- Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480066886
作品紹介・あらすじ
中国の軍事力に対する警戒感が高まっている。空母の建造、対艦弾道ミサイルや次世代ステルス戦闘機の開発…など、経済成長を背景に、軍備も膨張し続けている。領土・領海への野心も小さくない。けれど、その実力は未知数である。他国に比べて情報が少ないため、専門家でも評価が極端に異なるのだ。パワーを得た彼らが暴発することはないのか。そもそもどんな思想のもと、彼らは何を目指しているか。特派員として現地を取材し、数々のスクープを上げたジャーナリストが、不透明な中国軍の裏側をえぐる。軍幹部の証言や、独自入手した資料で浮かび上がった、人民解放軍の実像とは。
感想・レビュー・書評
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国防政策・文民統制・安全保障観等の政策面、空母や宇宙開発等の軍事面、そして腐敗という組織論と幅広い内容なので、ややまとまりのない印象は受ける。また2012年の本であり、「国産空母についても完成するまでは沈黙するだろう」「(劉源は)ポスト胡錦涛時代に軍の指導部を担う一人となるのは確実」といった、必ずしもそうはならなかった予測もある。国家主席による軍の掌握度合いや陸軍重視傾向も変化しているだろう。軍の研究機関の内部文書が必ずしも軍の公式見解とも言えない。ただ、そんな各論をあげつらう以前に、本書様々な側面を分かりやすくまたバランスよく示してくれる。
公式の国防費発表が実態を反映していないのは常識だが、財政部に別枠予算があることや、複雑な予算の流れのため軍自体も把握しきれないという内部文書に基づいた指摘はなかなか他では見かけない。
「先制不使用」政策や文民統制が実際にどこまで守られているかは筆者も疑問を提起しつつ、断定はできていない。その不透明さこそ中国軍らしい。また、「攻撃は最大の防御」という意味に変わってきた「積極防御」理論、国益に伴い関与するエリアを広げようという「利益辺疆思想」も紹介している。
そして何より、筆者は、「国家の繁栄を維持するためには必ず軍事力の裏付けがなくてはならないというのが中国の安全保障観の基本だ」と述べている。最近読んだ中国軍事に関する他の書籍にも同趣旨の内容があった。そもそも現代日本とは根本的な土台が異なっているというわけだ。 -
第8章 自らまいた種-中国脅威論
世論戦で揺さぶる/心理戦の恐怖
第9章 米国が目標-安全保障観 -
空母,核,制天権(宇宙),軍事費,積極防御,文民統制,太子党と腐敗…と章ごとによくまとまってて読みやすい。毛沢東の唯一の孫,毛新宇は史上最年少の四十で将官になったらしいがボンクラだ,というのはネットのどこかで以前読んだような。
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中国の脅威は政治体制の違いを脇に置けば、不透明性に行き着く。軍事力は能力と意図で測られるといわれるが、中国はどちらもはっきりしない。そして中国はそれを意図的に行っている。
中国が制天権にこだわる理由の1つは、宇宙技術分野では中国は世界で先頭グループを走っているという優位性。宇宙分野ではまだ領域支配が未開拓な上、技術的にも高いレベルに達している。 -
直前に読んだ文春の『中国人民解放軍の内幕』とはやや趣が異なりますが、どちらも解放軍の実態や内情の不透明性が周辺国や国際社会の脅威となっていることを指摘しています。現地で手に入れたとおぼしき資料なども使って、解放軍の本音に迫っている部分は興味深く読めました。