トルコから世界を見る ――ちがう国の人と生きるには? (ちくまQブックス)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480251398

作品紹介・あらすじ

西洋と東洋、どうしたら二つの文化の融合が可能かを考え続けてきた国・トルコ。トルコの考え方を通して、異文化理解やグローバルとはどういうことかを考える。

感想・レビュー・書評

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  • トルコから見た世界を実感できました。ウクライナと地震、いろいろと厳しいトルコの現状にも思いをきたしました。

  • 『教えて!タリバンのこと』(内藤正典)がキッカケでトルコがどんな国なのかをもっと知りたいと思って手に取った『トルコから世界を見る』(内藤正典)。

    最近、この類の本を「海外の事、日本史世界史とか勉強した事は頭からスッカリ抜け落ちてて、ほんんどわかってないから」と思って読むんだけど……

    今回も案の定、「カッパドキアとトルコアイス以外、ホンットわかってなかった」という事を痛感させられました。

    【民族】、【各宗教の考え方】、【移民】、【外国人労働者】、【各国とトルコの関係、その歴史】……。

    改めて知って、内容の深さに触れて、以下4点を思いました。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    ❶歴史を読むと暗い気持ちになるけど、国の文化面を読むとなんかホッコリする。

    ただ、暗いと言っても向き合わなきゃいけないって事はわかってます。

    ❷外国のよくわからない事は、自国である日本を比較に出すとわかりやすくなる気がする。

    ❸ずっと母国ではなく違う国に住んでいるのに、そこで「日本語のうまい外国人」としてしか見られない彼らの悩みを私はわかっているんだろうか?いや、わかってない。

    「上手ですね」という余計な一言を言ってしまってそう。

    ❹海外で生まれる移民の子どもたちが生き方に悩むのは、何となくわかる。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    などなど。

    勉強になったんだけど、ちょっと複雑な気持ちで読み終えました。

  • 30年ほど前の著に、情勢の変化に合わせて結構な加筆がされていました。ヤングアダルト世代向けの内容と語彙ですが、普段ノンフィクションに慣れていない大人にもちょうどよい読みやすさでした。新聞の社会欄より柔らかく、内容はより深くという印象です。
    むしろまだ考えの固まっていない子どもたち以上に、自分の考え方や意識していない固定観念へ突き刺さるところが多いように感じます。

  • 著者のトルコの友人との会話、実体験が書かれてあり、トルコ人というの地図上の認識でなく、トルコで暮らす人々を知人や友人のような距離感で知れたように感じました。
    10代〜わかりやすい文章だと思います。

  • ボリュームは少なく読みやすい。若者向けだけど、イスラエルのニュースを日々見ていると、あらためて思い込みや偏見に自分自身が染まっていないか?と自問。

  • 高校生~大人向けであれば星5、中学生向けだと星4。内藤先生の著書としては易しいけれど、本シリーズの他書とくらべると内容が濃く言葉遣いも難しいので、中学生読者は驚くかもしれない。中学生に読めない内容ではないけれど、興味の薄い子どもは途中であきらめてしまいそう。ほかの方のレビューを見ても、中学生というより大人に読まれている様子。ふつうの中学生に向けては、内容を抜粋し、よりやさしい言葉で言い換えながら紹介する必要がありそう。それでもメインテーマであるところの「ものさしは一つではない」は多くの中学生に考えてほしい。

  • トルコを知る入門書として。
    原著は『トルコのものさし 日本のものさし』。
    10代向けに加筆修正されているようで、読みやすく良かった。
    スカーフ問題のことをもっと知りたくなった。
    第3章「素顔のトルコの人たち」は微笑ましくてよかったです。

  • 「文化を理解するためのものさしは、ひとつではない
    環境や貧困、差別や戦争、世界規模の課題解決は、他国の人と取り組まなくてはならない。そのためには自国とちがう国の文化を知ることが重要だ。アジアとヨーロッパ、二つの大陸にまたがる国トルコは「東洋のものさし」「西洋のものさし」の融合が可能か考え続けてきた。トルコの人びとの考え方を通して、世界を眺めると、異文化理解のてがかりが見えてくる。」

    著者:内藤正典(ないとう・まさのり)
    1956年東京都生まれ。東京大学教養学部教養学科科学史・科学哲学分科卒業。同大学院理学系研究科地理学専門課程中退。博士(社会学)。専門は多文化共生論、現代イスラム地域研究。同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授。一橋大学名誉教授。著書に『イスラームから世界を見る』(ちくまプリマー新書)、『となりのイスラム』(ミシマ社)、『外国人労働者・移民・難民ってだれのこと?』(集英社)、『イスラームからヨーロッパをみる』(岩波新書)ほか多数。


  • 内藤正典『イスラームからヨーロッパを見る』<岩波新書>を読んでいたのだが、中東事情やイスラム教等々について、あまりに分からないために挫折した。そうしたわけで、新書の中で出てきたトルコを事例に、同じ著者の本書を読んだ。

    現在、西欧世界では、「イスラム」という言葉を聞いただけで「嫌な感じ」を受ける人が増えており、日本でも同じように、イスラム教の信者というだけで怖いと感じる人も多い。筆者は、こうした態度に対して、「私たちは果たしてイスラムのことをどれだけ理解しているでしょうか?」と投げかけ、知らない文明や文化について、簡単に好き嫌いを口にしてしまうことの危うさを指摘する。そして、「日本のものさし」だけで、自分たちと異なる「異文化」を測らないことが大切だと述べる。
    「ものさし」というのは、「不平等をなくそう」「公正をすべての人」と言ったときに、何を平等と考えるか、何を公正と考えるかを決める価値観のことだという。二つの大陸にまたがって、ヨーロッパとアジアの間にあったトルコでは、常に「西洋のものさし」と「東洋(イスラム)のものさし」をどうしたら融合できるかを模索してきた。この本では、そんなトルコの歴史を振り返り、現実にいた「トルコ人」の素顔を描くことを通して、日本の社会制度や私たちが持っている「日本のものさし」に揺さぶりをかける。

    中でも印象に残っているのは、第1章「イスラムと政教分離のはざま」だった。ここでは、トルコ共和国建国から、イスラム政党が民衆の支持を得るまでの経緯が説明されている。トルコは、その建国のときから、政治と宗教を分離する「政教分離」の考え方に則って、「世俗的な国家」であるとしてきた。しかし、現在、トルコで民衆からの支持を受けているのは、イスラム教の道徳観を政治理念とする公正・発展党である。
    こうした状況になるまでには、政治を宗教から分離することを訴える「世俗主義」の政党による不正と、イスラム政党による生活改善の取り組みがあった。政教分離を訴える、「世俗主義」の政党は、国内の混乱を抑えるための手段として、軍部のクーデターに訴えたり、贈収賄を行っていたりという有様であった。そして、1990年代まで、都市部を中心とした貧困層の生活などは、改善されないことに、民衆は不満を持っていた。一方で、イスラム政党の福祉党は、こうした都市問題に対して、マンションの建設や経済的支援を通して、解決を乗り出した。こうした施策は、目に見えて民衆の劣悪な生活を改善し、少しずつ支持を得るようになってきたのである。

    こうしたイスラム政党の活動は、イスラム教の教えに基づく、倫理観に則ったもので、多くのイスラム信者の心にも訴えるものであった。そして、西洋的な民主的な手続きの中で行われたものだった。こういった宗教と政治の関係は、あまり日本では馴染みのない世界観であるように思う。

  • 30年前に書かれた内容に少し現在の状況を書き加えられた内容。
    トルコはイスラム教だが、政教分離を掲げている国である。というトルコの政情から、バイラムというイスラムにちなんだお祭り、労働者の話、多岐にわたる内容が解説されている。
    薄くて読みやすい。
    秩序をつくるより、文化を異にする社会同士で、コモンセンス(共通の理解)を、作ることが大切である。
    この一文が心に残る。

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著者プロフィール

1956年東京都生まれ。東京大学教養学部教養学科科学史・科学哲学文科卒業。社会学博士。専門は多文化共生論、現代イスラム地域研究。一橋大学教授を経て、同支社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授。著書に『イスラームから世界を見る』(ちくまプリマー新書)『となりのイスラム』(ミシマ社)『外国人労働者・移民・難民ってだれのこと?』(集英社)ほか多数。

「2022年 『トルコから世界を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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