- Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480083357
作品紹介・あらすじ
60年代なかば、生態学と進化論の境界領域のなかから新しい流れが形成された。その結晶の一つがウィルソンの大著『社会生物学』であり、R.ドーキンスの『利己的な遺伝子』だった。生物界の社会現象を総合的に分析する斬新な手法で、人間とは何かを究明しようとしたのが本書である。英米の生物・動物学界を震撼させた、1979年度ピュリッツァー賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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1978年初版。ピューリッツァー賞を受賞している。この作品から40年あまりのあいだにヒトゲノムが解読されたり分子生物学の進歩はめざましいが、それでも氏か育ちかの論争は尽きることがない。1978年においては、それこそヒトと遺伝子については分からないことだらけであったが、果敢にスケールの大きい仮説を組み立てている。
こういうスタイルは最近ではあまり見ない気がする。ジャンルは全然ことなるが、梅棹忠夫の『文明の生態史観』を読んだときの感覚に近い。また理論で観測を予測するスタイルはシュレディンガーの『生命とは何か』を思い起こさせる(本書の切れ味はシュレディンガーには及ばないが)。狭い読書経験の範囲からですが。。。
本書でウィルソンがなにか具体的な予言をして当たっているという感じとは違うのだが、遺伝がヒトの行動に及ぼす影響が大きいよね、という方向性についてはウィルソンの仮説はみごとに裏付けされてきたと思う。ただし、それが決して単純な遺伝決定論でないことはウィルソンが説くとおり。
なおウィルソンは血縁選択の定義が曖昧である(というより単に群選択を支持しているようにも読めるが)とのことで、ドーキンスはじめとする面々からだいぶ批判されてきたそうなのだが、訳者注によると、ウィルソンの専門のアリの場合だと親族集団が空間的にも独立したコロニーを形成するので、血縁選択の定義が曖昧でも困らなかったのではと推測されている。面白い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
原著は1978年、40年以上前の著書であり、学術的には古くなった内容もあるのかもしれないが、人文・社会科学に生物学を本格的に取り入れて考えていこうとする問題提起の嚆矢であり、記念碑的な作品だと思う。また、当時の論壇の雰囲気を推察すると、その中で良くこのような論陣を張る勇気があったと思うし、そうした気概が本書全体に感じられ、感動した。古典と言って良いと思う。
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1575円購入2004-00-00
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「情けは人の為ならず巡り巡って己(おの)が為」という。親切な行為には何らかの自己犠牲が伴うものだが時に疲労を覚えることがある。裏切られることも決して少なくない。「巡り巡って己(おの)が為」をエゴイズムと捉える向きもあるようだがそうではない。利他とは自分を取り巻く環境に正義や公正を実現する営みなのだ。困っている者や弱い者、打ちひしがれた者を助けるのは当たり前だ。躊躇(ちゅうちょ)や逡巡が入り込む隙(すき)はない。
http://sessendo.blogspot.jp/2017/07/o.html -
宗教と科学の関係性について悩んでいることはわかった。それでおそらくそこがヨーロッパで多く見られる分裂症の正体というものかもしれない。
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私たち人間について人文科学や社会科学が扱ってきたテーマを自然科学の視点からもアプローチ出来る可能性を教えてくれる本です。特に人間科学部の学生の皆さんに手にとって欲しい本です。
人間科学部 N.K
越谷OPAC : http://kopac.lib.bunkyo.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=660883