- Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480423863
作品紹介・あらすじ
染織家で人間国宝の著者の随筆集。「ちよう、はたり」とは、著者の母が師と仰いだ青田五良の機の音。柳宗悦の民芸運動に従い、薄暗い土間で一心不乱に織っていた青年の機音が、著者の耳底に甦る。「物を創るとは汚すことだ」という自戒、そう思いつつも、機へ向かうときの沸き立つような気持ち。日本の色を残すことへの使命感など、折々の思いを綴る。口絵に井上隆雄の写真を付す。
感想・レビュー・書評
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作ることは汚すことだ、というところから半分以降は、もっと自分がファッションに関する経験や目利きを積んでから読むべきだと思うほどに。
言葉の一つ一つにも彼女が糸を紡いできた心が織り込まれている。 -
4.29/85
内容(「BOOK」データベースより)
『染織家で人間国宝の著者の随筆集。「ちよう、はたり」とは、著者の母が師と仰いだ青田五良の機の音。柳宗悦の民芸運動に従い、薄暗い土間で一心不乱に織っていた青年の機音が、著者の耳底に甦る。「物を創るとは汚すことだ」という自戒、そう思いつつも、機へ向かうときの沸き立つような気持ち。日本の色を残すことへの使命感など、折々の思いを綴る。口絵に井上隆雄の写真を付す。』
『ちよう、はたり』
著者:志村ふくみ
出版社 : 筑摩書房
文庫 : 279ページ -
柳宗悦の民芸運動のエネルギーは、母親を通して、そして志村さんを支える人々を通して志村さんを突き動かす力であることは間違いありません。母親と離ればなれになった境遇に関しても、母親との再会についてもすべてこのエネルギーとか、時代の息吹が働いていることを感じます(このあたり『一色一生』講談社文芸文庫に詳細が記されています)。しかし、志村さんの真価は彼女を励まし続けるその息吹の中に留まり続けることではないとも思います。
実際「秋霞」という作品をめぐって、柳宗悦から「あなたはもう民芸作家ではない」という半ば破門宣告のような言葉を受けても、どうしても農家のボロ織を梃子にした、抽象的美意識を導入せざるを得なかったと、志村さんは述懐しています。
その、志村さんが次のように自身の作家としての成長を語っているのが印象的です。
もし人に、一生の間にする仕事の範疇とか、内容とか、分量とか、そのすべてを含んで、やるべき仕事というものがあるとすれば、その出発点において帰結点がどこかにさだめられているのではないだろうか。勿論本人は全く無意識でしていることではあるが、一つの円の上を螺旋形のように廻りながら、どんなに思いがけない発見や、飛躍があるとしても、また反対にどんな挫折や、障害があるとしても、そういうものをすべて包含しつつ、仕事をしてゆくべく出発したのだという気がする。(21頁)
子どもを抱えてひとり生きていかなければならなくなったとき、民芸運動から作品を認められなかったとき、ご自身が「山野に放り出されて、一匹狼になった気がした」と表現される、そのどん底を味わってなお感じるのが、この境地です。そうしてみると、「一つの円の上を螺旋形のように廻る」姿は、竜巻のように力強いエネルギーを孕んでいるように思います。 -
ちよう、はたりとはなんのことだろう、と思ったら、機を織る音のことでした。
→https://ameblo.jp/sunnyday-tomorrow/entry-12143608919.html -
珠玉の数々、とはこの本の文章をいうのではなかろうか。いろいろな「おもい」(字を宛てれば、思い、とも、想いとも。)にあふれている。そのあふれる「おもい」を受けとめようとするとき、心は静かに震える。
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珠玉の数々、とはこの本の文章をいうのではなかろうか。いろいろな「おもい」(字を宛てれば、思い、とも、想いとも。)にあふれている。そのあふれる「おもい」を受けとめようとするとき、心は静かに震える。
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芸術家としても女性としても真摯に生きるている人の文章で読んでいてすがすがしい気持ちになった。
南雲先生おすすめ。