ルポ 高齢者ケア: 都市の戦略、地方の再生 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480067777

感想・レビュー・書評

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  • これから到来する超高齢社会は、大量に高齢者が死んでいく社会である。
    それに直面するのは、70歳や80歳の高齢者ではなく、現在40歳代、50歳代、そして65歳前後の団塊の世代である。

    著者は次のような危機感を抱く。

    施設や病院から非人道的な扱いを受けた家族の無念の言葉。「なぜ、人生の最後になって、こんなひどい目に合わなくてはならないのか」(p10)

    「普通に老いて、普通に死ぬ、…そんなことができるのはむしろ一握りの恵まれた、幸せな高齢者」(p10)ではないか。
    10年前にそう考えたが、現在、ますます情況はひどくなっているのではないか。
    そして今後ますますそうなっていくのではないか。

    本書は、この危機感とともに都市と農村部での超高齢化対応の実践例を報告しながら、二つメッセージを伝えようとしている。

    「高齢者を地域で支えようにも、地域自体が活力を失っているときにどう支えることができるのか。地域包括支援システムとはいっても、それを駆動させる地域の力が枯渇しているならば、絵に描いた餅に過ぎなくなる。地域づくりとは端的に地域の再活性化だと言い換えてもいいが、高齢者へのケア(システム)の充実は、地域の活性化と両輪である」(p15)

    「活力ある地域のケアは、活力と受容性の溢れた良質なものになる」(p15)

    「医療・介護一体改革法案」(地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案)が5月15日に衆議院を通過し、これから高齢者の医療と介護の仕組みが大きく変わっていくわけだが、その影響をもっとも受けるはずの団塊の世代の人々や、40歳代以上の人々が、それぞれの将来を考えるための格好の読物となっている。

  • 「高齢者ケア」という言葉の持つ重みと感触がより現実的になりつつあることは、両親の老い、そして「地域」の一人ひとりの高齢者とのやり取りから切に感じている。専門分化を織り直す「地域づくり」という言葉が福祉や教育において盛んに使われるが、その前線に在ってハブ的機能を果たし易い「地域おこし協力隊・集落支援員」は、その眼中には想定されていないばかりか、そもそもそのような「抜け道」的な利活用は行政ロジックに存在しない、のか。

  • 地域での高齢者ケアのあり方を様々な地域での実践を例に語られている。

  • ○フリージャーナリストの佐藤氏の著作。
    ○高齢者医療、介護事情に関する作品の多い著者による、これからの高齢社会を見据えた対応策について、最新の取組を踏まえながら提案を行うもの。
    ○結局のところ、誰かが「見守る」必要があるなかで、それを誰が担っていくのかが課題。医療の充実の必要性とそれを実現するためのコストなど、理想と現実については、もう少し踏み込んだ方がよいと感じた。
    ○少なくとも、高齢社会への社会のシフトの必要性は感じるが、少子化社会の到来による(介護を含めた)労働者不足、「見守る人」不足について、もう少し実態を踏まえて欲しかった。

  • 高齢者ケアの今後を考えるルポである。抑えた筆致で様々な地域の特徴について述べている。地域にはそれぞれの事情があるので、モデルにはならないが参考にはなる。都市部郊外の例である柏プロジェクト。孤独死を防ぐ新宿区の取り組み。路上生活者と山谷の高齢問題。認知症に対する熊本モデル。群馬県上野村の過疎再生モデル。石巻の状況。それぞれの地域事情に合わせて工夫している所にヒントがあると思われた。

  • 都市と地方の先進事例を紹介

    ●柏プロジェクト→街作りと医療ケアを中心にする
    ・地域のかかりつけ医→在宅医療
    ・高齢者向け在宅→24時間在宅ケア
    ・地域内での就労支援

    ★サービス付き高齢者向け住宅を「豊四季団地」
    例:1階:介護事業所、訪問介護、小規模在宅型介護施設
      2階:居住地域

    ●新宿区の孤独死防止プロジェクト
    ・重層的な見守り体制(NPO、シルバー人材、郵便局)
    →支援が点にとどまっているという指摘
     =支援の輪のネットワーク化を目指す。

    ・高齢化の進展→認知症患者の増加
    *低価格な特別養護老人ホーム=絶対数不足
    *高価格な老人ホームが民間

    医療従事者→キーパーソン→患者

    ●新たな需要の支援
    →総合支援A型の存在
    =制度の狭間にいる若年者・支援が得られないために社会生活の復帰や維持に困難を抱えた若年層(pp.92)

    Chap:3
    「受け皿のないままに進められた在宅医療型病床の廃止、削減の政策がこの介護難民の問題化に拍車をかけている」(123頁)

    熊本県プロジェクト
    →国の指針とは違う二重によるプロジェクト
    (熊本大学病院→基幹病院…11)
    →介護従事者・医療従事者・ケア従事者による事例検討会を通じての新たな見地
    (介護アンケートを通じて意見収集)

    ーーーーーーーーーーーーーー
    この事例検討会の水平展開により、新たな知見・政策を展開できるのではないか?
    ーーーーーーーーーーーーーー

  • 1.柏プロジェクト:高度成長時代の団地をいかに再生するか?
    2.「死に至る孤立」を防ぐ:新宿区の取り組み.どうしたら孤独死を防げるか.
    3.高齢弱者という課題(=ほとんどスキップ)
    4.認知症ケアと「地域の介護力」=熊本モデルの紹介.認知症疾患医療センターの2層構造も,もとは熊本県の発想だった.
    5.過疎地域の再生モデル:群馬県上野村.ダムに対する公的補助が多分多いので資金もたぶん潤沢?→ということであまり参考にならんか? 
    6.もう一つの「石巻の記録」

  • 369.26||Sa

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著者プロフィール

1953年、秋田県生まれ。2001年よりフリーランスとして、執筆や、雑誌・書籍の編集発行に携わる。1987年より批評誌『飢餓陣営』を発行し、現在57号。
主な著書に『自閉症裁判』(朝日文庫)、『知的障害と裁き』(岩波書店)、近刊に、村瀬学との共著『コロナ、優生、貧困格差、そして温暖化現象』(論創社)、『津久井やまゆり園「優生テロ」事件、その深層とその後: 戦争と福祉と優生思想』(現代書館)がある。

「2023年 『明日戦争がはじまる【対話篇】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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