学力格差を克服する (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480073327

作品紹介・あらすじ

学力格差の実態はどうなのか? それを克服するにはどうすればよいのか? 「学力保障」の考え方や学校の取り組みなどを紹介し、解決に向け考察する。

感想・レビュー・書評

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  • 30代男性
    小学生の子を持つ親として、教育には興味があり、コロナ渦でオンライン授業を強要された経験から教育格差が拡がると懸念していたので読みました。
    筆者のこれまで研究成果や著書を引用しながら、各種データを提示して、学力格差の現象と課題について、各国の事例も交えて解説している。
    家庭環境の差が学力格差を生じさせている点は、コロナ渦で家庭内に居る頻度や、オンライン授業用の設備を要する現状は格差を生じやすくなっていると思う。より一層気を引き締めて親として勉学に取り組ませて大きな根が育つようにしていきたい。

  • 開発目標4:質の高い教育をみんなに
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50207140

  • 教育社会学の研究成果を表したものである。さらに具体例もある。そして各事例から学力格差を克服するための方略として、1)高校までの無償の普通教育の保証、2)早期の分化の抑制とリカレントルートの整備、3)評価・配分機能の縮小、4)学校のカベを薄くし、授業を社会生活に結ぶつける、5)教育活動をできるだけ集団的、協働的なものにする。ことをあげている。

  • 学力向上vs学力保障

    上の層を伸ばすのではなく下の層にいる子を平均値に近づける、それより上に行かせようとする。

    個人的には学力保障をしっかりと行うことが今の教育界には必要だと感じる。
    なぜなら、日本は人口減少する国家だからである。
    人口が減少することは自明の事実である。そうすると自然的に上の層の生徒も減ることになる。
    しかし、学力保障で下の層にいる子を少なくすれば人口が減ったとしても、確かな学力を持つ子どもの数を減らすのを妨げることができる。

    そのためには、筆者が本書で述べているように、能力主義と平等主義・統合主義・民主主義のバランスを回復したものに再構築し(現状は能力主義に重きを置きすぎている)、高校までの無償化(これは現政権で達成はされている)、早期の分化の抑制とリカレントルートの整備(普通学級と特別支援学級、普通科高校と職業科高校など早期に分断せず、学び直しの機会を充実させる評価・配分機能の縮小(評価にばかり時間を使わない)が必要であると感じる。

    現在の日本では、メリトクラシー(能力主義)が第一とされており、各家庭においても、ペアレントクラシー、マザロクラシー(家庭において子どもをどう育てたいかとすること)をつきつめている現状があり、ペアレントクラシーが弱い家庭の子との格差が浮き彫りになってきているので、後者の子どもたちに対して教育委員会並びに行政がどうアプローチしていくのかが大事になってくる。

  • 図らずも、この本にある「学力保障」はコロナによる加配教員の増員政策「学びの保障」の中で実現しているのでは?
    文科省主導で頑張っているが、この本の通りにうまくはいってないかも...!(たぶんこれもコロナのせいでもあるけれど)

    「学力格差」について体系的に知ることができてよかった。格差の定義、克服とは何か、公教育とは何かを明示してくれているので、ヒステリックな問題意識ではなく、将来性を重視した内容となっていてとても良い。

  • 東2法経図・6F開架:B1/7/1511/K

  • 数年前、「学力の樹」ということばを同志社小学校の説明会だったかでうかがって、同じ著者による岩波新書の「学力を育てる」を読んだ。いま探しても見つからないから、図書館で借りたのだろうか。たぶん、そのときよりも、本書はより共感しながら読んだように思う。「共生学」おもしろそうだ。「学力保障」ということばにかける思いも伝わってくる。一方で、いわゆる「力のある学校」が紹介されていたが、教員の働き方という面ではどんなものなのだろう。そこが気がかりだ。持続できるものでなければ意味がないし、一部のスーパー教員にしかできないものでも困る。それと、あとがきには著者の経験から書かれているが、両親がいずれも中卒である。それは当たり前だろう。それより、高校で私立に行かれたようだから、かなり経済的には恵まれていたのではなかろうか。5歳ほど年下になるが、私もちょうど著者と同じような状況だった。中学校にそれほど悪い思いはないが、近隣校から殴り込みに来たり、京都で2番目に喧嘩が強いと噂の(誰が決めたのか)1個上の先輩もいた。まあたぶん、そういう時代だった。で、一番気になるのは、「教育格差」でもそうだったが、「だれが幸せか」ということである。各種アンケートをとられてその結果が掲載されているが、そこに「幸せかどうか」という観点が抜けているように思う。中卒でいいとは思わないが、それでもやりたいことをやって幸せに暮らしている人もいる。それは例外と片付けることではないように思う。はたから見て「不幸そう」というのはちょっと違うような気がする。みなが、幸せと感じて日々を過ごせればいいなあと思う。それと、高校の義務教育化について少し言及されていた。それは大賛成である。私もあと4年で定年退職となる(急に65歳までとかにならなければ)。ここまで、常に学力の向上、成績アップ、志望校合格ということが最優先事項としてあった。できれば、60歳を越えたら、学び直しだったり、経済的に困窮していて学ぶチャンスがない子だったり、学校教育にうまく乗ることのできない子だったり、何かそういうところで教育に関われるといいなあと思う。

  • 372.107||Sh

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著者プロフィール

大阪大学大学院人間科学研究科教授。専門は教育社会学、学校臨床学。日本学術会議会員。主な著書は『マインド・ザ・ギャップ』(大阪大学出版会、2016)、『日本の外国人学校』(明石書店、2015)、『学校にできること』(角川選書、2010)など。

「2022年 『外国人の子ども白書【第2版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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