日本語教室 (ちくま学芸文庫 キ 6-1)

著者 :
  • 筑摩書房
3.57
  • (1)
  • (2)
  • (4)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 26
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480084255

作品紹介・あらすじ

日本語とはどんな構造をもち、どんな特色をもった言語なのか?外国語とくらべて、わかりやすいのか、わかりにくいのか?学習しやすいのか、しにくいのか?どこが便利でどこが不便なのか?童謡、歌謡曲から庶民の普通の会話、文豪の作品から古典までをテクストに、日本語とは何かをわかりやすく解説する楽しい講義。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 日本語教室
    著:金田一 春彦
    ちくま学芸文庫

    戦後、英文法に影響されて、国文法にも、別のものさしが加わった
    日本語とはわかりにくい、という表現には、英語や他の言語との比較を含めての話だ
    日本人は、自ら用いる日本語そのものをわかりにくいなどとは思わない
    ただ人によっての表現にいい悪いがあるだけだから
    他言語を意識しての、視点を変えての筆者の日本語に関する再構築と感じた

    気になったのは、以下です。

    ■日本語とは

    敬語、日本語以外にも、中国語をはじめとする東南アジアの諸言語は行き亘り、太平洋の島々にも見出される

    日本語は、系統的に孤立した言語だと言われる。系統不明の言語というものが、地球上のところどころにあって、日本語はその1つだという
    しかし、これは、日本語の場合、決して引け目を感じる必要はないようだ。それは、日本語を話す日本人が1億1千万人もいるということによる

    日本語全体は、系統を同じくする多言語の大きな集まりだと言ってよい。1つ1つの方言は、互いに同系の言語だ。
    日本語族では、全語族の人たちの間に日本共通語というものが存在する

    漢学が輸入されて以来、文字で書くものは、すべて中国語だった。話すことばは日本語で、書く言葉は中国語、それは随分激しい言文二途だった。この期間は大分長いこと続いた
    現代でいったら、憲法を英語でかき、教科書を英語で書くようなものだ

    日本語が、方言の激しさにもかかわらず、1つの共通語をもっていることの幸せを思わざるを得ない

    共通語が普及した以外に、日本語の性質が大いにものをいった。それは、日本語は、外来語を自分の中に取り込みやすい言語だったからである

    すさまじい勢いではいってくる洋語に対して、その意味をとり、漢字を組み合わせて語を作り、眼でみて、意味がほぼ察しがつき、口で短く言えるというのは、漢語のもつ素晴らしい長所だった。
    これは、漢字のもつ表意性が役にたったので、これ以前に日本人が漢語を全部仮名に書き換えていたら、こういう真似は出来なかったと思われる
    日本には、本来向かなかったはずの漢字が、日本人に対して感謝すべき贈り物をしてくれたわけである。

    日本語では、一応筋が通っていて、非常に明確であることが、そのまま外国語に翻訳してみると、ぼんやりとしたものになるばかりでなく、論理的矛盾がはっきりと出て驚くことがある
    西洋の文章構造はろんりてきである。ひと言でいえば文法的である。これに対して日本文は、感性的である。論理的でないものがあっても、それを感情や情緒でおぎなって理解できるような仕組みになっている

    日本語はすべからく、短文で語れということになる

    ■語彙

    単語の集まりを語彙という、日本語は、何十万という単語の集まりからできている
    単語にはその構造から二つの部分に分けられるものと、それ以上分けられないものとがある。分けられるものを、複合語、わけられないものを、単純語という
    ときに単語が2つ以上あつまって、それらの単語に固有でない別の意味をあらわすことがある、この類を、イディオム、慣用句という

    和語とは、生粋の日本語というべきもので、外国と言語の上での交渉の行われる前から日本語の中にあったものをいう
    漢語とは、上代、大陸と交際が開けて以来、中国から直接に間接に輸入された単語である
    漢語とは、伝来の時期の違いで、呉音、漢音、唐宋音、明治以後のものに分けられる
    和語と漢語との組み合わせは、重箱読み、湯桶よみのように、音訓を組み合わせたものが少なからずある
    和語でありながら、漢字をあてたものを、国字という、峠、榊、鰆、躾などにあたる
    洋語とは、戦国時代以来、ポルトガル、スペイン、オランダから、明治維新以後、英語を始め、ドイツ、フランス、イラリア、ロシア等から輸入された単語である

    ら行のことばは、古来日本にはなかった。らくだ、りんご、ルビー、レモンなどは、後から入ってきた漢語または、洋語である

    しばしばのような重ねことばが日本には多い、これを畳語という

    中国語は、語形変化をしないが、日本語のなかで、動詞、形容詞などは活用という語形変化を行う

    同義語 形は違うが意義が同じ語である
    類義語 同義語に似て、意味が近いもの
    反対語 正反対な一対のことば

    フランス語は1千語おぼえると、日常会話の83%は理解できるが、日本語だと、60%ぐらいしか理解できない

    ■日本語の表現

    日本語に対して、寄せられた非難の声は、日本語は不精密だ、ということである
    日本語が不精密だということは、日本語の動詞に人称の区別がないという場合もある

    日本人は、しばしばすべての人称を抽象した行動を考え、日本語の動詞は原則としてそれを表す形である

    日本語の不自由さ、日本語のセンテンスは最後まで聞かなければ主旨がわからないというものである
    言質をとられまいとするときも、このセンテンス構造は便利だ。重大なことを言ったあとで、と思われる節がある、とみられないこともない、と言って言葉をにごす
    こういう文法的構造は、まともに情報を伝えようという話し言葉では、はなはだ都合が悪い
    重要な語句があとからくるのは、とにかく能率的でない

    日本語が不自由だといわれるのは、1つの語句があとのどの語句にかかるのかはっきりしないことがあるということだ

    日本語は、けっして、非論理的にしか言えない言語ではない。つかう日本人が、非論理的な使い方を喜んでいるだけである

    日本語の簡単表現として、主語の省略、述語の省略等があることは広く知られている

    ■話し方、書き方

    目的を達するような話し方、書き方がよい話し方、書き方である

    話したり、書いたりする目的は3つある
     ①相手に知的な反応を起こさせる
     ②相手に情緒的な反応を起こさせる
     ③相手に行動を起こさせる
    条件は5つある
     ①話し手、書き手
     ②聞き手、読み手
     ③場面、文脈
     ④題材
     ⑤言語記号、語句

    題材として大事なのはその並べ方である
     前半でほめ、後半でほめ、途中でちょっと非難を加えている
     よい材料ーわるい材料ーよい材料 というあんばい

    よく目的を達することがプラスの効果であるとすれば、筆禍、舌禍は、マイナスの効果だ
    プラス効果が出るように書くとともに、マイナス効果を防ぐように用心をして書く

    わからないことば、わからない文章はムダである

    まず、使われている語句がやさしいものであることが望ましい
    一般の人が使わないことばは避けること

    1つのセンテンスには、1つの内容だけをもりこむこと、そして、そのセンテンスは短いこと

    表現は直接に、間接だとわかりにくい

    センテンスが論理的でないと、伝わらない

    センテンスが複数の意味にとれるものは避ける

    内容がいくら平易でも、説明不足の文章は、理解をさまたげる

    内容をわかりやすくするためには、例をいれる

    目次

    1 日本語とはどんな言葉か
    2 日本語の語彙
    3 日本語の動詞
    4 助詞の本質
    5 日本語の表現
    6 英語の表現と日本語の表現
    7 話しかた・書きかた

    ISBN:9784480084255
    出版社:筑摩書房;
    判型:文庫
    ページ数:352ページ
    定価:1100円(本体)
    発行年月日:1998年06月10日第1刷

  • 改めて日本語の文法を理解したいなあと思い読書。外国語を教えている身としては、日本語との文法の比較は重要だし、日本語の特異性も知っていると、これから教えるのに役立つと思う。

  • 文法の授業は嫌いだった。そんな事いちいちやらなくたって日本語しゃべれるんだからいいじゃん!と思っていた。でも外国語を勉強するようになって、母国語である日本語を一層意識するようになった。そしてこれを手にとってみたわけだが、とても平易な文章でかかれており、以前の様な「ちんぷんかんぷん」の解けないパズルのような印象は薄らいだ。読んだ甲斐はあったと思う。

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

大正2年、言語学者金田一京助の長男として東京に生まれる。昭和12年、東京帝国大学国文科を卒業。専攻は国語学。名古屋大学で助教授、東京外国語大学、上智大学で教授を歴任。東京芸術大学、ハワイ大学、在中国日本語研修センター(北京)、NHKアナウンサー養成所などで講師、玉川学園客員教授なども務め、日本ペンクラブ理事なども兼任した。著書に、『日本語』『ことばの歳時記』など多数。なかでも教科書や辞書『現代新国語辞典』他の編纂で多くの人に親しまれた日本語研究の第一人者。平成9年文化功労者に選ばれる。平成16年5月没。

「2016年 『美しい日本語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

金田一春彦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×