人生をいじくり回してはいけない (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 370
感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480432490

作品紹介・あらすじ

水木サンが見たこの世の地獄と天国。人生、自然の流れに身を委ね、のんびり暮らそうというエッセイ。帯文=外山滋比古、中川翔子。

感想・レビュー・書評

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  • (「オモコロ」というWebメディアで紹介されてて気になって読みました)

    水木しげるといえば漫画というイメージでしたがとても興味深いエッセイでした。
    水木しげる作品の放つ、不思議な魅力やパワーの理由がなんとなくわかる気がしました。

    「無能のヒト」ー「幸福なんて、一%のアタマのいいヒトだけのものです。」
    「『幸せ』なんて言葉はないほうがいい」
    など身に染みました。
    水木しげるイズムを全ては無理ですが、可能なところから取り入れていきたいものです。

  •  水木しげるといえば「怠け者になりなさい」という人生訓を耳にしたことがあったが、その言葉から受ける印象と、実際に水木しげるが語る内容には大きな差があった。
     水木しげるはこの本の中で、次の要旨のことを述べている。ほとんどの人間は大した努力もしないで幸福を追い求めているが、幸福になりたいなら努力しなければならない。しかし努力しても成功するのは一割ぐらいだから、諦めてのんびり暮らした方が幸福かもしれない。怠け者になりなさい。(p.218)僕が「怠け者になりなさい」という言葉からイメージしていたのは、あくせくしないでのんびり生きることが幸せにつながる、というような積極的に怠けることを推奨する意見だった。ところが、本書の中では、幸せになりたければ努力をしなければならない、と努力の必要性を最初に説いている。そのあとで、努力しても成功するとは限らないことを引き合いにだして、怠け者になれと述べているのだ。
     水木しげるの「怠け者になりなさい」という言葉は、本人の確かな経験と人間観察に裏打ちされたものだったのだろう。

  • ラバウルで片腕を失ったにも拘らず、あれだけ妖怪を描きまくってた人が
    「幸福の問題は複雑怪奇である」
    と言う
    幸せなんて求めるな、と

    家族に囲まれて穏やかに死ぬという、結果的に超幸せだった人が言うんだから、どんな言説より多分真理だ

  • 水木しげるとやなせたかしはいいことを言う、という確かな自信があった。
    もちろん、二人が生み出した作品に対する信頼によるものではあるのだが、戦争に行ったからというのが大きな理由だ。
    しかし、本人たちのことはよく知らなかったので本書を読んでみた。やはり、水木しげるとやなせたかしはいいことを言うのだと思う。

    最前線を経験した水木しげるの語りは壮絶な内容のはずなのに、なんだかふわふわとしていて柔らかい気持ちになってくる。人生をいじくり回さず、好きな絵をたくさん描いて、たくさん寝て、妖怪に寄り添えば、こういう戦争の伝え方ができるようになるのだろうか。

  • ☆☆☆2018年12月レビュー☆☆☆


    水木氏が、戦争体験を中心に人生観を語る。僕がもっとも印象に残ったのは「むかし」というのは今の感覚では想像のつかない世界があり、妖怪は存在したという。
    妖怪は「見える」ものではなく「感じる」もの。行灯や提灯の世界でこそ、妖怪は存在できるのであって、蛍光灯の世界では、居場所がなく滅びてまったという。

    水木氏のように、「好き」なことを徹底できた人生は素晴らしいと思う。とはいえ、あくせくせず、流れに任せて「人生をいじくり回してはいけない」というのが水木氏の主張。何もかも自己責任で、自らの努力こそが重要というのは確かに一面ではあるが、水木氏が戦争中に出会った土人部落のように、自然の一部として大いなるものに生かされているという感覚も大事だろう。

  • 氏のような壮絶な戦争体験をしたら、自分は生きているのではなく生かされていると強く感じるのも当然であろう。また、生かされてる時間は自分の好きなことに使うというのも、死と隣り合わせの経験をしたことで引き立ったのだと思う。
    妖怪についての考え方だけでなく、著者の死生観、生き方がとてもよくわかる本。

  • すごくよかったです。

  • この人のエッセイってほんとおもしろいよね。そもそも南方で従軍して現地民と仲良くなってしまうなんて水木先生だけだろうから、何万人に1人の才能の持ち主なのだろう。普通の人が旧日本軍の組織の中で同じことをできたはずがない。
    フランス女性の下着の本を読んだから奥さんにフランスの下着を着せようとしたり、ゲーテの名言を下ネタとしてら解釈しようとしたり、その場しのぎに作ったような適当なそうめんを食べたり。他人がつくつまたそうめんをそんなに悪くいう人いる?他の漫画家をディスって自分を上げたりして、意外に口が悪いのも面白いポイント。
    「禿のデザイナー」という発想も面白い。ほんとに物事をフラットに見る人だなーと感心。そりゃ妖怪も見えるわな。

  • 多分また読み返す一冊。

    私も妖怪(目には見えないものや、世界)を信じます。

    壮絶な戦争体験。何物かに生かされている感覚。

    のんびりした水木サンのイメージとは違う、ある意味、生きることに対する厳しい見方もちらり。

    本当に大切なことが何なのか考える一冊ともなった。

  • カナをよく使うんだな

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著者プロフィール

1922年(大正11年)生まれ、鳥取県境港市で育つ。太平洋戦争時、ラバウル戦線で左腕を失う。復員後、紙芝居画家を経て貸本漫画を描き始め、1957年『ロケットマン』でデビュー。以後、戦記もの、妖怪ものなど数多くの作品を発表。1965年『テレビくん』で第6回講談社児童漫画賞を受賞。1989年『昭和史』で第13回講談社漫画賞を受賞。1991年紫綬褒章受章、2003年旭日小綬章受章。主な作品に『ゲゲゲの鬼太郎』『河童の三平』『悪魔くん』『総員玉砕せよ!』『のんのんばあとオレ』など。2015年11月死去。

「2022年 『水木しげるの大人の塗り絵 あの世紀行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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