- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480075093
作品紹介・あらすじ
「聞かれることで、ひとは変わる」
カウンセラーが教える、コミュニケーションの基本にして奥義。読んですぐに実践できる、革新的な一冊。
感想・レビュー・書評
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2023年新書大賞第5位作品
東畑開人さんの著作は初読みです。新聞の何かの記事でこの本が話題にはなっているとあったので気に留めていたところ別の新聞のコラムでも紹介されていたので読む決意を固めた次第です。
著者は1983年東京生まれで京大大学院教育学研究科博士課程修了した教育学博士です。臨床心理士でもあり、専門は臨床心理学・精神分析・医療人類学だそうです。
本書のエッセンスは「聞かれることで、ひとは変わる」ということです。政治家やアスリートなど著名人のカウンセラーをつとめる著者がコミュニケーションの基本にして奥義を惜しむことなく披露してくれています。読んですぐに実践できるのも良し。
人はなぜ話を聞けなくなり、どうすれば話を聞けるようになるのか。あるいはどういうときに話しを聞いてもらえなくなり、どうしたら話を聞いてもらえるのかなどが小手先テクニックから本質的テクニックまでを教えてくれます。
また読者に語りかけるように親しみやすく読みやすい文体を意識されていることがよくわかります。
例えば聞く技術の小手先編では以下を紹介されています。
1時間と場所を決めてもらう
2眉毛にしゃべらせよう
3正直でいよう
4沈黙に強くなろう
5返事は遅く
6七色の相槌
7奥義オウム返し
8気持ちと事実をセットに
9「わからない」を使う
10傷つけない言葉を考えよう
11なにも思い浮かばないときは質問しよう
12また会おう
聞いてもらう技術の小手先編は以下の通りです。
(日常編)
1隣の席に座ろう
2トイレは一緒に
3一緒に帰ろう
4ZOOMで最後まで残ろう
5たき火を囲もう
6単純作業を一緒にしよう
7悪口を言ってみよう 愚痴こそが真に人間的な言葉
(緊急事態編)
8早めにまわりに言っておこう
9ワケありげな顔をしよう
10トイレに頻繁に行こう
11薬を飲み、健康診断の話をしよう
12黒いマスクをしてみよう
13遅刻して、締切を破ろう
聞いてもらう技術は心配される技術なんだそうです。確かにいつもオーソドックスな白マスクの職場の同僚が突然黒マスクで来たら間違いなく話しかけますね(笑)
環境を変質させるのが聞いてもらう技術の本質ということがよくわかります。
聞く技術の小手先編だけでなく本質編も紹介しておきます。
それは単に「何かあった?」と尋ねてみること。そう言えないときには聞いてもらうからはじめるのが良いそうで聞いてもらう技術の本質編は「ちょっと聞いて」と言ってみる。そう言えないときには聞くところからはじめるんだそうです。
単純ですが確かに本質を突いてますね。
他にもいろいろと書かれていますが、まぁ以上のことが著者が読者に特に伝えたかったことだろうと思います。
世界も日本ももっと言えば地域社会もいろいろなところで亀裂や分断が進んでいますが、それらを防止するための単純明快な処方箋が本書には示されているように思います。
言うは易く行うは難しなんですけどね。 -
聞く技術の本は数あれど、聞いてもらう技術とは何ぞや?しかも、相手の心に耳を傾ける聴くよりもシンプルに聞く方が難しいとは?臨床心理士の東畑先生が解き明かす“聞く力の不思議”。対話が難しい現代社会を生きる上で知っておきたい“聞くこと”の技術が詰まっている一冊。
ぼくは対人関係の生きづらさゆえに、聴く技術や傾聴の本を何冊も読んできた。もちろんそれも勉強になったのだけど、聞いてもらうという切り口から社会を取り巻く緊張感を緩めていくという視点が面白かった。相手の話をそのまま受け取ることが難しい今の時代。それは自分の話を聞いてもらっていないから余裕が生まれないのだと。自分の話を聞いてもらい、相手の話も聞く。それが聞くことを循環させていく。どうやったら相手の話を上手く聞けるんだろうとばかり考えてきた自分には斬新な考え方だった。
「孤独の最中にいるとき、人は差し出されたつながりを拒絶し、自ら破壊してしまう。心の中の暴力的な他者のせいで、そのつながりが安全なものだと思えないからだ。」
うつ病と不安障害の中で感じていることがまさにこれだった。自責の念に加えて、忙しい相手に迷惑をかけたくないから相談できない。関わる資格がない。そんな風に自らを追い詰めてしまうのが孤独の恐ろしいところだと思う。ぼく自身も大切な人から順番に離れてしまったことがあって身に沁みる内容。
精神科医とは長く話せず、カウンセリングは自費。家族は理解してくれない。友だちにも迷惑かけたくない。そんな手詰まりな自分が一番助けられたのは精神科訪問看護だった。保険が使えるし、週に何回か看護師さんが家に来てくれて率直な話を聞いてくれる──それが自分と社会を繋ぐものだった。こういうサービスがもっと一般化して、助けられる人が増えたらいいなと感じる。
「他者とつながるためには勇気が必要ですが、その勇気は安心からしか生まれてきません。」
「傷つけないように配慮した時間の積み重ねでしか、安心は生まれてきません。」
ただ聞いてくれる看護師さんやカウンセラーさんがいたからこそ安全地帯ができる。そして、その積み重ねが安心感を生み、もう一回頑張ってみようかなと考えられるようになる。聞いてもらうだけで良くなるのか?という疑問には、良くなると答えたい。当たり前にある“聞く”を大事にし合うことで、お互いに助け合える。その力を誰もが持っているということに気づかせてくれた素敵な一冊。
p.57
「本当に」って誰かが言い出したら要注意。それはあなたの自信を奪うための術策かもしれない。
p.78
「聞く」とは「ごめんなさい、よくわかっていなかった」と言うためにあるのだと思うのです。
p.225
直接現実に関わらないからこそ、友人は僕らサイドに立って話を聞くことができる。自分の身に降りかかる火の粉を気にせずに、僕らの怒りや恐れに寄り添ってくれます。そういうときだけ、僕らは本音を漏らすことができます。
p.240
「聞けない」と「聞いてもらえない」の悪循環を、「聞く」と「聞いてもらう」の循環へ。 -
人の話の聞き方、聞いてもらうためのコツが書かれているものの、誰を対象としているのか曖昧で、期待していた内容とは少し違った。
特に、"小手先編"として書かれている技術はあまり共感できるものではなく、結論として書かれていることも
"聞く技術 本質編
「なにかあった?」と尋ねてみよう。
どうしてもそう言えないときには、聞いてもらうから、はじめよう。
聞いてもらう技術 本質編
「ちょっと聞いて」と言ってみよう。
今はそう言えないときには、聞くところこら、はじめよう。"
というもの。それが言える人はこの本を手に取ってはいないのではないか。 -
広告って恐いですね。新聞にこの本が大々的に広告。「夫が聞いてくれない」「親が、上司が何もわかってくれない」「妻の言っていることがわからない」「子どもが、部下が何を考えているか理解できない」「何度も何度も言っているのに、あの人は全然聞いてくれない」・・・こんな「聞く」の不全が起きているとき、是非「聞いてもらう」との循環を試してほしい。
〈対話が難しい時代のベストセラー〉・8万部突破、新書大賞20235位、各紙大反響、この煽り方に、まんまんと引っ掛かりましたな。
聞く技術、聞いてもらう技術、「聞くこと」がいかに大事だということはわかりましたが、この本を読んだからといって、すぐさま実行、役に立つとは思えなくてガッカリ・・さて、どうしたものかと悩みますな。 -
本書は、コミュニケーションのための本ではなく、心の言葉を聞くためのカウセリングのための本です。
聞く技術ではなく、聞いてもらう技術とは、人に聞いてもらえないから。
ちゃんと聞いてという訴えを「聞く」のは難しい。
心の奥底にふれるよりも、懸命に訴えられていることをそのまま受け取るほうがずっと難しい
「聞く」が不全に陥るとき、聞かなければならないとおもっている。それなのに、心がせばまり、耳が塞がれて、聞くことができなくなる。
それは、「聞いてもらう」からはじめよう。
気になったものは、以下です。
■聞くための前提とは
・どこで話そうか、どれくら時間があるといいのか。まずは時間と場所を決めてもらう。
・話を聞くためには、反応がオーバーであったほうがいい。反応があると人はうれしいから。
・正直でいよう。言いにくいことを黙っているのはあり、言わないでおくは、嘘ではないが、思ってもいないことをいうのはだめです。
・聞くために、間をつくりしょうか。相手の中から話題をもちだしてもらうために。
・返事は遅く。何かをしゃべりだすのではなく、5秒待つ。
・あいづちをうつ。7色のあいづち「うーん」「ふーん」「なるほど」「そっか」「まじか」「だね」「たしかに」
・オウム返しをする。相手のことばを言い換えてもいい、そのままでもいい
■なぜきけなくなるのか
・わかったふりをしてはいけない。
・自分の意見をいうな、自分の意見はまた今度
・言葉にならないことは、時間が解決してくれる。一週間後に言葉になることも。時間が仕事をしてくれる。
・社会に欠けているもの、もっともかけているものは、「聞く」こと。
・心にとって真の痛みは、世界に誰も自分のことをわかってくれる人がいないこと
・きいてもらうだけで、心の痛みをやりすごくことができる
■孤立から孤独へ
・僕らは、一人では孤独に耐えらえない、誰かが隣にいなくてはいけない。
・聞くとは、「ごめんなさい、よくわかっていなかった」というためのもの。
・「聞く」の中核にあるのが、孤独の問題である
・孤独には安心感が、孤立には不安感がある
・一瞬では解決しない、「時間をかけるしかない」、時間をかけて、何回も会うことです。
■聞いてもらえるには
・苦しんでいると、ロジカルにわかりやすくはなせない。必要なのは、賢い頭ではなく、戸惑うこころです。
・オンラインミーティングで最後まで退室しない技術
・緊急事態、「ちょっと聞いて」とまわりにいうこと。それがすべて
■聞くことの力
・聞くだけでなおるのですか? はい、案外力があるんですよ。
・間の前に生きた人がいて、その人とむきあっていると、冷静に考えたらわかるはずのことがわからなくなってくる。人間の迫力のようなものが伝わってくるから。
・なんでも見つかる夜に、こころだけみつからない。
■だれがきくのか
・話せがわかるが通用しないとき。ひとりでもいいから、味方である人、敵じゃない人をみつけること
・本当の敵、敵意が或る人からは、距離をとるか、権限のある人に訴えて相手から引きはしてもらうか、とにかく逃げるのが吉、諸々のことは逃げたあとに考えればいい。
・第三者は3種類ある
①司法的第三者 状況を把握して裁定を下してくれる
②仲裁的第三者 中立性をたもち、当事者の間に入って間をとりもってくれる
③友人的第三者 友達として横にたってくれる、裏にまわってくれて、争いとは離れたところで話を聞いてくれる
・おせっかいに、案外ひとは助けられる
・「聞くことのちから」苦境にあるとき、誰かが話を聞いてくれる、不安に飲み込まれ、絶望し、混乱しているときに、その苦悩を誰かが知ってくれて、心配してくれる。ただそれだけのことが、心にちからを与えてくれる
■結論(本質編)
・聞く技術 ⇒ 「何があった」と尋ねてみよう
・聞いてもらう技術 ⇒ 「ちょっと聞いて」といってみよう
⇒そういえないときは、聞くところからはじめよう。
目次
まえがき
聞く技術 小手先編
第1章 なぜ聞けなくなるのか
第2章 孤立から孤独へ
聴いてもらう技術 小手先編
第3章 聞くことのちから、心配のちから
第4章 誰が聞くのか
あとがき 聞く技術、聞いてもらう技術 本質編
ISBN:9784480075093
出版社:筑摩書房
判型:新書
ページ数:256ページ
定価:860円(本体)
発行年月日:2022年10月10日
発売日:2022年11月05日第3刷-
自分自身、大切な人ほど、コミュニケーション疎かにしてしまっています。偶然にも(笑)解決策を与えてくださって嬉しかったです(^^)
聞くコツ...自分自身、大切な人ほど、コミュニケーション疎かにしてしまっています。偶然にも(笑)解決策を与えてくださって嬉しかったです(^^)
聞くコツ、聞かせるコツ、間、意識します!
読書リストに追加しちゃいます♪またね⭐︎
2023/02/03
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近ごろの社会では、話を聞くことができずに困っている人、話を聞いてもらえずに苦しんでいる人がいる。どうすれば聞けるようになるか、聞いてもらえるのか、がテーマ。
心に余裕がないときには、人の話を「聞けない」、「聞けない」と「聞いてもらえない」の悪循環。「なにかあった?」と言えないときは、聞いてもらうから、始めればいい、と言う。そうして、「聞く」と「聞いてもらう」がグルグル回る循環へ。そのための最初の一滴、最初の一歩の一助になればという一冊。
「聞いてもらう技術 小手先編」が面白い。わざとらしくなっても聞いてもらえれば良しだが、相手の状況次第では変な奴と思われて失敗に終わる?「聞く技術 小手先編」にも、要注意な技がある。 -
お話を聞くように読める新書です。
筆者が小手先という聞く技術は、知っていても改めて大切。珍しいのは聞いてもらう技術の方。私は「一緒に帰る」がすごーーーく苦手な人間です。聞いてもらうの苦手かも。でもそういう人間は聞くことも上手くできない気がするよ。
仕事の面でも、自分自身のためにも、これは買って手元に置きたいかも。 -
テクニック系の本かと思ったら全然ちがいました。
繰り返し読みたいし、たくさんの人に読んでほしい。
特に、心が病んでひきこもっている人や、その周りの人に。
東畑開人さんの本は『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』を読んで、とても良かったのです。
〈やさしくされることでしか、人は変われないし、
回復できません。
叱られることで回復することもあるにはあるのかもしれませんが、それはその背景に愛があったときだけですね。
だけど、叱るときには、えてして愛よりも憎しみが勝ってしまうものです。
人間の心って、そういうものです〉
本当に、心ってどんなものか
いろいろ知ることができました。
この手の本たくさん読んできたのに、まだまだ知らなかったことがありますね。
面白かったです。
アドラーの本を読んで、おせっかいはやめていたんですけど
ちょっとおせっかいしてみようかしらと思っているところ。
よく本の最後、お世話になったかたに名指しでお礼の言葉が述べられていますが、この本では朝日新聞記者の高久さんと筑摩書房編集者の柴山さんについて
「文責は僕だけじゃなくて、二人にもあるはずだ」
「何かあれば、高久さんと柴山さんにもちゃんと言ってくださいね。お叱りも、厳しいご指摘も、うれしいご感想も」
だそうです。
高久さんと柴山さんのおかげで、
とても楽しい読書時間がすごせました。
今後にいかしていきます。
ありがとうございました。 -
人とより良い会話するためには、人の話を聞くことだけでなく、人に話を聞いてもらうことが重要。そのための小手先の技術まで載ってます。
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聞かないと聞いてもらえない気がしてしまう。が、聞くためには聞いてもらうから始めようと筆者。その理由が分かりやすく語られる。とはいえ難しい。大事なのは、人に弱みを見せることを躊躇しないということ。
本書は読んでないのですがレビューを拝見して、
聞く技術の小手先編の6、7、10は自分なりに心掛けてい...
本書は読んでないのですがレビューを拝見して、
聞く技術の小手先編の6、7、10は自分なりに心掛けているかも!なんて、嬉しくなりました♪
本書で説明されている七色の相槌が具体的に何なのかは分かりませんが、
様々な相槌を使い分けるように心掛けています。
それから、オウム返しについては、どこかで耳にしたことがあるのです。
相手と同じ言葉を敢えて使うようにすると、貴方を理解してますよという思いが伝わりやすいのだとか。
勿論オウム返しも相槌も、相手の話をしっかり聞くことが基本ですけれど。
傷つけない言葉については、本書の内容とは違うかもしれませんが、
私は、「嫌い」ではなく「苦手」という言葉を使ったりして、
なるべく耳障りが良いワードをチョイスするようにしています。
職場や行政機関でも、たまに出くわすことがあるんですよね、
お話が上手な方。
技を盗みたくて、この方のお話は何故聞きやすいのだろう?と、
意識しながらお話をお聞きすることもあります。
あ、話してくださってる内容は勿論きちんと聞いてますけど 笑
対話って大切ですよね。
年齢を重ねる毎に人前で話す場面も増えますし。
実践あるのみですね♪