不完全性定理: 数学的体系のあゆみ (ちくま学芸文庫 ノ 4-1 Math&Science)

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  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480089885

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  • 無矛盾とは、命題Mと、命題!M(!MはとMの逆命題)が同時に真とならないこと。完全とは、すべての命題が証明(正しいか否かは別として)できること。不完全性定理とは、「無矛盾な公理系は、不完全である」ということ。この定理は、理性の限界を示すような危険な事実である。私は大学で数学を専攻したので、当然この定理は知っていたが、この定理が発見された経緯等の歴史的事実は全く知らなかった。この本を読んで、発見経緯や、発見者であるゲーデルまでの数学者の系が分かりほんとに面白かった。ところで、この辺りの仕事ですばらしい貢献した数学者は、カントールと、ゲーデルであるといってよいと思うが、彼らは晩年精神を病んでしまった。純粋な論理追求は精神を破壊することなのであると思う。ですので、この本を読んで数学に目覚めた数学者の卵へ、「間違っても、基礎数学論には足を踏み入れないこと!」。

  • 数学の形式化がどのように行われてきたか、ギリシャ時代から近代までの歴史を振り返り、最後に不完全性定理の意味と意義を説明している。直観主義(無限を扱う場合は排中律を認めない、という立場)をめぐるクロネッカー、ブローエルとヒルベルトの論争は、人間味に溢れていて面白い。数学の形式化の歴史は、数学から「意味」を極限まで取り除いていく歴史に他ならないのだが、ほとんどの数学者は「意味」や「直観」に基づいて仕事をしている、という事実も興味深い。

    私は、昔から数学的対象から「意味」や「直観」を意識的に排除しようとしてきたし、公理から機械的(演繹的)に理解するように努めてきたので、今さら「実際はそんなことしないよ」と言われても困ってしまうのである。しかし、「形式的に理解する」ことと「本当に分かる」ことの間に大きな乖離があることには気づいていたので、本書でそのような乖離が起きる構造をズバリ解説してくれたのはありがたい。

著者プロフィール

野崎昭弘

一九三六年(昭和一一年)、神奈川県生まれ。五九年、東京大学理学部数学科卒業。六一年、東京大学大学院修士課程修了。東京大学助手、山梨大学教授(計算機械学科)、国際基督教大学教授(理学科)、大妻女子大学教授(社会情報学部)、サイバー大学IT総合学部教授を歴任。現在,大妻女子大学名誉教授。専攻、情報数学。著書に『電子計算機と数学』(ダイヤモンド社)、『πの話』(岩波書店)、『とらんぷ』(ダイヤモンド社)、『計算数学セミナー』(日本評論社)、『詭弁論理学』『逆接論理学』(中公新書)、『計算機数学』(共立出版)、『数学的センス』(日本評論社)、『トランプひとり遊び』(朝日新聞社)、『はじまりの数学』(ちくまプリマー新書)ほか。

「2021年 『まるさんかく論理学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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