日本幻想文学大全 I 幻妖の水脈 (ちくま文庫 ひ 21-5 日本幻想文学大全)
- 筑摩書房 (2013年9月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (606ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480431110
感想・レビュー・書評
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図書館本
これはお得。不思議なお話を集めた短編。
小松左京 牛の首 で検索したもの。
乱歩先生の、挿絵と旅する男。
柳田國男、遠野物語、河童のくだりなど。
坂口安吾 桜の森の満開の下 首遊びの女。
百閒先生の冥途。
そして私のお目当ては、
小松左京、牛の首。これは今までに聞いたこともないくらい恐ろしい話。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
既読作品が多かったけれど、精選された豪華アンソロジーだったので、とても楽しめた。初読の作品でよかったのは石川淳訳の「白峯」(雨月物語)そしてやはり折口信夫「死者の書」は別格。冒頭の「かの人の眠りは、徐かに覚めて行った。」からして素晴らしいし、全体が美しい。偏愛している都筑氏と小松左京氏の短編が取り上げられていたのも嬉しかった。来月の続巻も楽しみ。
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日本の幻想文学を古典から順に抑えていくアンソロジーで、読んだことがあるお話もこのアンソロの順に読んで行くと違う風景が見えてくる不思議。
序文は澁澤龍彦が監修したアンソロからの文で、やはり澁澤作品を抑えねばという決意を新たにしました。
このアンソロ、例えば『今昔物語』から収録されている「鬼のために妻を吸い殺された話」「馬に化身された僧の話」を読んでから後に収録されてる「高野聖」を読むと人気のない怪しい家、人が獣に変えられるという高野聖でも用いられているディティールが自動的に抑えられる仕組みになっていてすごい。
すべての収録作が恐らく有機的につながっていてとても読み応えがあります。
以下印象深かったお話の感想。
久生十蘭「予言」
学生の頃にも手を出してたんだけど久々に読むと一層面白い。
「予言」は友人黒田の予言通りに物事が進んでいく不気味さ、夢が入れ子構造のようになってて現実がどれか惑わされる感じがよい。
最後の一文で語りにも仕掛けがある感じがして気になる…。
三島由紀夫「仲間」
短編なんだけどこれは一体何の話なんだ?「僕」と「お父さん」と「あの人」が交流し、「今夜から私たちは三人になるんだよ、坊や」と意味深に物語は閉じる。
「お父さん」が「あの人」のベッドに花瓶の水を撒いて「もうあの人も眠ることはない」とか一体何の話なのか興味が尽きない。ヴァンパイアなの⁇ちょっと論文探したいな。
都筑道夫「風見鶏」
電話というメディア、百科事典といった近代らしいモチーフに加えて硝子に映った自己への嫌悪。近代っぽくてとてもいいです。
電話口で閉じ込められていると訴える女性の方も文学的に探りがいがありそうな気もします。彼女は何のメタファーなんだろうか。 -
2013-9-20
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以前、編者が出版した青銅社版の改訂文庫本アンソロジー。
新たに何編か追加されているので思案後購入。東京創元社版の怪奇アンソロジー集成(紀田順一郎氏との共著)を買い漏らしているのが悔しい。 -
日本における幻想小説オールタイムベスト。源氏から集成から柳田、折口、三島まで。
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ちくま文庫から出ている『世界幻想文学大全』の続編となる、こちらは『日本篇』。
『源氏物語』『今昔物語』といった古典から、戦後の短編まで収録されている。
幻想文学といえば必ず名前が挙がる泉鏡花は『高野聖』を収録。こういうアンソロジーには必ずといっていいほど『高野聖』なので他の作品でも良かったのでは……とは思うが、何回読んでも素晴らしいものは素晴らしいのだった。
折口信夫の『死者の書』が収録されているのは珍しい。
乱歩は『押絵と旅する男』。あの、『これをごらんになりたいのでしょう』という台詞には本当にゾクゾクさせられる。素敵。
佐藤春夫の『女誠扇綺譚』は台湾を舞台にしたエキゾチックな怪談。ググってみたが『禿頭港』というのは実在しないらしい。残念……。