日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土 (ちくま新書 905)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480066091

作品紹介・あらすじ

海に囲まれた島国・日本にあっても、周辺には解決が困難な国境問題を抱えている。尖閣・竹島・北方領土。領土は魔物である。それが目を覚ますと、ナショナリズムが燃え上がる。経済的不利益に、自国の歴史を冒涜されたという思いも重なり、一触即発の事態に発展しやすい。突き詰めれば、戦争はほぼすべて領土問題に端を発する-。中ソ国境紛争やイラン・イラク戦争の現場に外交官として赴任、情報収集にあたり、その後、防衛大学校教授として日本の安全保障を研究・分析した外交と国防の大家が論点を腑分け。平和国家・日本の国益に適った戦略を明かす。

感想・レビュー・書評

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  • 北方領土、尖閣諸島、竹島について、日本の帰属を考えるために知るべき事実、領土問題を取り上げている。そんな事実があったのかと思わせることばかり。
    国境問題があった時、関係国のすべての人が、紛争を円滑に収めようとするわけではない。紛争を発生させ、それによって利益を得ようとする人々が常にいる。領土問題で重要なのは一時的な解決ではない。両国の納得する状況を作ること、できない間は領土問題で紛争に発展しない仕組み、合意を作ることである。政治家が対外的に強硬姿勢をとることは、どの国でも最も安価に支持率をあげうる手段である。
    独仏領土問題は、ドイツがフランスに譲歩、痛みつけられたことや権利主張するのではなく、経済力など有意な方が譲歩して安定した関係の基礎を作るというドイツの一貫した政策を紹介。自国領土の維持を最重要視という古典的生き方から自己の影響力をいかに拡大するかに切り替えたという。

    尖閣諸島の領有問題。日本人の大半は古代からの固有の領土と思っているが、沖縄はいつから日本になったかという問いではっとする。琉球王国を強制廃止して琉球藩を設置する1870年代以前には尖閣諸島は日本の明確な領土ではなかった。
    「尖閣諸島棚上げ、実質日本の管轄を容認」「中国の方から戦いを挑むことはしない」という日本に有利な決着を自らの手で放棄しているという流れだったのか。中国でも軍事力で奪取すべきという集団と、紛争を避けたいという集団がおり、後者といかに協力関係を強化すべきとのこと。

    北方領土と米ロの思惑のところでは、大日世界大戦終結間際の米国はソ連が参戦し関東軍が日本に帰れなくすることを強く望み、ソ連参戦の見返りに樺太南半分と千島列島を与えたという。
    1956年日ソ交渉で歯舞色丹返還の動き、二島返還やむなしとして解決しようとする日本側に対して、米側が国後択捉はソ連に帰属ということになれば、沖縄を米国の領土とするという揺さぶり脅しをかけたらしい!!!日ソの関係改善に強い警戒心を持つ現れだったという。現在のソ連側は「領土問題は解決済」、日本は「国後島・択捉島は日本固有領土である」という立場をとることで進展が得られていない。サンフランシスコ条約で大枠が決定しているのに、米国は、ソ連が譲ることのない国後択捉を日本に要求するようけしかけ、「北方領土は固有の領土でソ連が不法占拠している」という考え方を広めさせソ連との関係改善の封じ込めをしたという。同じ手法で今度は、尖閣諸島で対中国に使われようとしている。米国にとって安全保障上の最大の課題は中国になったからとのこと。尖閣諸島という問題利用で、日米軍事関係の強化利用を図っているという。

    竹島に関しては、米国側に韓国が積極的に働きかけていて、米国の判断が竹島の帰属に深刻な影響を与えるのに、日本は特段の反応をする必要はないと述べ、米国の指示は何でも聞く。米国が日本の国益に害することを行っても黙って聞く外交スタイルが如実に表れある意味、外交放棄とも表現。

    米国が日本防衛に対する義務は安保条約第五条 日本の管轄地に攻撃があった時米国の憲法に基づいて行動するということが条件。
    日本の管轄地の観点で、『北方領土、尖閣諸島、竹島  』は対象から離れるという。私を含めこれをしらない国民は多いのでは?!

    領土問題の平和的解決の一つとして、武力紛争の回避のため、積極的に国際司法裁判所の利用を挙げている。国際的に、棚上げ方式は積極的に評価されている。ソ連、中国、韓国の国交回復時に実質的に領土問題の棚上げで処理してきたが、日本政府がその事実を国民に説明していない。領土保持より国交回復優先、共通の利益、領土問題の比重を下げる、多角的相互依存関係作り、国連の原則を全面に出す、軍事力を使わない共通原則構築も触れている。

  • 領土問題を歴史的分析した本。いかに自分はメディアの情報に印象操作されていたかが分かる。双方の主張をフェアにみないとどうしてもバイアスがかかってしまう(自分の場合は日本寄りに偏ってしまう)

    とはいえこういった歴史問題は水掛け論になりがちだし、ナショナリズム的議論になるのは目に見えてるから、瀧本さんが言ってたように、交渉と両国の妥協点が解決のカギになるんだろうなあと。

  • 内容は大変興味深く面白いのだが文章が...基本的な日本語ルールに沿っていないと思われる部分が散見されて非常に読みづらい。もう少し読む側に配慮した分かりやすい文章だったら満点だった。

  • 孫崎享(1943年~)氏は、駐ウズベキスタン大使、外務省国際情報局局長、駐イラン大使、防衛大学校人文社会科学群学群長などを歴任した、元外交官、評論家。一般向けの著書も多数。
    著者は本書について、「北方領土、尖閣諸島、竹島について、日本の帰属を考えるに際して、どうしても知っておいて欲しい事実を伝えることを主眼とした。少なくともこの本を読まれ、「そんな事実があったのか」と思われることは間違いない。その意味でこの本は領土問題を扱った本としては大変新鮮な本である。」といい、それぞれの国境問題についての歴史的背景、それぞれの立場・主張などを様々な角度から説明している。
    そして、最終章では、国家目標のうち最も重要なものは「国民が平和で繁栄する環境を整えること」であり、それを踏まえて、領土問題を扱うことが大事であるとし、領土問題における双方の主張は折り合わないことを前提として、(例えば)日中間の問題は、以下のような方策を組み合わせるべきと述べる。①相手の主張を知り、自分の言い分との間で各々がどれだけ客観的に言い分があるかを理解し、不要な摩擦はさけること。②紛争を避けるための具体的な取り決めを行うこと。③国際司法裁判所に提訴するなど、解決に第三者をできるだけ介入させること。④緊密な「多角的相互依存関係」を構築すること。➄「国連の原則」を全面に出していくこと。⑥日中間で軍事力を使わないことを共通の原則とし、それをしばしば言及することにより、お互いに遵守の機運を醸成すること。➆係争地の周辺で、紛争を招きやすい事業につき、紛争を未然に防ぐメカニズムを作ること。⑧現在の世代で解決できないものは、実質的に棚上げし、対立を避けること。あわせて、棚上げ期間は双方がこの問題の解決のために武力を利用しないことを約束すること。➈係争になりそうな場合、いくつかの要素に分割し、各々個別に解決策を見出すこと。
    そして、最後にこう述べている。「領土問題の重要なポイントは、領土問題をできるだけナショナリズムと結びつけないことである。」と。
    私は強硬なナショナリストではないが、こと領土問題等に関しては、対立する国の主張に首肯することはなかなか難しいし、多くの日本人は同じような気持ちなのではないかと思う。(もちろん、もっとはっきりした見解を持つ人も少なくないであろうが) 
    そうした中で、領土問題にどう向き合って行ったらいいのか。。。著者の各々の領土問題についての分析、主張には批判も少なくないが、「国民が平和で繁栄する環境を整えること」が最も重要という、(元・外交官というキャリアならではの)リアリスティックな考え方は共感できるものであり、本書がひとつの考え方を示してくれているとは言えるのだろう。
    領土問題についての自分の立ち位置を考えるための一助になる一冊であろう。
    (2011年6月了)

  • ふむ

  • [private].内容とは関係ないけど書き込みが多々あった。図書館の本なのにそういうことを平気でする人が興味をいだく問題なんだろうなという感じがした。ネトウヨ的な書き込みだったし。[/private]

  • 【由来】
    ・孫崎、尖閣で検索した。

    【期待したもの】
    ・せっかく三冊ほどこの分野の本を読んだのだから、ちょっと深めるかと思って。
    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】


    【目次】

  • 今まで日本の領土だと思っていた尖閣、竹島、そして北方領土は、本当に日本固有の領土なのか?
    いつから日本の領土になったのか???
    この書を読む限り日本固有の領土というには、根拠が弱いという印象を受けた。あらためて領土問題についてに考えさせられました。
    この本を恵贈くださった山本先輩に感謝します。

  • <b>尖閣・竹島・北方領土は本当に日本固有の領土なのか?? </b>

    今話題の領土問題を理解したいと思い手に取った一冊。
    固有の領土として紹介するメディアが多い中、
    本書は元外務省国際情報局長が書いただけあってテレビでは
    伝わりきれていない内容が盛り沢山だった。

    テレビでは、政治家達の『〜は、日本固有の領土であり、…。』と言った
    報道ばかりが取り座され、国民感情を煽っている感が否めない。
    敗戦国である日本が各領土問題を抱えるに至った背景や、
    条約類の話がおざなりにされている感があるからだ。

    本書では、相手国が領土を主張する理由から始まり、
    領土問題から武力紛争に発展したケースや、同じ敗戦国で多くの
    領土を奪われたドイツが領土問題を乗り越え他国と協調をしたケースなどが紹介されている。
    一方的な主張を通すのではなく、様々な角度から領土問題を包括的に捉え示唆を与えている点が非常に良書であると思う。

    国内では高齢化による労働人口の減少、国外では新興国の台頭や、
    グローバル化による人材の流動化が進む中、日本の国力に対して
    悲観的な意見が多い中、今後日本が国際的にどの様な立ち位置をとり、
    どの様な外交政策を展開するのか考えるきっかけになったと思う。

    日本の領土問題並びに外交政策に
    興味がある方には是非読んでいただきたい一冊である。

    <blockquote><b><内容説明> -Amazonより-</b>

    海に囲まれた島国・日本にあっても、周辺には解決が困難な国境問題を抱えている。尖閣・竹島・北方領土。領土は魔物である。それが目を覚ますと、ナショナリズムが燃え上がる。経済的不利益に、自国の歴史を冒涜されたという思いも重なり、一触即発の事態に発展しやすい。突き詰めれば、戦争はほぼすべて領土問題に端を発する―。中ソ国境紛争やイラン・イラク戦争の現場に外交官として赴任、情報収集にあたり、その後、防衛大学校教授として日本の安全保障を研究・分析した外交と国防の大家が論点を腑分け。平和国家・日本の国益に適った戦略を明かす。</blockquote>

  • ネットで検索すると、とっても評判が悪いです、この本というかこの著者(笑)。

    著者の考えはともかく、事実は、ちゃんと受け止めるべきだと思いますし、日本側からの視点だけでなく、相手国側からの視点も述べている点で、新聞なんかよりも、よっぽど信頼できる内容だと思います。

    また、考え方についても、そういう考え方もあると思いますので、参考になりました。

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著者プロフィール

1943年、旧満州生まれ。東京大学法学部を中退後、外務省に入省。
英国、ソ連、イラク、カナダに駐在。駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大学校教授などを歴任。現在、東アジア共同体研究所所長。
主な著書『戦後史の正体』(22万部のベストセラー。創元社)、『日本外交 現場からの証言』(山本七平賞受賞。中公新書)、『日米同盟の正体』(講談社現代新書)、『日米開戦の正体』『朝鮮戦争の正体』(祥伝社)、『アメリカに潰された政治家たち』河出書房新社)、『平和を創る道の探求』(かもがわ出版)ほか。

「2023年 『同盟は家臣ではない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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