資本論に学ぶ (ちくま学芸文庫 ウ 26-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480096562

作品紹介・あらすじ

マルクスをいかに読み、そこから何を考えるべきか。『資本論』を批判的に継承し独自の理論を構築した泰斗がその精髄を説き明かす

感想・レビュー・書評

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  •  本書は原理論、段階論、現状分析、という独自の理論を生んだ、宇野弘蔵の入門書といえる本。マルクス『資本論』をベースに、資本主義社会の分析に重きを置く宇野派は、主流派のように、マルクスの全てに迎合するわけではない。本書でも、繰り返し述べるように、一部の考えには肯定する一方で、理論的な不十分な点は徹底的に批判する。マルクス経済学者として、宇野はマルクスに真摯に向き合う。
     興味深いことに、『資本論』を初めて読破した時点で、内容の趣旨がよくわからなかったと述べる。同時期に読んだレーニン『帝国主義』のほうが理解できたという。また、マルクス経済学者とはいえ、『資本論』のうち、重要な点だけを繰り返し読み、そこから研究に励んだ。このように、ポイントをおさえて、資本主義社会を分析することから、古典的名著だからといって、全てに同意する必要はない。実際、繰り返し読むたびに、宇マルクスに腹をたてた。そのほかにも、宇野は小説を読むことを好んでおり、中でも太宰治のファンだと公言する。
     以上から、本書はこれから『資本論』を読みたいと思う、あるいは、読んだことはあるが、宇野弘蔵という人物像に関心がある読者にすすめる。共産党系とは異なる解釈で、資本主義社会の本質に迫る。

  • ソ連の批判

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/738023

  • 宇野弘蔵 「 資本論 に学ぶ 」

    宇野理論についての講演と対談を集めた本。労働価値説、恐慌論など マルクス「資本論」が論証していない部分について考察。見事に論破している。他の資本論解説本とは レベルが違う感じ


    資本主義の成立から消滅まで(資本の原始的蓄積から 収奪者が収奪されるまで)の考察は レーニン「帝国主義」を基礎に マルクス「資本論」を読んでいることがうかがえる内容。レーニン「帝国主義」を読んでみたい


    資本主義社会の基本は「古いものを次々と解体していく商品経済」であり、資本主義の核心は 「労働力の商品化」 社会主義をやるには計画経済をやらなくてはならないが、社会主義の核心は「労働力商品化の廃絶〜人間の能力を商品化しないこと」





    資本主義社会の基本は 商品経済〜商品経済は、古いものを解体し、純粋の資本主義社会へ近づけていく

    資本主義の核心は 労働力の商品化
    *労働力も商品であり、その商品を生産するのに要する労働時間によって価値が決まる
    *労働力という商品は、他の商品のように資本の生産物ではない〜労働力は商品であっても直接に生産できない


    資本論の疑問点
    *商品の交換関係だけで労働価値説を論証できないのでは? 商品形態
    が生産過程を把握したところ(資本の生産過程)で初めて労働価値説を論証できる
    *窮乏化法則
    *資本家的私有制の最後の鐘が鳴る、収奪者は収奪される
    *利子論

    マルクスが19世紀のイギリスに見た構造
    *資本主義は、発展するにしたがって、だんだんと純粋の資本主義社会に近づいてくるという傾向を持つ
    *資本主義社会の基本は 商品経済
    〜商品経済は、古いものを解体し、純粋の資本主義社会へ近づけていく

    資本の原始的蓄積(本源的蓄積)
    *労働者が無産労働者にならないと資本主義にならない
    *百姓を農地から追い払うと無産労働者ができ、それによって貨幣経済が資本として生産過程に入り、資本主義が確立する

    資本家的私有制の最後の鐘が鳴る、収奪者が収奪される
    *資本の原始的蓄積というはじめがあれば、終わりがあることを意味
    *収奪=財産を取り上げる→搾取(6時間の代価を払って12時間の労働力を買うとき、6時間は搾取されたことになる)
    *収奪者が収奪される=社会主義になる

    資本主義の核心は 労働力の商品化
    *労働力も商品であり、その商品を生産するのに要する労働時間によって価値が決まる
    *労働力という商品は、他の商品のように資本の生産物ではない〜労働力は商品であっても直接に生産できない

    価値形態論
    「リンネル20ヤールの価値は一着の上着である」は リンネル20ヤールを所有する人が、一着の上着に値すると言ったのでは

    資本家的商品経済は、価値法則により全体の仕組みができている
    価値法則とは、ある商品を生産するのに要する労働時間で その価値が決まり、その価値によって商品が互いに交換されるだけでなく、社会的にいろいろの商品が、生産に要する労働時間を基準にして生産される

    資本主義社会では、労働の配分が労働価値説を基準に資本の形で行われる

    マルクス恐慌論
    *なぜ資本を作りすぎて失業者を出すかを明らかにし、労働力商品の特殊な価値規定を明らかにする
    *恐慌とは、資本の蓄積が労働人口にマッチしない場合 起きる〜不況(労働者過剰)のときに合理化したり、好況(労働者不足)のとき拡張する


    窮乏化法則
    マルクスのつまずきは人口法則を発見しながら、資本主義が生産方法を改善するため、つねに過剰人口があり、窮乏化するとしたこと

    好況により過剰人口が吸収され賃金が上がると、資本が過剰になり投下資本利益率が下がる













  • 凄くいい本でした。

    宇野弘蔵という人の印象が変わった。もっととっつき難くいかつい人かと思っていたが全く違った。

    社会主義とは労働力の商品化の廃絶のことであるという。実に面白い。社会主義の主張は大体正しいと思っていたのは本当とのこと。

    僕は基本的に学問は帰納としてあると思っている。自省・反省から帰納として世界を見て取る学問は唯物論と言えると思う。宇野弘蔵が自己批判と不可知論について触れているところがあるが、自己批判とは帰納のことであり唯物論としてある。それに対し不可知論をいう人がいるだろう。不可知論は客観的として演繹として体系を建てるだろう。しかし帰納は決して不可知論にはならない。真理が蓋然的なものとしてあるかもしれないがそれは不可知論では決してない。本質的に違うものである。そこを知ることが大きい。帰納の学問があることを知ることで世界は変わっていく変革の可能性の中心である。

    実に面白かった。この本で宇野弘蔵の印象はガラッと変わったね。親しみを覚えた。著作集など読む気がわいてきた。

  • 331.6||Un

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著者プロフィール

1897年倉敷に生まれる。東京帝国大学経済学部卒業後,ドイツに留学。帰国後,東北帝国大学助教授。1938年人民戦線事件に連坐。日本貿易研究所,三菱経済研究所勤務を経て,戦後東京大学社会科学研究所教授,法政大学教授を歴任。1977年死去。『宇野弘蔵著作集』(全11巻,岩波書店),『恐慌論』『経済原論』(岩波文庫),『資本論に学ぶ』『社会科学としての経済学』(ちくま学芸文庫)ほか。

「2017年 『資本論五十年 下 〈改装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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