会計と経営の七〇〇年史 ――五つの発明による興奮と狂乱 (ちくま新書)
- 筑摩書房 (2022年4月7日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480074751
作品紹介・あらすじ
簿記、株式会社、証券取引所、利益計算、情報公開。今やビジネスに欠かせない仕組みが誕生した瞬間を、見てきたように語ります。世界初、会計講談!
感想・レビュー・書評
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会計が現在の形に至るまで、歴史的なキッカケを辿りながら解説する良書。専門用語などの無機質な学びではなく、その専門性に文脈を付与するような内容。何故、簿記が生まれたのかなど。
復習のため、流れを振り返る。
話はイタリアから始まる。物騒な世界、金持ちはボディガードを雇う費用を惜しむ。金品を持ち歩かなければ良いじゃん。為替手形を持ち歩こう。目をつけたのは、バンク。イタリア語のバンコで机の意。為替手形の取引手数料で稼ぐ。メディチ銀行が次々と支店を増やす。手数料レートを統一して情報管理したい。こうして簿記が発展。
イタリアが簿記と銀行を生み、オランダは株式会社と証券取引所を。フランスは、ディスクロージャーのインパクト、誰もが納得する税制は難しいという教訓を。本著は、前述のイタリア以降の歴史についても分かりやすく説明し、ページが進む。
基礎的な理解や歴史の勉強としても、会計へのアレルギー払拭にも有効な良著。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
会計制度の成り立ちと背景を、歴史を追って紐解いていて、会計初心者にもとても分かりやすくて面白かった。合間に挟まれる軽口も楽しい。
決まりきった経理のルール、普段は感慨もなく流れ作業のようにやっているけれど、それは先人たちが少しずつ築き上げてきたものなのだなぁという当たり前の事を、改めて実感した。 -
登録番号:C002549、請求記号:会計コース
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普通に書くと無味乾燥でつまらないテーマを、これだけ面白く書ける著者の筆力には脱帽する。
ビジネスパーソンに加え、受験生にもお薦めしたい。直接、大学受験に役立つとはいえないが、知識を有機的に関連付けられる。速読すれば、読了には3時間ぐらいしかかからない。内容は、とにかく面白い。 -
会計の仕組みができた経緯を、西洋史と共に、分かりやすく学ぶことができました。
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気軽に楽しく会計の変遷が学べる内容でした。
何にでも生まれる理由があることが、分かりやすく解説されています。 -
口語。基礎知識なしのゼロベースの人が、Youtubeとかで見れたら充分かな。特に追加情報もなく今更読む本じゃなかった。
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まえがき──お札になった酔いどれ殺人者
第一章 ルネサンスを支えた簿記の技術〈イタリア〉 ──神の支配から人間が主人公の時代へ
1 幸せと不幸、どちらの足音も東方からやってくる
東方にあこがれる西の人々
情報共有しないペッパーサックたち
東方からやってきた不幸の病
混乱から新旧交代へ
ローマ教会とメディチ家のスーパーコラボでルネサンスが生まれた
2 メディチ家が分散組織を管理した手法
中世のキャッシュレス取引だった為替手形
融資が禁じられたことで手数料商売が発展
すぐれた情報収集と分析を行っていたメディチ銀行
メディチ銀行の「分権経営」
簿記を用いて支店がワンチームに
3 ダ・ヴィンチが故郷にいられなくなった記録好き文化
記録好きのイタリアにて簿記が発展
レオナルド・ダ・ヴィンチの苦悩と挑戦
なぜイタリアの至宝『モナ・リザ』がフランスにあるのか?
神が主役の時代から人間が主役の時代へ
第二章 大航海時代に広げすぎた多角化経営〈スペイン〉 ──政治が中心から会計が中心の時代へ
1 大航海時代のスペインが新大陸を目指した理由
銀とトマトがやってきた
スペインがねらったキリスト教の布教
税金のはじまり
太陽の沈まない帝国の経営難
2 受け継がれる負の遺産
会計嫌いの親子
後輩を勇気づけたエル・グレコ
良い借金と悪い借金
最高の宇宙貯金
3 宗教改革は父への反抗!?
プロテスタントの台頭
父の故郷を弾圧、増税
残された教訓
トマトを食べる勇気
第三章 寛容の精神が生んだ株式会社と証券取引所〈オランダ〉 ──苦しみの労働から働く喜びへ
1 プロテスタントの国オランダ誕生
風車の似合うオランダのはじまり
ブリューゲル絵画に描かれた人々の嘆き
マーケティングが上手なプロテスタント指導者
オランダとベルギーはこうして分かれた
2 オランダ黄金時代に商売人が集合
商売人たちの宗教ノーサイド宣言
アムステルダムに大集合した商売人たちの盛り上がり
後発組として東インド航海へ進出
株式会社と証券取引所の誕生
3 短かったオランダ黄金時代の教訓
チューリップ・バブルの皮肉
金融商品は下がるときにはすべてが下がる
東インド会社、3つの失敗とその後の会計発展
「自分のため」から「他人のため」へ
第四章 決算書を情報公開した浪費国家の混乱〈フランス〉 ──プライベート所有からパブリック公開の時代へ
1 王侯貴族のムダ遣いと苦しむ市民たち
絵画と決算書は「つくる」前に「読む」こと
酔っても女性がきれいでいられるお酒
「働かないことが自慢」の王侯貴族
ノーモア・スペインの秘策
2 王様と財務の右腕のタッグは成功するか?
キッチリ男コルベールの徴税請負人制度
ほらふき男の起こしたフレンチ・バブル
国の決算書を公開したやりすぎ男
貧しさからジャガイモを食べはじめたフランス人
3 情報を公開して盛り上げる
フランスの師団が事業部制のルーツ
情報公開で盛り上げるフランスの文化
ブランドづくりが得意なフランス
フランスの残した数々の教訓
不幸のあとにはチャンスがある
第五章 線路と利益計算は続くよ、どこまでも〈イギリス〉 ──小規模生産から大規模工場へ
1 木材不足のピンチから世界の工場へ
イタリアのジェントルマンにあこがれたイギリス人
プライバシーに配慮した画期的な税金
石炭の活用によってピンチを克服
炭鉱で生まれた蒸気機関
想定外の連続で蒸気機関車が誕生
2 減価償却が幕を開けた利益計算
巨大な初期投資に悩む鉄道会社の経営者
株主へ配当するため減価償却が登場
複雑化した会計を悪用した粉飾
会計士と監査のはじまり
3 レイルウェイ・マニアの熱狂
鉄道会社の生んだイノベーション
イノベーションを生む組織のつくり方
原価計算に強い企業が生き残る
アメリカへ向かう投資マネーと経営分析
経営分析の進化と強欲の歴史
世界的会計事務所の誕生
第六章 そしてすべてがつながった〈アメリカ〉 ──原価計算から管理会計、そしてディスクロージャーへ
1 「漁夫の利」の地で連結決算が誕生
敵の失点で領土拡大したアメリカ
標準軌のおかげでM&Aが活発化
M&Aの多い鉄道会社から連結決算が誕生
悲願の大陸横断鉄道からはじまる大量生産
2 アメリカ経済の黄金期をつくった「規模の経済」
原価計算を武器に出世したカーネギー
規模の経済を目指して成功した男たち
主役は自動車へ
フォードの成功とカンパニー・マニア
シカゴ大学にて管理会計講座が誕生
3 大恐慌を乗り切った者たち
アメリカを襲った大恐慌
ブランド投資の重要性と会計との接点
悪党ジョー、クリーンな市場改革を行う
アメリカで花開いたディスクロージャー
悪党が遺したもの
あとがき(感謝とともに) -
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