新編教えるということ (ちくま学芸文庫 オ 6-3)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480082879

作品紹介・あらすじ

50年に及んで一教師として教育実践の場に立ち、退職後も新しいテーマを研究・発表しつづけている著者が、本当に"教える"ということはどういうことなのか、具体的な数々のエピソードを通して語った表題作「教えるということ」をはじめ、「教師の仕事」、「教室に魅力を」、「若いときにしておいてよかったと思うこと」を収録。プロの教師としてあるべき姿、教育に取り組む姿勢について、きびしくかつ暖かく語る。教育にかかわる人をはじめ、教育に関心をもつすべての人々、とくにこれからの社会を担う若い人々に贈る一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 教えるということ。

    自分に厳しく、きっと最期まで前向きに、子どもたちに向き合ってきてくださった方なんだろうなぁと想像できる。
    戦後の焼け野原の中で、教室すらないところで、手作りの教材を子どもに与えたとき、待ってたとばかりに食いついて勉強し始めた子どもたち。それを見て、子どもは本来、成長したい、学びたいという欲求があるんだと気付いた。その欲求に応えるために教師が、環境を整え、どんな教材なら子どもの欲求に応えられるか、どんな風に教えたらいいか、を考えること、それが教師の仕事だ、と。
    ここに書かれていること、教師としての心構えは、時代が変わっても、変わらず大切なことであると思う。

    先生の仕事についての本だけど、どんな仕事にも通じる、プロとしてどうあるべきか、という心構えでもあると感じた。

  •  ずっと前に買ってあった本ですが、この週末、一気に読み切りました。内容は、研修会等で大村さんが実際に講演をされた記録が4本、もちろん校正はされているはずですが、お話しになった雰囲気がそのまま伝わってくる語り口で書かれているのが魅力です。

     教えるということ、教師の仕事、教室に魅力を、若いときにしておいてよかったと思うこと、同じテーマで自分が話すとしたらどんな話ができるのか、考えさせられました。どの話にも、大村さんの人柄や、教育に向かう真摯な姿勢がにじみ出ていて、同じ教育に身を置くものとしては、心が引き締まる思いでした。

     例えば、「静かにしなさい」と言うことがあります。場合によっては、ひっきりなしに言うこともあるでしょう。でも、大村さんは、「ほかの人が言うのと全然違うのです。心に冷たい涙を流し、慚愧にたえぬ思いなのです。能力がなくてこの子たちを静かにする案を持てなかったし、対策ができなかったから、万策つきて、敗北の形で〝静かにしなさい〟という文句を言うんだということを、私はかたく胸に体しています。」と書いています。こんな覚悟で教壇に立っていたのです。

     この本の中には、「未来を建設する」という表現が度々出てきます。
     p.88 教育の仕事とは何であるか-それは未来を建設する仕事なのだ、…
     p.96 やはり未来の建設に役立つ人間を確実に育て上げる人、育て上げようとしている人だけが教師なのです。
     なかなか言えないフレーズです。それだけ、心血を注いで教壇に立っていたということが分かります。

     最後に、こんな言葉がありました。
     p.198 子どもたちひとりひとりを、優劣を超えた、優劣のかなたの世界につれていって、そして、ほんとうの成長ということを、成長の喜びを知らせていくには、簡単に言えば単元学習の幅広さ、自由さでこそと思います。
     〝優劣のかなたの世界〟そんな世界を、教師だけではなくて、子どもも保護者も感じて欲しいと思いました。

  • 教師の心構えや教えることに対しての方法が書かれている。また教える専門職であるため、家で勉強しないからダメだと言ったことは教師として言ってはいけないなどの教育論が書かれてある。
    気になったのは、中2ぐらいまでに付いた勉強に関する癖は生涯抜けることはないし、そこからいくら良い習慣をつけようとしても良くはならないと記述されていた。それは本当なのか。どうだろう。

  • 熱い内容だった。モチベ上がる。単元学習のところはちょっと理解不足なので再読したい。

  • 大学の恩師から教えていただいた一冊。
    教師として働く上での必読書だと思う。
    大村はまさんが教師としてご活躍されていた時代と比べ、現代は教師という職業の捉え方が大きく変わっているのかもしれない。しかし、本を読み終え、教師として子ども達の前に立つ上での心構えは今も昔も変わらないと感じた。

    教師になったから終わりではなく、教師になったからこそさらに研修をしていき、伸びようとする子ども達の世界に居続けなければならない。
    教師であることに年齢は関係なく、学ぶことをやめればたとえ若くても枯れているのだと思う。

    子ども達のように貪欲に学び続ける姿勢をもった教師になるためにまずはこの1年間を本気で生きるようにしたい。

  • 素晴らしい先生。母親ではなく、教師という専門職、仕事に対する自負と期待がすごい。子供達がこんな素晴らしい先生に指導を受けることができたらと願わずにはいられない。宿題をしましたかとか、そんな検査官みたいなことばかりしても仕方ないし、やらないことを叱るのではなく、自発的に、しかも、そう誘導されたと気づかないように指導することができたらと願う。残念ながら今のところ、そんな教師に巡り会ったことはないのだが。

  • 休校が明けしばらくして、「ようやく子どもたちを思い通りにできる」とでも言わんばかりの学校の雰囲気に、はま先生ならなんと言うだろうか・・・と再読。マインドを継承しながら、また違った形で進めていけたらと思う。

  • 春から教師になる身として、心に刻みつけておきたい言葉だらけだった。
    図書館で借りて読んだ本だったけど、常に傍らに置いておきたいと思う本だ。読みやすかった。

    「子どもと同じ世界にいない教師は、まず「先生」としては失格だと思います。…研究の苦しみと喜びを身をもって知り、味わっている人は、いくつになっても青年であり、子どもの友であると思います」

    「「先生」というのは敬語です。ですから、それに足るだけの人になっていかなくてはならない。教室とは、そういうこわい世界ですし、教師という職業は、その意味で非常にこわい職業、自分に対して非常なきびしさのいる職業だと思います」

    「私たち教師は、人間の力、人のよさ、子どもへの愛情、そういうものに自信をもち過ぎないで、そういったことはあたりまえというふうに考えて、教師でないとできない、といった技術をじゅうぶんに練りたいものです」

  • プロフェッショナル、教師の仕事にアツい思いを持つ。たまにら読み直そう。

    卒業してからの自立、役に立つ人になることを願ったり、反発は批判的な思考が生きている機会と捉えたりふること、ここが学びになった。

  • 50年も前に講演した内容が現代においてもピタッと当てはまる。見透かされているような気分になるものまで。当時はインターネットはもちろんコピー機もなく、戦時戦後の大混乱時期も含まれる。「昔は大変だったのよ」なんて話ではなく、常に前向きな、未来を担う子どもたちのことをひたむきに捉えた考えばかり。直接講演を聞いたようだった。

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