- Amazon.co.jp ・本 (536ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480092731
作品紹介・あらすじ
長年定番であった、あの参考書を復刊。この一冊であなたも古典通!住居・服飾などを通じ作品の背景を知り、様々な古典作品から「もののあはれ」に代表される人々の感性を学びながら、当時の時代背景が詳細に理解できます。受験を離れた大人が、古典をゆっくり味わうための最適なガイドにもなる一冊。
感想・レビュー・書評
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「およそ三十年間、入試の出題と採点をしてきた罪滅ぼしに、この本を書いた」
自分たちでのびのびと興味の湧いた事を探究する猶予もないほどのカリキュラムが、結果的に第二のアインシュタインや第二のリーマンになるはずだった人たちの未来を痩せ細らせてしまったのでは、と思った著者が「入試で合格点の取れる古文学習を紹介」(「合格さえすれば、あとは自分の専門でのびのびと成長してくれたまえ」とのこと)した本。
語りかける言葉で書かれ、時にちょっとした図や絵も示しながら、古文に登場する人たちの暮らしや、物事の捉え方、言い回しなどの土台になる知識や、入試問題の解釈のテクニックなどが記されている。
入試ははるか昔に終えたので、今となっては、気になる項目を気の向くままにのびのび読むだけだが、面白い本なので、高校生の自分がこの本のことを知っていたらなあ、とちょっと思う。「21世紀版少年少女古典文学館」シリーズ並みに古文の世界の解像度が上がる本。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
週刊文春2010.2.25号「文庫本を狙え!」609で坪内祐三が紹介。本屋を5軒回ったが、品切れ。アマゾンで予約したが、こちらも品切れで増刷待ち。定価1,575円だが、新古書で買うと二倍以上の値がついている。きょう、成城学園駅前Corty2Fの三省堂を覗いたら、うれしいことに増刷ができていた!2月10日第一刷、2月25日第二刷だから、ずいぶんなスピードで売れている。名著が復刊し、こうして多くの人が選び購入し読むのはすばらしい。経済低迷時代の副産物のように僕には思える。本を読むのは、収穫の割にお金がかからず、かつ心を耕す時間も少しはできたということだ。世の中の方向性も定まらずフラフラしているときは、こうした名著と時間軸を越えた対話をしたくなる人が増えるのではないか。「日本文学史」も同時に購入しておく。
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小西甚一『古文の読解』(ちくま学芸文庫)を読む。
今年2月10日に復刊され、本屋からあっという間に姿を消した。
わずか3ヶ月で既に第5刷。
僕は2月25日発行の第2刷を購入した。
毎日少しずつ楽しみながら読んで、連休でまずは一回目の読了。
武藤康史の愛情がこもった解説によれば、
小西甚一はあらゆる時代の文学史に通じた
途方もない学者だった。
(p.535)
小西の恩師である能瀬朝次(のせあさじ)教授は
小西著『梁塵秘抄考』の「序」にこう書いた。引用する。
君の熱心な博捜ぶりは、
君の親友をして資料餓鬼という渾名を呈上せしめ、
君も欣然としてこれを承認した。
実に餓鬼の如き物凄い研究ぶりであった。
そしてそれは大学時代から現在に及んで、
すこしも変わらない。
(『古文の読解』pp.533-534)
その小西が大学受験生のために三冊の参考書を書いた。
『古文研究法』『国文法ちかみち』、
そして本書『古文の読解』である。
著者自身の「はしがき」にこうある。
それも、ギューギュー詰めの内容と
眼の色を変えながら格闘するのでなく、
のんびり散歩するような歩調で、
たのしく古文の合格点を取ってもらいたい。
およそ三十年間、入試の出題と採点をしてきた罪滅ぼしに、
この本を書いた。
受験生のための参考書と侮っては判断を間違う。
大人たちが自国の古典に親しむための、
愛情あふれる、かつ頭脳経済的な(小西の造語)著書である。
500ページほどの例題、解説などを読むうちに
目の前の霧が晴れてゆく。
これまで遠くにあった日本の古典の姿が徐々に見えてきたのだ。
これから古典の森を散策する際にも、
ナイフやコンパスを手に入れたようで心強い。
有難いことだ。
高校生、受験生に独占させておくにはあまりに惜しいと
これまで古典に親しめなかった大人たちが
この本に手を伸ばしたのもなるほどうなずける。
次は小西がひとりで書ききった伝説の辞書
『基本古語辞典』(大修館書店)を復刊してほしい。
「復刊ドットコム」]にもリクエストしておいた。
(文中敬称略) -
昔の参考書は読み物としても面白く、知識も深く学べる。
近頃の参考書は、わかりやすさ、見やすさが重視されていますが、古文の理解は、古文の世界の文化や、ルールを知ることから始まるし、言葉についてもどういう発想で捉えるべきか、そういう回り道に思えることから、いろんな知識が繋がって、教養になっていくのだと思います。
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古文参考書の名著。
古い本だが、名著と言われるだけあって非常に面白かった。本書のスタンスは、国文学を専攻するつもりではない理系の高校生向けに、試験で合格するための古文を説明するというもの。
エッセイ風の軽い読み口で、背景理解に必要な基礎知識、実際の問題の解き方を説明していく。説明ぶりは論理的。文法や用語法など、どのルールを適用た結果その解釈に至ったかが明快に示される。古文だって、理論と応用で作られる学問なのだ。[ https://booklog.jp/item/1/4909658165 ]で投げかけられた問いのいくつかに、何らか繋がるところがあるような気もする。
古典は面白いとか教養になるといった抽象的なメリットは全然言わず、あくまで試験対策と銘打っているにも関わらず、読み終えて気が付くと古典を好きになっている。そういう、油断のならない参考書を目指して書かれたのかもしれない。 -
高校時代ほとんど勉強をしなかった後悔が最近強くわきでている。古文、自由に読みたいです。
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10/06/06。
私の時代にはこの本はまだなく、同著者の洛陽社『古文研究法』を使っていました。非常に勉強し甲斐のある本だったと覚えています。本屋さんに平積みされていて、手に取り買ってしまいました。
試験で満点とらなくてもよい、合格点をとればよい、との前書きの言葉、これって、読書人に対してもまた、100%わかんなくてもよい、わかんなければ辞書を引けばなんとかなる、とりあえず合格点くらいの理解はできるようになっておきなさい、との言葉であると思う。しかし、実は合格点というのは、そんなに低くはないというところが味噌なのかも(笑)。 -
ちくま学芸文庫 小西甚一 古文の読解
大学受験の古文講座。入試問題は読んでいないが、前半は 平安時代や江戸時代の人々の精神が整理されていて 面白かった
学校教育に古文があるのは、おそらく 時代により変化する言葉の性格を知るだけでなく、歴史や文学の背景にある精神や文化を知ることにあるように思った
俳句の読み方は役に立った「俳句の表現は象徴が中心〜象徴とは、互いに異なりながら、しかもどこか深い共通性があって、両者を対照することにより、それぞれの本質的な性格が同時に捉えられること」
「わび」「さび」「かるみ」は わかりやすい説明。とても参考になった。近代で失ったのは、これらだと思う
わび=貧乏
わび茶=貧乏でも楽しめる茶こそ本当の茶
*簡素の中に深い趣を味合う世界に真の美を見出している
*無に徹する禅の悟りと共通の精神
さび
人生の深みに徹した心が、静かな諦観に落ち着き、その境地から世間万物をながめた味
かるみ
何ものにもとらわれず、俗なもの卑しいものまで、深い愛情と細やかな感性で包む老境美
TSエリオット
「現在は過去を自身のなかに生かすとき、はじめて真の現在でありうるし、過去は現在意識でとらえるとき、はじめて過去そのものでありうる。それが伝統の意味である」
もののあはれ
*ものごとによって呼び起こされる感動
*平安時代においてはウエットな感動
*「あはれ」的文芸〜源氏物語
*感情的、主体的
「あはれ」とは、ものごとにつよく感じること
「ものの」ものごとによって呼び起こされた感じが加わる
をかし
*人事、主観的、抽象的
*「をかし」的文芸〜枕冊子
*理性的、観察的
幽玄
意味は 時代により差異があるが、共通しているのは奥深さを基調とした美
江戸時代
*前期は努力さえすれば金の儲かる時代
*後期は社会が固定化し下の階層の者は抜け出せない時代
いき
*いきいきとした洗練された感じ
*江戸時代前期を代表する精神
つう=通
*その方面に通じていること
*江戸後期の特色を示す精神
すい
推察の鋭いこと
不易
時間の流れによって価値の動かない表現の性質〜時間をこえて人の心をうつ作品
不易流行説
不易の作品も生まれた瞬間は流行の作品だった。流行に深まるほか、不易に達する道はない
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住居・服飾などを通じ作品の背景を知り、様々な古典作品から「もののあはれ」に代表される人々の感性を学びながら、当時の時代背景が詳細に理解
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それだけで古文がわかるわけではないが、これを読んでから古文の勉強をすると、よくわかるだろう。