議論術講座』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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