自公政権とは何か (ちくま新書 1408)

著者 :
  • 筑摩書房
3.67
  • (6)
  • (10)
  • (8)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 182
感想 : 18
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480072160

作品紹介・あらすじ

単独政権が可能な自民党は、なぜ連立を解消しないのか? 福祉重視の公明党はなぜ、自民党と連立するのか? 「連立」から日本政治を読み解く、初の本格的分析!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 自公政権のみを分析したというより、五五年体制崩壊以降の全ての連立政権を対象として、それぞれの成立の経緯、政権運営のあり方や、発展・崩壊の要因を分析している。

    政権交代が起こりうる政党政治のあり方として、アメリカやイギリスのいわゆる二大政党制がよく取り上げられてきたが、国際的に見てもこのようなシステムが一般的というわけではなく、むしろ事例としてはより多くの政党からなる多党制の国の方が多くみられる。また、それらの国で政権交代が起こっていないかというと必ずしもそうではない。

    多党制の多くの国で連立政権が形成されており、それゆえに連立政権の政治学というのは非常にポピュラーな研究テーマでもある。本書でもそのような研究をまず概観したうえで、それらの概念を適用しながら、細川政権以降の各政権を分析している。

    様々な観点はあるが、各政権の分析において主に取り上げられていたのは、ポスト配分、政策調整、そして選挙協力の3点であると感じた。

    まずポスト配分の面では、自公政権は決して「公平」とはいえない。公明党は歴代政権に対して1、乃至2の大臣ポストしか輩出しておらず、国交大臣など主要ポストであるとはいえ議席数からすると過少である。この点ではより公平、若しくは少数政党への配慮からより多くのポストを配分した自社さ政権や民主党を中心とする連立政権の方が、より「公平」であるといえる。

    しかし、政権の持続性では、自公政権の方が結果として上回っている。大臣ポストが政権の枠組みを維持する「かすがい」たり得ないということが感じられた。

    むしろそれより重要なのは、政策調整をどのようなレベルで行うかということである。自民党を含む連立政権においては、自民党の体制そのものでもある政府と与党の二元体制がとられることが多く、政策調整もまず各党、そして連立政党間の政策調整会議によって調整がなされたうえで、政府の政策として決定される。

    一方で民主党を中心とした連立政権で特徴的だったのが、党首のトップ会談による調整であり、さらには各党首が大臣として政権入りすることにより、この調整を政府(内閣)に一元化するという考え方である。

    民主党は、選挙においてマニフェストを掲げて政権選択を国民に問うことを基本的な発想としており、政権樹立後の政策調整においてもその発想が強い。この方法自体が必ずしも機能しないということではないだろうが、小沢氏、鳩山氏、菅氏と続いた各民主党党首、首相は、リーダーシップとスピード感を重視するあまり、この調整過程において連立内の少数政党に対する配慮や調整の丁寧さを欠いていた。結果としてこのことが政権の崩壊につながったといえる。

    興味深かったのは、自公政権においても、小泉氏は首相のリーダーシップを重視し、党と政府の二元状態を一元化したいという意向が強かったということである。しかし、結果としては公明党等の連立維持を重視し、ある程度の配慮を行ったことにより、長期政権を維持している。

    自民党と公明党は政策距離は必ずしも近くなく、この点ではむしろ民主党中心の連立政権の方が、政権内各党の政策の方向性は近かったと思われる。しかし、政策調整のプロセスが機能するか否かの方が、政策距離よりも政権維持には影響が大きく、従って実現する政策も多くなるということは、印象的であった。

    最後に選挙協力であるが、自民党と公明党が20年以上にわたって徐々に選挙協力を深めていった過程が、丁寧に分析をされている。選挙区内の候補者調整は最初は非常に多くの痛みを双方に強いるものだが、結果が出てくることにより徐々にその痛みだけではなくメリットが感じられるようになる。自公の選挙協力も、最初は決して全面的に取り組まれたものではない。

    自公政権においても候補者調整は党本部の方針によるところが大きかったであろうが、応援演説、後援者名簿の交換、「比例は公明」といった呼びかけは、党本部より各選挙区の方が先行していたというのは、興味深かった。

    党本部として公式に比例との票の取引の旗を振るわけにはいかなくても、選挙区レベルで集票メリットがあれば、それぞれの議員や支援団体の間ではそのような調整が整うことがある。そのような変化を一つひとつ積み上げていくことで、自公両党はかなり緊密な選挙協力体制を結果として築いている。

    この点では、現在の野党は選挙のたびに離合集散があり、選挙協力も持続的、累加的なものになっていない。安定した政権交代の受け皿となるためには、かなり時間がかかるのではないかと感じた。

    最後に、連立政権であろうが二大政党制であろうが、大切なのは国民の意見を反映した議会・政権の形成と、それを基盤とした政策の実現である。そういった意味で、連立政権が政権維持自体が自己目的化したテクニックとしての枠組みにならないようにしていかなければならないということを感じた。

    本書では選挙制度による政党の議席獲得率、政党規模への影響にも触れられている。現在の選挙制度は、小選挙区と比例代表を並立させた形になっており、それによって二ブロック型多党制に近いものが徐々に出来上がる過程にあるように思う。

    このような政党システムがうまく機能すれば、比較的幅の広い政党を政権の中に取り込みやすく、また二大政党制のようなイデオロギー対立を避けることもできると思われる。そのような方向に向かうべく、与党側も野党側も、政策調整プロセス、選挙での国民への政策の伝え方などをより実効の高いものにすべく努力をしてもらいたいと感じた。

  • 「政策からみれば、公明党は民主党と近い。だけれども、体質は自民党と近い。政治は理屈じゃなくて、情だからね。自民党は本当に懐が深いよ。」公明党の漆原元国対委員長の言葉だが、案外これが本書の真意を端的に伝えているのではないか。急いで付け加えるが、ここに旧態然たる談合体質と政策不在の野合だけを読み取るのは早計だ。政治とは日々の妥協であり、合意形成のプロセスである。55年体制と呼ばれた自民党の一党支配がかくも長く続いたのは、この妥協を重ねながら丁寧に合意形成していく柔軟性があったからだ。対する民主党はあくまで政策理念に拘り合意形成プロセスを軽視した。ここに失敗の最大の原因がある。

    自民党は通念に反して、大企業や農家だけでなく時代のニーズを敏感に感じ取り、都市住民や貧困層にも政策ウィングを広げ、実に広範な階層の利害に応えてきた。包括政党と呼ばれた所以である。党内野党としての派閥の存在がそれを促した面もある。こう考えると政策では距離が大きいかに見える公明党との連立は、実は自民党にとってデメリットよりメリットの方が大きい。極端な右寄り政策にはブレーキがかかり、社会的弱者への目配せも怠らない。かつての党内野党としての派閥が果たした役割を公明党が担ったとも言えるわけだ。与党多数派の自民党は少数派公明党を最大限の譲歩と信頼関係で包摂している。これが自公政権の強みであり安定の秘訣である。

    小沢一郎が主導した政治改革は基本的には二大政党制を前提に政権選択を志向するものだった。だが小沢を含め日本のマニフェスト選挙信奉者には、英国の二大政党制に対する大きな誤解があるのではないか。あまりに対決イメージで捉え過ぎているのだ。英国の保守党にせよ労働党にせよ、実は政策は大きく違わない。政権を担うために必要となる多数派を形成するプロセスの中で、譲歩と妥協を積み重ね、粘り強く合意形成していくが、その結果、政策は自ずと中道寄りに収斂する。理念先行で「風」頼みの民主党にはこのプロセスがない。このプロセスこそ実は英国型民主主義の肝なのだ。有権者がマニフェストを選ぶというのは、あくまでその表層に過ぎない。

    自公連立は小選挙区比例代表並立制に実にうまく適合したフォーメーションである。地方における自民党、都市部における公明党の固定票が強力な補完関係を作ってもいる。そう簡単にこの提携関係は揺らがない。となると野党勢力が有力な対抗軸を作れるかだが、当面望み薄だ。唯一あり得るとすれば、共産党が安全保障政策を見直し、政権政党として野党連合に合流することだろう。その上で政党間の地道で泥臭い合意形成が不可欠だ。険しい道のりであることは間違いない。本書は野党各党に対し、政党政治の根本に立ち返った戦略の見直しを迫るものだが、ある意味では強力なエールでもある。本当に政権を狙うつもりなら、安易なポピュリズムとは決別し、本書のメッセージを真摯に受け止めるべきだろう。

  • ゼミ課題

  • 『自公政権とは何か』というタイトルだが、現在の自公政権のみならず過去の連立政権すべてについて非常に丁寧な分析が行われており、「連立政権とは何か」というタイトルの方が中身をよく表しているのではないかと思う。

    現代の日本では、1政党が衆参の両院の過半数を握ることは難しく、連立政権の構築とその円滑な運営が極めて重要となる。必然的に似通わない部分をもつ異なる政党が力を合わせるにあたっては、各連立与党・政府が政策立案過程において交渉と妥協を重ねることになる。意見集約のプロセスをどのように形づくれば円滑な政権運営に繋がるのか、歴代の連立政権はそれぞれ様々な試行錯誤を行ってきた。本書はその歴史を詳細に描写する。

    そして、その集大成ともいえるような、歴代で最も安定している連立政権が、現在の自公政権である。政策的に一致しない点も多いはずの両党が、なぜこのような安定政権を維持できているのか。その理由は、互いを理解し合った現実的な意思決定に加え、綿密な選挙協力にもある。特に小選挙区制が導入されてからは「対抗馬を立てない」という大きな行動が必要となり、選挙協力がとりわけ重要になった。農村部を中心に幅広い支持を得る自民党と、学会による都市部を中心とした票田を持ち「自民党のブレーキ役」を自称する公明党は、互いの異なる支持層をうまく補完し合い、選挙区での完璧な棲み分けと比例のバーターによる互恵関係を完成させている。(現制度での「大連立」の難しさも小選挙区を理由に説明できる。)

    しかし、自公政権の成功の理由はそれだけではない。互いに組織票を漸減させ、絶対得票率も伸ばせていない両党が一強を保っているのは、投票率の減少と、野党が一大勢力を形成できていないことも原因である。筆者はこの点においても強固な連立構想の重要性を説き、民主党政権の失敗の一因は連立合意の不足にあったとする。

    筆者はあとがきにて、2017年の希望の党騒動が執筆の動機となったと述べている。本書の執筆後、旧・立憲民主党は旧・国民民主党と合併して立憲民主党という民主党以来の一大勢力を構築したものの、2021年の衆院選では十分に票を伸ばすことができなかった。その理由を説明するにあたって筆者の主張は未だ有力であり、自公の絶対得票率が依然50%を切っていながらも国政の勢力図が変わらない現状を打破するには、筆者の提言が未だ大いに重要性をもつだろう。非自公勢力の幅広く分散した支持を結集する強固な連立構想なしには、現在の選挙制度が変わりでもしない限り、非自公安定政権は非現実的である (という私の主張を中北先生がこのようにしっかりと形にしてくださりとても嬉しかった)。

  • 1993年の東京佐川急便事件などを背景に、自民党一強の政治に対する懸念が高まり、政治改革がなされることになった。それは二大政党制を作り出すことを目的としたものだった。筆者の理解によれば、改革によってもたらされたのは二大政党制ではなく、自民とその他大勢という2ブロック型の多党制だという。
    自公の連携は、自社さ政権崩壊後から始まる。目指すものの違いによる限界から崩壊した自社さ政権に変わり、連携を組める相手として浮上したのが公明党である。議席数がちょうど良く、党内の結束も強い公明党なら、ということである。両党の目指すところは似ているどころか、かなり距離が大きい。国防や憲法においてそれは顕著であるが、そのことがかえって自民党にブレーキをかけている。両党の連携がうまくいっている鍵として、緊密な選挙協力がある。民社の連立政権が失敗したのとは大きく違っている。
    メディアでは野党共闘がさかんに報道されていたが、自公がそうしたことを当たり前に行っていたというのは知らなかった。政権交代が難しい原因として、筆者は共産党の存在を挙げる。だが、非自民・非共産のかたまりを作る動きは迷走が続いている。

  • 1,2章は政治理論、3は55年体制崩壊後の日本政治史、4〜7が自公政権分析となっており、非自民との違いから自公政権が理解できる。
    自民が法令制定過半数を得るために公明を連立相手に選んだ理由は、自民農村小選挙区・公明都市比例代表と棲み分けて組織票の選挙協力で安定させられること、自民経済安保外交・公明福祉で政策の棲み分けと譲歩の与党間協議を確立したことなどが挙げられている。

    小選挙区は少数滅却されるので二党制(単純制イギリス)、比例代表制は少数でも議席を確保できるので多党制になりやすい(デュベルジェの法則)。
    比例代表のうち、日本で採用されている完全別投票の並列制は、小選挙区が優先されるので、大規模政党が優位になる。併用制は、比例代表に応じて議席が配分されるので、少数派政党でも生き残ることができる。連立は中間。
    日本の小選挙区比例代表並立制は、政党間の選挙前連合を促し、二党制に近い、二ブロック制となった。
    自公連立は、相反することも多い政策を調整する仕組みが確立されているので、長期政権となった。他方、非自民・民主はトップダウン式で配慮がなく瓦解した(8党連合日本新党細川護煕首相の国民福祉税騒動)。
    自社さ政権では、村山富市内閣が与党首会談を定例化したり、多数決にならないよう少数派の発言力を高めたり、省庁等のボトムアップの手続きを導入することで、互いの譲歩により政策を実行することができた。
    社会党は参院選後、社民党・民主党に分離し、さきがけも弱体化し、衆院選でも自民党が快勝した。その結果、第二次橋下龍太郎内閣以降は、政策調整する意義が減った。しかし、過半数は得られなかったので、政策決定ごとにパーシャル(部分)連合する不安定さよりも、政策距離から小渕恵三内閣で連立を目指した。民主・社民は不可能であるため、安定した組織票と方針のぶれなさから、過半数を目指せる公明党に白羽の矢が立った。
    公明党からすれば反自民から自民連立の態度変更は支援者への説明がつかない。そのため、小沢一郎の自由党が緩衝政党として間に入ることで自自公連立として成立した。反自民だった小沢一郎は交換条件として政策実現(政府委員廃止、副大臣制、閣僚・国会定数・国家公務員削減、国際平和活動参加、消費税福祉目的税化)を提案し、自民党は受け入れた。小渕政権下で、日米防衛ガイドライン、憲法調査会設置、国旗国歌法、住民基本台帳、組織犯罪対策三法など成立させていった。
    その後、消費税の福祉目的税化など政策不履行を理由に、連立を離脱した自由党の一部が保守党になり、自民党の衛星政党となった。公明党は、小泉純一郎政権の右傾化と政府主導を懸念し、政府間とのやり取りよりも、与党間の協議で対等な発言力を堅守した。このことは、保守党が自民党に吸収され、自公政権になったときに安定した政策調整が可能になったことを意味する。自民党が国家的政策(憲法、外交、安全保障)、公明党が社会保障(児童手当、年金国庫負担引上、がん対策基本法)という役割分担が確立していった。
    しかし、自民党で公明党に批判的なYKK(山崎拓、加藤紘一、小泉純一郎)が力を持ったことで、選挙協力は不安定だった。他方、地方では選挙協力が行われ、小泉支持率が下がるにつれ、その効果を発揮し、棲み分けに成功した。小選挙区で自民、比例で公明と呼びかけることも地域主導で行われた。小泉ブーム低迷で、創価学会にすがる小選挙区自民党議員が増えた。郵政選挙では自民党が単独過半数、公明党は31議席。
    安倍政権下で、教育基本法改正、防衛「省」昇格、憲法改正に向け国民投票法改正。さらなる右傾化に公明党はブレーキをかけ、それぞれ国粋主義文言を弱め、専守防衛・文民統制、加憲事項の限定を確認した。
    閣僚不祥事、消えた年金問題などで退陣した安倍晋三に続き、麻生太郎内閣でも失言、世界金融危機により、民主党政権となる。連立は社民党、国民新党(郵政民営化で造反した自民党議員)。
    鳩山由紀夫内閣で、普天間-辺野古基地移設を閣議決定したことから社民党は連立離脱した。
    菅直人政権では、消費増税発言、郵政改革改正の先延ばしで国民新党が離脱、TPP参加表明、東日本大震災、福島第1原発事故、尖閣諸島中国漁船衝突事件などの対応で支持率を失った。民主党は公明党に露骨に接近するも、連立とは至らなかった。
    橋下徹の大阪維新の会が国政進出、安倍晋三と蜜月関係であったが、維新は公明と提携し大阪都構想を推進していた。2012年衆院選では、公明党は維新・自民と選挙協力を行い、2013参院選で過半数をとり、自公政権が復活した。
    自民党綱領によれば、自立した個人が公への貢献と義務を負うとされ、それが「日本らしい日本の姿」だという。
    公明党綱領によれば、「個人あっての国家」と相対化し、弱者の人権、公正、自然との調和、地球民族主義を標榜している。
    2007年国民投票法改正を、憲法一括改正ではなく事項ごとにしたのは公明党の説得によるものであった。よって、憲法・防衛に関しては、民主・公明の方が政策距離は近い。しかし、連立の持続は政策距離よりも、少数派への配慮と政策的妥協点を見出すこと。また、距離が大きければ多様な意見を取り込むことができる。
    公明党の閣僚大臣ポストは国交相一つが多く、党運営を優先することと、矢面に立たない副大臣で厚労省などに就くことが多い。
    安倍政権の右傾化と民主党政権時の低迷により、連立組み替えをちらつかせ日本維新の会やみんなの党など右寄りの野党が台頭した。
    安倍晋三は、改憲緩和の憲法96条改正を断念するも、靖国神社参拝、特定秘密保護法(公明党が知る権利・取材の自由への配慮を条文明記指示)、テロ等準備罪法(公明党が対象犯罪676→277に減少させた)、IR実施法(公明党が数や面積、入場、本人確認などの規制を厳しくした)など、公明党がブレーキとなるもその賛成により成立してきたのも事実である。
    集団的自衛権の容認については、9条の範囲における限定的な容認、つまり他国に対する攻撃が自国の存立を脅かす場合とし、平和安全法制整備法が閣議決定され、国会前デモに繋がった。
    消費増税時は、公明党が酒類と外食を除く食料品と新聞の軽減税率を導入させた。
    自民公明は情があり譲歩があるが、民主は少しも譲らない。選挙協力は強く、自民小選挙区、公明比例代表としても、公明は小選挙区に1〜2万票がある。公明党は都市部に強く、自民党は農村に強いため、補い合っている。
    公明党の他の選挙協力では、大都市で発生する改革派ポピュリズム「維新」「都民ファースト」などがあるが、都構想や希望の党には与せず、対決を避けた候補者調整にとどまった。地方議会との兼ね合いなどから、票の融通が利くのは自民党だけである。
    非自民は反安保で集まった民進党、さらに希望の党に合流しようとするも失敗し、立憲民主等に分裂するなどし、自公に遠く及ばないのが現状である。

  • 著者の非常に丁寧な取材や文献調査などによって、自公両党の議員が、緊密なコミュニケーションをすることで、互いに模索、協力し、今に至る連立政権を構築していることがよく分かりました。また、野党側が同様な体制を構築できるかは、共産党によっているというのが、印象的でした。

  • 主に、平成の政治史を連立というキーワードで分析した書籍だと思った。政治学による分析で客観的に考察し、平成の政治の変遷を経過も踏まえて書かれている。

    とても勉強になった。学校の授業で教えてもらったような、歴史の流れや因果を意識していて、何故そういう出来事が起きるのか、とても分かりやすかった。

  •  本書の著者は『自民党政治の変容』(NHKブックス)や『自民党』(中公新書)で、1970年代以降、幾度も危機がありながらその都度蘇り、大半の期間で政権政党の座を維持している自民党の「強さ」の構造的要因を実証的に明らかにしたが、本書では前著の課題として残されていた「公明党との連立の持続性」の原因を追求している。

     明らかになったのは、小選挙区比例代表並立制に適応的な「高度」で相補的な選挙協力と、連立政権の緊密な意思決定システムである。自公政権分析の前提として、過去の連立政権(非自民八派政権、自社さ政権、自自公政権、民国社政権)の意思決定機構の変容を明らかにしているが、1990年代以降の政権がほぼすべて連立政権であったにもかかわらず、これまで十分に分析が行われていなかっただけに、極めて貴重な成果と言える。

     なお、現在の野党共闘の成立条件を探る問題意識を前提としているが、現行の選挙制度と旧民主党系の「固定票」の脆弱さ、日本共産党の綱領問題等から極めて悲観的な結論を導いており(選挙制度改革を優先するべきとの視点を提示するが、多数派の与党の同意を得られない以上不可能)、反自公政権サイドに根本的な戦略見直しを迫っていよう。

  • またしても読み切れなかったので購入予定。

全18件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

一橋大学大学院社会学研究科教授。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程中途退学。博士(法学)(東京大学)。大阪市立大学法学部助教授、立教大学法学部教授などを経て、2011年より現職。専門は日本政治外交史、現代日本政治論。
著書に、『現代日本の政党デモクラシー』(岩波新書、2012年)、『自民党政治の変容』(NHKブックス、2014年)、『自民党──「一強」の実像』(中公新書、2017年)、『自公政権とは何か』(ちくま新書、2019年)、『日本共産党』(中公新書、2022年)など。

「2022年 『選択的夫婦別姓は、なぜ実現しないのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中北浩爾の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×