胡椒息子 (ちくま文庫 し 39-8)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480434579

感想・レビュー・書評

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  • 「信子」が女版「坊っちゃん」なら、本作は少年期版「坊っちゃん」と言える。婆やとの絆を描く設定が非常に酷似していて、ただ、読むとちゃんと獅子文六らしさ全開の展開。
    漱石好き、中でも坊っちゃん好き、なおかつ獅子文六好き、の私には堪らない作品だった。

  • 積ん読だったのをやっと読む。
    獅子文六を読んだのははじめて。久生十蘭などと同時代の作家なんだな。名前しか知らなかったけど、明るくて読みやすくて、シニカルなユーモアがあって良い作品だった。
    昭和初期の文章が面白くて好きだ。

    ストーリーは単純明快。
    お民婆やとの関係に泣けた。坊ちゃんとキヨみたい。


    息子を愛せない(義理の)母親、という作中の話にガンガン反応してしまった。余談。。。

    感化院に行くまでが長い。もうちょっとスピーディな展開にしてもいいかも。

  • 他の獅子文六作品ほどは楽しめず。あまり風刺が効いているとも思えず、登場人物達も半端な感じ。悪戯者の弟に手を焼いて疎ましく思うのは分かるにしても、兄姉はただの意地悪な性格の悪い人間にしか見えず、母親も妾腹の子供を育ててきたのは立派だけど愛情があるという訳でもなく、父親は子供に対する愛情はあるようだけど、そもそもが自分の行いに端を発しているのに真摯に省みる様子もない。その辺は戦前の家父長制や社会意識などによるものなのだろうか。彼らの顛末もうやむやな感じ。主人公と婆やの絆をこそ単純に楽しむべきか。

  • 「悦ちゃん」の少年版。何があってもくじけない12才の昌二郎君。登場人物の中でどうしても感情移入してしまったのは婆やのお民さんでした。

  • テンポが良くて、キャラクターが一人一人生き生きしていて、さくっと読めた。獅子文六は女心を書かせても、親心を書かせても、子ども心を書かせても、どれもこれもしみる〜。読後はほっこり爽やか。

  • 獅子文六さんはさあ、なぜこうも心を揺さぶる小説を書くのかなあ。胡椒息子こと昌二郎、大金持ちの次男だが彼の出生には秘密が。それが公になりこれでもかってほど兄姉母に疎まれる。血のつながった父は顧みてくれない。味方は幼い頃から世話してくれた婆やだけ。彼のまっすぐな性格も加わって、理不尽なことばかり襲いかかる。最終的には感化院へいくはめに。でも彼は人を憎まず、むしろ愛して。本当にいい子だ!健気すぎて。お民婆じゃなくてもほっておけないよ。どん底からのハッピーエンド、獅子さんの手法。心から笑顔になれるエンディング。

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著者プロフィール

1893─1969年。横浜生まれ。小説家・劇作家・演出家。本名・岩田豊雄。慶應義塾大学文科予科中退。フランスで演劇理論を学び日本の演劇振興に尽力、岸田國士、久保田万太郎らと文学座を結成した。一方、庶民生活の日常をとらえウィットとユーモアに富んだ小説は人気を博し、昭和を代表する作家となる。『コーヒーと恋愛』『てんやわんや』『娘と私』『七時間半』『悦ちゃん』『自由学校』(以上、ちくま文庫)。『娘と私』はNHK連続テレビ小説の1作目となった。『ちんちん電車』『食味歳時記』などエッセイも多く残した。日本芸術院賞受賞、文化勲章受章。


「2017年 『バナナ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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