- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480433688
作品紹介・あらすじ
赤羽、立石、西荻窪……ハシゴ酒から見えてくるのは。古きよき居酒屋を通して戦後東京の変遷に思いを馳せた、情熱あふれる体験記。
感想・レビュー・書評
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予想に反して、自分が日本人であることに恥ずかしさを感じる程、素晴らしい日本の歴史・文化論が綴られる。語彙の豊富さは並の日本人を遥かに凌駕し、論理的な展開と膨大な註釈による論理の補強と、日本人がお手本とすべき巧みな文章に驚いた。著者はアメリカ生まれの早稲田大学国際教養学部教授で、ジャズピアニストの顔を持つというのだから、巧みな文章力を操る理由にも少し納得がいく。
日本人よりも日本人らしい著者が、あくまでも冷静な視点で描いた東京の居酒屋を巡るという趣向のノンフィクションであるが、単なる居酒屋探訪に留まらず、町の歴史や文化にも物凄く詳しく言及しているのには驚愕した。
赤羽、立石、西荻窪、はたまた溝口、府中、大森、平和島、大井、須崎、木場、立川、十条、王子、お花茶屋、吉祥寺、国立のディープな居酒屋を巡りながら、その町の歴史や文化、人間模様までも炙り出している。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
その店その街に歴史あり。自分の住む街で飲み歩きたくなった。
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立ち呑みがいちばん性に合う。ひとりで20~30分過ごす。昔は荻窪駅横の「鳥もと」に毎日かよったもので、行くと何も言わず聞かれずビールが1本出てきた。今は西荻の「戎」にたまに行く。本書ではその「戎」についてかなりのページを割いています。
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著者のマイク・モラスキーはアメリカ人の日本文学・文化研究者であり、ジャズピアニストとしての顔も持つ才人であるが、もう一つの顔が日本の赤提灯こと居酒屋をこよなく愛する”居酒屋ナショナリスト”としての顔である。
本書は、溝口、立川、大井町、府中、赤羽、立石、西荻窪などの町にある居酒屋を巡った飲み歩きエッセイという体裁を取っている。しかし研究者たる著者の力量がここからという感じなのだが、単なる飲み歩きだけではなく、その町の成り立ちやそのような居酒屋文化が発祥した背景としての町固有の歴史に関する調査もセットになっている点がこの手のテーマの本と一線を画しているポイントである。
町によっては公営ギャンブル、戦中・戦後の街娼、米軍による占領時代の記憶など様々な町固有のエッセンスが見え隠れする。そうしたちょっと硬めの内容と、極めてエッセイ的に柔らかい飲み歩きの記録が良い塩梅にミックスされて読者を飽きさせない。
もっとも、2011~2012年ごろの新聞連載を元にしているため、既になくなっている店も多いだろう(例えば、直近では大規模な再開発が始まった立石はその代表格)。その点で既に消えつつある飲み屋を懐古的に振り返られる、という意味合いも既に本書には生まれている。 -
ちょっと居酒屋で遭遇したらちょっと面倒くさそうな人だなぁ。