幸福はただ私の部屋の中だけに (ちくま文庫)

著者 :
制作 : 早川 茉莉 
  • 筑摩書房
3.51
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本棚登録 : 540
感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480434388

感想・レビュー・書評

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  • やっぱり好きだなぁと満足した。うっとりするだけではなく、今回は感動した。
    特に最後の不幸からは光る宝石を受け取って帰って貰えばいい、というようなニュアンスの文章。森茉莉はそうやって、いろんなことを経験してきたのか、となんだかしみじみ。
    綺麗な空、素敵な景色を見つけて散歩する。美しい文章に触れる。それらを素直に感動できるこころを持ちなさい、との文章に大いに励まされる。これは文章技術を磨くことについて書いているのだけれど、文章技術だけでなく、生き方について書かれているなぁと思う。きれいなもの、美しいものに感動できる心。そういうことって、今の慌ただしい、時短や効率重視の社会では吹き飛ばされそうと感じてしまっていたけれど、それでいいのだと応援されたような気持ちになった。
    しばらく森茉莉に浸りたい。

  • 森茉莉氏のエッセイ集。
    早川茉莉氏の編で、第3弾。
    “おいしいもの”“お洒落”…というテーマが続き、この本は“暮らしと生き方”がテーマか。
    …という風にカテゴリー分けしてしまうと、まことにありきたりで乾いていて、茉莉さんらしくないので、申し訳ないと思う。

    1冊目、2冊目は、言ってみれば、森茉莉さんの頭から出ている雲形のふきだしのようなもので、その中に美しい回想や幻想が詰まって、あとからあとから出てきていた感じだった。
    3冊目は、雲のように消えてしまう“想い”ではなく、実体を持った森茉莉、血肉があって息をしている森茉莉自身、という感じがする。


    『生まれつき楽しむことが上手にできている』
    『考えに枠(わく)がないから心が自由(人からは変わっているように見えるらしい)』
    という楽しい文章で始まっている。

    耳を傾けたい生き方もたくさん書かれている。
    身の回りに置いたこまごましたものの描写もある。
    人からはゴミ屋敷のように見えるかも知れないが、自分の美意識で選んだものばかり。
    好きなもの以外は身の回りに置きたくない(とても共感する)

    何もかも乾いている現代社会の息のしづらさ。
    部屋に帰って好きなものに囲まれて心を癒され、質のいい映画や本で、乾いた頭(脳内)にうるおいを与える。

    そして、書くことによって命を与えられたかのような喜びと、書くことのつらさ、良い物を書こうとする生みの苦しみも、切々と綴られている。
    一人でたくさんの人生を生きたような、濃い一生だったのだろう。

  • 子どもの頃友人宅に遊びに行った際、六角形の綺麗なアルミ箱にぎっしり詰まった宝石のように美しいチョコレートを振る舞われたが、そのとき美に触れた原風景を思い起こさせてくれるかのような、森茉莉の豪奢な美文で綴られた随筆集。本のタイトルが秘めやかな美しさを感じて好き。森茉莉は三島とも親交が深かったが、三島とはまた違った和洋折衷の美の探究者である。ボワイエやグレコのシャンソンを流しながら気怠い午後に読み返したい一冊です。

  • このシリーズのエッセイ集を最初旅行中に読んで、いい感じだったので、2冊目もこの3冊目も旅行に持って行った。ぜひ4冊目、5冊目も作っていただきたい。

    森茉莉さんのような、美意識をしっかり持ち、それに基づき、気高く1人で暮らすおばあさんに憧れる。老後、お金があったほうがいいけど、賑やかな暮らしもいいけど、もしお金がなくても、孤独であっても、森茉莉さんのように暮らしたい。育ちも才能も違うから無理かもしれないけど。

  • 文章の雰囲気は嫌いじゃないんだけど、ベッドのうえに飲食物まで置いてるとか部屋のあちこちに大量の硝子瓶とか、描写はかなり受け入れがたい…。

  • ・森茉莉の素敵な感性に触れて、心が楽しく穏やかになるエッセイ集。
    ・部屋に置いてあるガラクタを列挙するだけのエッセイがなんとまあ素敵ですこと。
    ・現代とは文章のリズム感がだいぶ違うけれど、なぜか読みやすい。
    ・ものすごく長い一文(全10行!)に自分でツッコミ入れてて笑った。
    ・西洋かぶれした日本社会に対してけっこう強烈な毒を吐いてて笑った。愉快でかっこいいお婆ちゃんだ。

  • 森茉莉さんにずっと憧れている。

  • 夢の日、と下町に暮らした思い出話が好き。
    森茉莉は3冊目ですが、こんなに美しい文章を書ける人なのですね。
    現代、といっても60年代〜80年代の若者の批判も意外と好きでした。
    なんとなくこの人の影響で、わたしは小さないちごしか食べない。野いちごのような本当に小さいものはスーパーに並ばないけれど、できるだけ小さなもの。
    あと、リプトンは青缶で。明治屋で買えます。
    銀座も普段着で行く。
    日本人は流行に従順すぎる(60年代〜80年代をもってしても!)のも納得なので、日本の服屋で買うのをやめよう、と思いました。いまだに大好きなアメリカのブランドにする。
    くらいかなあ。
    ヨーロッパに行ったことはないので、欧米礼讃の気持ちはわからないけど、いつか惚れ惚れしてしまう日が来るかもですね。

  • 私の大好きなジャンルの話ではあるんだけど、筆者の文体とスタンス(書く姿勢というか生きる姿勢というのか)が、残念ながら私にはまったく合わなかった。少なくとも、今の私とは合わなかった。

    初めて読む著者の本は自分にとって合う合わないがあるから、1冊目は必ず図書館で借りて相性を見るようにしている。この本も図書館で借りたかったんだけど、旅先だったので&表紙のデザインも好きだし面白そうだったから、1冊目だったのにもかかわらず購入。そして失敗・・・

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著者プロフィール

1903~87年、東京生まれ。森鴎外の長女。1957年、父への憧憬を繊細な文体で描いた『父の帽子』で日本エッセイストクラブ賞受賞。著書に『恋人たちの森』(田村俊子賞)、『甘い蜜の部屋』(泉鏡花賞)等。

「2018年 『ほろ酔い天国 ごきげん文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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