幻想の地誌学: 空想旅行文学渉猟 (ちくま学芸文庫 タ 17-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480085818

作品紹介・あらすじ

世界を地図に収め、あるいは自らのなかに世界を照射し、空想の土地をめざして旅立っていった作家たち。海の彼方の安らかな母胎トマス・モア『ユートピア』島、ヴェルヌ『海底二万里』のネモ船長の壮絶なる孤独、ポオやメルヴィルが描いた底もなく深い霊魂の姿たる神秘の大洋、ウェルズや久生十蘭らが幻視した地下世界…想像力の地平は無限だ。文学史における空間的・地誌学的思考とその表象の連綿たる系譜を類型論的にたどり、貴重な図版多数とともに解き明かす驚くべき幻想文学誌。スリリングな知的冒険が始まる。

感想・レビュー・書評

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  • ブックガイドとして。
    巻末の参考文献が楽しい。

  • 世界中にまだ「未発見」の地が無数にあり、旅行ではなく冒険が存在していた時代の文学・旅行誌における地誌。作者は事実・現実の情報に縛られずに想像力を自由に遊ばせることが許されていた時代。現代と違って地表に余白があり、高度で難解な象徴作用を駆使して現実世界を多重構造で捉え直す必要もなく、物理的に実在する世界として舞台構造を自由に作ることが許されていた。この本で最初に取り上げられる「島」はその最たるもので、信じられないほど奇妙で物珍しい事物があり、人々が暮らす場として、しかもしばしばそれは妄想ではなく事実としてヨーロッパに紹介された。また島はユートピア文学の格好の舞台として使われ、ギリシア・ローマ以来の「円のドグマ」思想を反映し、島の地図が描かれることもあった。大航海時代から時代を下り、技術が進歩するにつれ、地下、海中、月が妄想の対象になる。

  • 110204/今年8冊目

  • これほしいんだけど。兄が京都に持っていってしまった。

  • 幻想の島へ
    幾何学的な子宮
    プロスぺローの魔島
    月―空に浮かぶ島
    海という装置
    地底の旅
    隠喩としての砂漠
    密林の美女
    人体地図の系譜
    二枚の地図
    参考文献
    参考図版出典
    あとがき
    文庫版あとがき
    解説
    索引
    (目次より)

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著者プロフィール

谷川 渥(たにがわ・あつし):美学者、批評家、文学博士。東京大学大学院美学芸術学専攻博士課程修了。國學院大學文学部教授、杭州師範大学客座教授、京都精華大学客員教授などを歴任。日本近代芸術史の諸問題を踏まえながら、マニエリスム・バロックからモダニズム・現代美術にいたる広範な領域を視野に収め、多様な〈美的表象〉を渉猟し、美学と批評を架橋する。著書に『形象と時間』『美学の逆説』『シュルレアリスムのアメリカ』『鏡と皮膚』『図説だまし絵』『肉体の迷宮』『幻想の花園』『ローマの眠り』など多数。

「2023年 『三島由紀夫 薔薇のバロキスム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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