方法序説 (ちくま学芸文庫 テ 6-3)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480093066

感想・レビュー・書評

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  • 2016.6.29
    デカルトと言えば近代哲学の始祖であり、「我思うゆえに我あり」で有名な人、くらいの認識しかなかったが、フッサールの現象学の大きなベースになる思想のようなので、読んでみた。感想。思っていた以上に面白かった。というか、学問としてというより、生きる事すなわち考えること、として人生を歩もうという気持ちがある人にとっては、一つの座右の書とも言えるものになるのではないだろうか。なぜならここには、問い、考え、真実を探求するものとして生きたデカルトの、知的生活としての方針が書かれているからである。その方針は、特に私には第二部及び第三部が参考になった。思考の方法の規則として、明晰判明であるものは真であるという”明証性の規則”(これこそまさにのちにフッサールが鍛え上げるものではないか)、複雑なものを分解して原子的な原則を見出す”分析の規則”、その原子的なものからスタートして複雑なものを構成していく”総合の法則”、そして全てを見渡し抜けがないかを再検討する”枚挙の規則”である。これだけでも面白いが、さらに私にとって驚いたことは、これとは別の実践道徳的法則も考えていた点である。理想ばかり追い求め、考えるばかりで答えは出ず、故に生活上の決断をし損ねてただじっと黙るばかりであることが多かった私にとっては、真なる答えを求める哲学的生活のための思考の規則と、答えとしては不完全ながらもその時のベスト解としてその場での行動を導く実践的生活のための道徳の規則とを分けて考えるという発想はなかった。なるほど、家を取り壊し立て直すには、借りぐらしの場所が必要なわけである。第三部に展開されるその道徳の法則は、まず法と穏健な意見に従うこと、根拠薄弱な答えであっても一度決定したなら確信して実行すること、できることとできないことを認識すること(これはニーバーの祈りと同じ)、そしてこのような道徳は暫定的なものであり、哲学含め真実への探求を続けていくこと、である。別に哲学的な難しい話をしているわけではなく、故に内容も思弁的ではるが、まるでデカルトが、こうしたらいいんじゃないかなと語りかけているかのような、そんな親近感をもった本である。それまでの様々な知見を方法的懐疑によって全て退け、自分の頭で考えた人であった。人の意見に惑わされず、自分一人で考えた人であった。この方法も精神も、大きくフッサールに受け継がれている気がする。私も是非この本を、考える私としての座右の書とし、その精神を学び取りたい。惜しむらくは、コギトから神の存在証明へ移ってしまったことだろうか。

  • まず、ルネ・デカルトについてであるが、彼は1596年にフランスのトゥレーヌ州生まれの哲学者、数学者であり、近世哲学の祖とされる人物である。また、経験論者として知られるフランシス・ベーコンと対比されて合理論者の典型として引き合いに出される。この「方法序説」は1637年、彼が四十一歳の時の著作である。彼の代表著作には他に「省察」、「哲学原理」、「情念論」などがあるが「方法序説」はそれらの先駆けとなっている。この「方法序説」は一般に「私は考える、ゆえに私はある」というセンテンスで有名であり、これは近世哲学の第一原理とされ、デカルトの思想の重要なもののひとつである。だがこの著作には他にも重要な思想が含まれており、その中には我々に対して未だ訴えるものもある。
    この著作の序文において、六つの段落に分けて読むことができることを作者が説明しており、第一部では「諸学問についての様々な考察」、第二部では「著者が探究した方法の主要な規則」、第三部では「この方法から引き出された道徳の規則のいくつか」、第四部では「神と人間精神との存在を証明するのに用いられた諸根拠」、第五部では「著者が探究した自然学の諸問題の順序」、そして最終部では「自然の探究においてこれまで以上に前進するために必要と思われる事柄、および著者が筆を執るようになった理由」が語られる。
    この著作を読んだ後での世界の見え方は読者の思考体系に影響を与えるに十分であると思う。

  • すこしでもトマス・アクィナスなどを読むと、デカルトがいかに清新な思想だったかがわかる。デカルトは『方法序説』を「物語」といっているが、読み返してみると、既存の学問に満足できず、9年放浪し、ドイツの路辺で「方法」に思い至ったところは、『ジャン・クリストフ』のような「魂の彷徨」という感じである。ちなみに『方法序説』では、明証性・分析・総合・枚挙の4つ規則を普遍学の基礎として真理を発見ようとする。日常生活については「慣習に従う」「決心を曲げない」「運命より自己に勝つ」ことをあげる。デカルトは社会生活では保守的なんであるが、科学ではハーヴェイを引いたり、実験を計画したり、なかなか革命的だった。

  • これは読みやすい!やっとデカルトと対話できるようになった気がする・・。購入します

  • 「我思うゆえに我あり」、それは学問において迷ってしまった時に帰るべき座標なのかもしれない。この書は、学問を多くの者に開くことがその発展を促し、そして人々の幸福に役立てる実践的なものにすることを導くものであるように思った。学問は他人から学ぶより自分で発見しなければ自らのものと出来ない。そのためにはきっと「我」に立ち返らなければならないのだろう。

  • 想像していたより、はるかに面白い。
    そして、訳が良い。

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著者プロフィール

1596-1650年。「近代哲学の祖」と称されるフランスの哲学者。主な著書として、本書(1637年)のほか、『省察』(1641年)、『哲学原理』(1644年)など。

「2022年 『方法叙説』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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