- Amazon.co.jp ・本 (395ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480428073
感想・レビュー・書評
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作家、翻訳家の常盤新平さんの、70代に入ってからのエッセイ集。
「銀座」のタイトルと、表紙絵に惹かれて手に取った。
銀座は、歴史と懐かしさを感じさせる大人の街で、私にとっては雲の上のようなイメージ。
今はどうなっているか知らないけれど。
一日おきにパンとお粥の朝食、入浴洗髪髭剃、猫に餌をやるところから始まるのだが、多彩な読書と交友の記録に、なんだか全然飽きない。
銀座三越の地下二階「ジョアン」で甘食を買い、浦安のおばあちゃんが握る寿司屋に行く。
『ニューヨーカー』を毎週愛読(洋書は高いなあ…)
読むことと食べることの他に楽しみがない、とやや年寄りの繰り言めいた記述も多いが、「コレステロールが上がっているから肉を避けよ」とクリニックで言われた帰りに、お気に入りの店でかつ丼を食べて帰るなど、オイオイと突っ込みたくなるユーモアも。
気に入った店が、主に店主の高齢化から、一軒また一軒と閉じていく描写が切ないが、以前に読んだときにはわからないと思った本が再読で面白く感じられたと、人間の熟成はいいものだと思わせる部分も大いにある。
奥付を見ると、2011年3月10日、第一刷発行とある。
一つの時代が終わったような区切りの日付と感じられた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
常磐新平『銀座旅日記』(2011)を読む。
文庫オリジナル。飄々とした文章がいい。
いまはなくなってしまった新橋Tony's Barのカウンターで
ひとりグラスを傾ける常磐を見かけたことがある。
本書の文体は常磐が敬愛する山口瞳や、
文中に何度か出てくる池波正太郎の日記をほうふつとさせるが
本人は百も承知で書いているのだろう。
読書と散歩と飲食が好きな老人の繰り言は
どこか憎めぬ味わいがある。
人がどう老いて、どう死んでいけばいいのか。
僕にはとうてい答えなど分からぬが、
つい参考にしてみたくなる一冊だ。
2003年2月から2006年8月まで
『ダカーポ』(マガジンハウス)連載。
(文中敬称略) -
新年早々、オッペンハイマーの作品で失敗したので次は絶対に
はずしたくなかった。なので、本書である。常盤新平氏は私の
好きな作家であり、翻訳者である。
既に休刊となった雑誌「ダ・カーポ」に3年半に渡って連載された
日記風エッセイである。うん、当たりである。
70代前半の常盤氏の日常は非常に活動的だ。タイトルにある銀座
ばかりではなく、神保町や新宿、平井や浦安へまで足を運んでいる。
それがほとんど電車なのだ。理由:電車の中で本が読めるから。
そうなのだ。電車の中ってちょっとした書斎なんだよな。家にいる
より読書がはかどるんだもの。
行きつけの煙草屋で煙草を買って、行きつけの喫茶店(カフェではない)
で一服して、行きつけの寿司屋や飲み屋で杯を傾けて。
勿論、仕事の記述もあるし、常盤氏が主宰していた翻訳教室のこと
にも触れている。手元に積んだままの氏の翻訳によるノンフィクション
作品のことにも触れられていた。う~む、早く読まなくちゃ。
そして、時々語られる老いることの切なさ。
それは浦安にあった寿司屋の記述でほろっとする。おばあさんの
握る寿司が好きで、常盤氏が通っていた場所なのだが、ある日、
自転車で出前に行ったおばあさん。帰り道が分からなくなったこと
で、娘たちが心配して閉店に至った。
ご自身の老いることへの寂しさもところどころにあり、ちょっぴり
哀しい。しかし、老いても好奇心旺盛なところが垣間見れる
温かいエッセイだ。
その常盤氏も亡くなった。もっともっと、素敵な翻訳本を読みたかった。 -
雑誌「ダ・カーポ」の連載が、ようやく一冊にまとまった。
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80歳になる著者が食べ歩き飲み読む日々の記録をつづった日記。こういう風に老後を過ごせたら良いなあと思います。
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銀座のみならず、お茶の水など近郊の様子が描かれ、氏の日常の動きがよくわかります。