機関銃下の首相官邸 二・二六事件から終戦まで (ちくま学芸文庫 サ 27-1)

著者 :
  • 筑摩書房
4.23
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480093493

作品紹介・あらすじ

首相官邸は、今日まで二度、機関銃の銃火にさらされてきた。二・二六事件と終戦の時である。いずれも昭和天皇が事態収拾のために、帝国憲法の枠組みから逸脱しかねない決断を下した時でもあった。前者の場合は、決起した部隊を「叛乱軍」として鎮圧する旨を指示し、後者においてはポツダム宣言を受諾するという「聖断」を下したのである。著者はその二度の偶然に、最初は岡田首相の秘書官として、二度目は鈴木終戦内閣の内閣書記官長として遭遇することになった。近代日本の歴史的な瞬間を目撃し、重要な脇役として参加した著者が、その体験を生々しく綴った迫真のドキュメント。

感想・レビュー・書評

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  • かような本を読み落としているのは、まだまだ読書量が足りない証拠だろう。まず文章がいい。革新官僚の優れたバランス感覚が窺える。事件の渦中にあった人物が描く生々しさや迫力は劇的ですらある。私は文庫版の表紙を映画化された俳優の写真だと思い込んでいたのだが迫水本人の横顔だ。
    https://sessendo.blogspot.com/2020/11/blog-post_26.html

  • 首相官邸は、これまで2.26事件と終戦の時の二度にわたり機関銃の銃火にさらされた。前者では岡田首相の秘書官として、後者では鈴木内閣の内閣書記官長として、偶然、そのいずれにも居合わせることになった著者が、重要な脇役としての位置からみた事件の姿を綴ったノンフィクション。

    蹶起部隊側の目線や、その時代に生き、事件を目撃した庶民目線の話を小説というオブラートに包んだ形で目にするのとは違い、襲撃された側からの、それも人違いが元で命拾いし、決死の覚悟で脱出を遂げた岡田首相とその側近目線の体験談は、生々しく、緊迫感をもって読む者に迫る。

    信念に燃え、蹶起した若き将校たちを利用し、軍の支配力を確立しようと画策した《皇道派》の軍上層部。軍事裁判を経て、将校たちが処刑された後も、無罪となった彼らはクーデターの恐怖を利用し軍の政治支配の拡大に努め、結果、太平洋戦争へとなだれ込んでいった。本当に悪い奴らは誰だったのか・・・。
    2.26事件を契機として、軍の政治干渉を排し、政治を本来の道へと戻せなかったことが残念でならない。

    筆者は言う、「私は、若い、視野のせまい、未熟な人たちを扇動することが如何に罪ふかく、如何に危険なことであるかを思うとともに、この若い力を自己の野心のために利用せんとするものを極度ににくむ」と。

    いつの世も、時代の転換点は静かに忍び寄って来るのかも知れない。過去を知ることは、今と未来を考えることだとしみじみ思いました。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/738208

  • 2.26事件の当事者の一人。
    当事者にしか分からない真実や描写が非常に興味深かった。

  • 2.26事件・敗戦と昭和の転換期に立ち会った貴重な記録です。敗戦のことについては映画などで有名だけど、2.26事件の首相救出は詳しく知らなかったのでこの本で読めて良かった。著者の自叙伝が無いことが悔やまれる。

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著者プロフィール

1902‐77。二・二六事件当時の岡田内閣の首相秘書官、日本の終戦を決めた鈴木内閣の内閣書記官長を務める。公職追放の後、衆議院議員、転じて参議院議員になり、池田内閣の経済企画庁長官、郵政大臣を歴任。

「2015年 『大日本帝国最後の四か月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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