作品紹介・あらすじ
民主党政権は本当に失敗だったのか。マニフェストの諸政策を再検証し、未完に終わったにすぎない「日本改革」を今こそ実現すべく、リベラル復活に向け掲げ直す。
感想・レビュー・書評
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安倍前首相は民主党政権は悪夢だったと言い続けたが、実際はどうだったのか、菅直人氏が、民主党政権時代の施策を検証するとともに、その後の安部、スガ内閣の対応についても触れたした本。
個人的には、民主党政権がよかったか悪かったかというよりも、最近の自民党の対応を振り返る意味でも、読む甲斐があると思う。
本書では、民主党政権で実現できたこと、できなかったこと、その背景や理由などが整理されている。
できなかったことについていえば、政権を取っても、衆参の勢力が違うねじれ国会となってしまったことが足枷となった部分もあるだろうが、なんといっても、第一の不運は東日本大震災とその後の原発事故など、民主党政権には未曾有の緊急事態への対応が求められたことではないか。
それでも、私などから見れば、誰も予測していなかった手探りな中で政府と東電で統合対策本部を作り、その時にできるベストを尽くしていたように思える。アベ・スガ政権だったら、もっと悲惨なことになっていたのではないか。
一方、民主党政権で掲げていたこととして、("官僚主導"から)"政治主導の実現"があった。これは、政策決定過程において、官僚ではなく選挙で選ばれた政治家が主体となるというもので、各省に従前の大臣、副大臣に加え、政務官という役職が置かれることになったのもその一つだが、正直、省内で説明しなければいけない人が増えるなど、職員の仕事の増にも繋がっている。
そして、民主党政権自体も、政治主導に失敗したと言われているが、国民からすれば、今の政治家に政治主導で重要施策を決定されるなんて怖すぎる。
たとえば、検察庁法改正案や大学入試における英語のテスト改革など、さんざん振り回して、立場が悪くなると投げ出すといったことを繰り返しているし、コロナ対応だって、国民は振り回されるどころか、今や罹患しても入院できずに自宅待機させられ、命の危機にさらされている人もいる。
政治主導なんてことは、政治家がもっと信頼できる存在になってから言ってほしい。
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著者プロフィール
菅 直人(かん・なおと):1946年山口県生まれ。東京工業大学理学部卒業。民主党代表、政調会長、幹事長を歴任。2009年鳩山内閣の副総理、2010年に内閣総理大臣となる。現在衆議院議員、弁理士。著書『東電福島原発事故 総理大臣として考えたこと』(幻冬舎新書)、『大臣』(岩波新書)、『原発事故 10年目の真実』(幻冬舎)、『民主党政権 未完の日本改革』(ちくま新書)など。
「2024年 『市民政治50年 菅直人回顧録』 で使われていた紹介文から引用しています。」
菅直人の作品
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