産業革命史 ――イノベーションに見る国際秩序の変遷 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480074348

作品紹介・あらすじ

産業革命を四段階に分け、現在のAI、IoTによる第四次産業革命に至るまでの各国のイノベーションの変転をたどり、覇権の変遷を俯瞰する新しい世界経済史。

感想・レビュー・書評

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  • 良書 4つの産業革命を軸に各時代の特長と、産業革命の意味を、あくまでも、ものつくりの視点から確認をしている。

    第一次産業革命 動力とエネルギー 蒸気機関が英国を世界の覇者に仕立て上げた

    第二次産業革命 重化学工業    アメリカとドイツの台頭、大量生産の時代

    第三次産業革命 情報革命、オートメーション、電子取引 情報・知識・サービスの時代 多品種少量生産、流通システム、ニーズの多様化 アメリカの後退

    第四次産業革命 IOT,AI,ロボット、ビッグデータ 中国の台頭 Inductry4.0  多極な世界へ ポストコロナ、低炭素化

    構成は以下

    第1章 イノベーションと産業革命
    第2章 第一次産業革命
    第3章 第二次産業革命
    第4章 第三次産業革命
    第5章 第四次産業革命
    第6章 国際政治経済秩序のゆくえ

  • 桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/volume/1295844

  •  四次にわたる産業革命の連なりとして世界各国の発展を俯瞰し、国際社会の現在の有りようとその先の展望までを大胆に予測する野心的な著作。
     主旨や論拠の提示の仕方が極めて整然としている。文体の特徴というべきか、同内容の反復とみなせる箇所がやや多く記述量は膨らみ気味。
     技術的イノベーションとそれを促す制度的基盤の有無、という観点が全篇を通じて強調され、分析において頻出する。先行する産業革命史観と比較した場合、主張の明瞭さとひきかえに、切り口を強く絞り込んだ考証といえるか。

  • 333-K
    閲覧新書

  • 読み応えがあり、歴史を踏まえつつ、まさに2022年の今現在の問題意識に一つのパースペクティブを提示する良書。
    タイトルの産業革命史から想起されるいわゆる歴史的な著述は全6章のうち3.5章分くらいだろうか。その後の部分は歴史というよりももっとフレッシュな2010年代からのトレンドと、さらに今に近い3年前ごろからの動きを踏まえて、今後の国際政治経済秩序を展望する。
    歴史的側面からは資本と労働力、そして特に技術の蓄積によって生み出されるイノベーション(知的財産)の保護によるインセンティブが重要な役割を果たしたことがよくわかる。ソ連をはじめとした共産主義国の技術発展の乏しさはここに起因すると思われ、それがソ連崩壊の一つの要因としてつながったと解釈できる。
    最も興味深いのは中国に関わる筆者の分析だ。改革開放から先進国による投資、技術導入で世界の工場として急激に成長した産業を有するが、まだ、たとえば半導体技術のような先端的な技術レベルは追いついていない。この差を埋めてアメリカを超える大国になりたい中国と、この技術力ギャップを維持してパワーバランスを維持したいアメリカとの間でのせめぎ合いが、さまざまに現れているのが現在の社会と見ることができる。米中貿易摩擦やファーウェイ外しはその顕著な例であろうし、ウイグル問題に代表されるような人権問題の提起の仕方やオリンピックでの外交ボイコットなども広く捉えると中国をアメリカ中心の国際政治経済から外していきたいという考えの現れと見ることもできる。
    産業の発展を基盤に世界の見方に対するアイディアを豊富に与えてくれた。
    誤字や、ほとんど同じ文章の繰り返しなどポツポツと編集ミスが見られるのは是非修正いただきたいところ。p229の終盤とp236の初めのあたりとか。

  • 北京での冬季オリンピックが始まっています。その会場内でで中国政府はデジタル人民元の導入を行っているとの報道があります。ここでの実績をテコに中国は人民元をデジタル時代の基軸通貨にしようとする意志の表れだと思います。スポーツの祭典という祝祭の場もイノベーションの実験場になり、世界の構造を決める機会になっているのを横目で見つつの本書です。第一次産業革命から始まるイノベーションの歴史が国際秩序をどう変遷させていったか?という、ありそうでなかったテーマ…壮大です。第一次を経て、第二次、第三次、そして第四次産業革命が世界をどう変えるのか?淡々と、でも深々と、そして大きく捉えることが出来るいい本だと思いました。近現代史がどうして動いてきたのか、みるみるわかります。本書執筆のきっかけは2008年9月からのリーマンショックの原因を、アメリカが金融資本主義のもとに非実体経済の利潤追求にこだわりすぎ、モノづくり産業・イノベーションを怠ったこと、とする著者の投稿が雑誌編集者に「あなたの観点には、同意しかねます。」と断られたこと、と、あとがきにあります。いまやド真ん中な理論に感じるのですが、ちょっと前は異端の論だったのですね。これから米中対立がどうなるか、G20時台の世界秩序はどうなるのか、中国発のイノベーションはどうなるか、そういうところまで見渡せる新書でした。

  • 333.6||Ka

  • 東2法経図・6F開架:B1/7/1609/K

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著者プロフィール

郭 四志(かく・しし):1958年、中国・大連生まれ。大連外国語学院(大学)日本語学部卒。吉林大学大学院国際経済研究科修士課程修了。法政大学大学院社会科学研究科博士後期課程修了(経済学博士)。現在、帝京大学経済学部教授。専門は国際経済、中国経済、エネルギー経済。著書『産業革命史』(ちくま新書、2021年)、『中国エネルギー事情』(岩波新書、2011年)、『中国原発大国への道』(岩波ブックレット、2012年)、『米中摩擦下の中国経済と日中連携』(編著、同友館、2019年)など。

「2023年 『脱炭素産業革命』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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