調査の科学 (ちくま学芸文庫 ハ 34-1 Math&Science)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480093691

感想・レビュー・書評

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  • 林知己夫の名著。大学組織におけるIRerと呼ばれる人々も含む、各組織の調査担当者必読書といえる。分析・解析方法、統計的手法をある程度体得したら、本書を活用すべきだろう。そもそも「社会調査とは何か」という、調査や統計解析を行う前と後に必要となる、いわば「思想」のようなものを持つことで分析に深みが出ると思う。

    冒頭で先の大戦における特攻機の攻撃方法と命中率の図表が示される。文字通り、人の生死を賭けた作戦に使用された。このクロス表を見て誰もが衝撃を受けるだろう。数字の背後にある一つひとつの「事実」とその蓄積は極めて重い。そしてそれらのデータを分類・計算することは、自ずと真剣にならざるを得ない。いわばデータを扱う以前の、調査者の姿勢を説く教科書や論文は、そう多くない点からも本書を一読することを勧めたい。

    私自身は必要に迫られて関連書籍を読みながら林の統計理論を使用した。業務で数量化Ⅱ類、論文でⅢ類を使ったことがあったが、その前に本書のような基本書を読んでおきたかった。

  • 過去にブルーバックスで出ていたが、絶版になっていると言われる調査業界の名著が筑摩書房で復刻されたとリサーチャー界隈で話題になていたので購入。

    過去の焼き直しなので、それを皮肉る意見もあるようだが、私のような若手世代にはとてもよい本だと感じる。
    林先生はもうなくなっており、本書は1984年に出ている。

    つまり、私よりも年上だ。

    確かにパソコン性能により格段に調査環境は変化している。
    機会学習やデータマイニングなども行われている。
    だが、このようにトラディショナルな調査が廃れたかと言えば、そうではない。むしろこういったところは見直されている。

    ずっと業界に携わった人よりも若手リサーチャーやマーケターが読むと発見があるのではないだろうか。

    コーホート分析、目から鱗。

    目次
    序章 社会調査の心
    第1章 社会調査の論理
    第2章 調査の基本―標本調査の考え方
    第3章 質問の仕方の科学
    第4章 調査実施の科学
    第5章 データ分析のロジック
    第6章 調査結果をどう使うか

  • 一度で正しいデータは得られない。
    社会調査はあくまでもひとつの道具。

  • 日本の社会調査を切り開いた著者がわかりやすく、かつ、豊富な経験に裏打ちされた調査の知識について解説する。著者は「林の数量化理論」でも有名。

    _____________________
    【断片的な雑感】

    林知己夫は会社に全書があるのだが、統計調査のほとんどの分野を網羅しており、すごいなといつも思ってた。『野うさぎを数える』とか名前が面白そうじゃないですか。多岐にわたってて本当にすごい。林の数量化理論でも有名だが、その内容がぼんやりとわかってよかった。ほら、回帰分析とか判別分析とかいうよりも林の数量化理論Ⅰ類、Ⅱ類って言った方がかっこいいし。

    つうか、統計の話が、戦争体験から始まるのがすごい。さすが昔の人。オペーレーションズリサーチの話面白いけど、血なまぐさいな。

    最小二乗法、分散と平均のつながりがなんとなくわかって良かった。チェビシェフの不等式と母集団推定はよくわからんが、こんなにコンパクトによく解説しようと頑張っているなと思った。ガウス分布ってなんだと思ったら正規分布のことか。

    「人の心には反対と賛成の両方があるので、一概に片方の意見となった世論で政策を勧めて嫌なところが見えてき、もう片方の反対の気持ちが出てくるので、そのことを考慮しておかねばならない」(88P)
    なるほどね。

    目標回収率80%っていい時代だな。いまは65%くらいになっているが。そう考えると、無作為抽出の崩壊が起き始めており、回収率の低下を防ぐためにどうすればよいのかというのが社会調査の喫緊の課題だと思う。割り当て法を駆使するしかないのか。

    標本誤差は、標本の大きさがでかくなれば小さくなるが、代わりに非標本誤差が増える。検定は非標本誤差が少ない集団で役に立つことが多い。とのこと。なるほどね。

    質的なものの数量化(パターン分類の数量化)の大事さ。質的な項目はパターン分類で数量化をしようぜとのこと。

    時代ともになにかを抜本的に変えるのは必要だが、調査においては変えない勇気が必要だ。昔から一貫して変わらない設計であれば時代の変化をよく移せる。悪い質問も変えてはいけない。その質問の性質を熟知した上で継続すること。新しい質問に変えるときはどんな性質の違いかあるか明らかにした上で使っていくこと。

    文章は平易なようでわかりにくい。はっきり言って文章が下手。総括として、完璧な調査は実際には費用や時間の関係で無理だし、ある条件の下の限られた特性しかわからないのだから、それを踏まえたうえでどのように調査を選んで実行していくのか、そして、その調査結果をどのように目的に役立て行動していくのか、が重要だよねと言っている。そもそも調査の長所と短所について熟知してから調査を行おうねと。

  • 系推薦図書 総合教育院
    【配架場所】 図・3F文庫新書 ちくま学芸文庫
    【OPACへのリンク】
    https://opac.lib.tut.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=188964

  • 598円購入2018-06-17

  • 統計的手法についての解説だと思って手に取ったがそうではなかった。むしろもっと実際的な、調査をするにあたっての心構えだとか、調査手法はどれが良いとかそういう話である。一般論ながら、そうした各論ほど時間による劣化を受けるものである。
    じっさいに調査を行う必要が出てきたら、重宝するタイプの本かもしれない。

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著者プロフィール

元統数研

「2022年 『社会調査ハンドブック 復刊』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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