- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480435378
作品紹介・あらすじ
飛田、釜ヶ崎……、大阪のどん底で強かに生きる男女の哀切を直木賞作家が濃密に描く。『飛田ホテル』に続く西成シリーズ復刊第二弾。(花房観音)
感想・レビュー・書評
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一昨年から、なぜか突然ちくま文庫で復刊され始めた、「西成モノ」と総称される黒岩重吾の初期短編群――。
この『西成山王ホテル』と『飛田ホテル』、そして今年8月に刊行された『飛田残月』と、現時点までに3冊が出ている。
黒岩重吾といえば、いまでは古代史に材を取った一連の歴史小説で知られているだろう。
だが、私にとっては「西成モノ」のほうが印象が強い。大阪西成区の釜ヶ崎(あいりん地区)や飛田(とびた)などの、社会の底辺で生きる人々を描いた、暗く哀切な作品群である。
黒岩自身、若き日に西成区のドヤ街ですさんだ暮らしをし、飛田の娼婦たちとも顔なじみになった時期があるという。
黒岩に直木賞をもたらした出世作『背徳のメス』も、社会派推理小説ではあるが釜ヶ崎を舞台にしており、「西成モノ」の一つでもあった。
1960年代に書かれた、昭和の香り濃厚な「西成モノ」の、いまさらの復刊。日本がどんどん貧しくなっていく「いま」とシンクロするものが、それらの作品にはあるのだろう。
収録作5編中、じつに4編までは最後に主人公が悲劇的な死を遂げる。なんとも陰惨な短編集である。
いま読むと古色蒼然とした部分もあるが、暗さと哀切さがしみじみとよい。
私がとくに心魅かれたのは、「朝のない夜」。売春防止法施行(1957年)前後の飛田遊廓を舞台にした一編だ。
主人公の、ちょっと頭が弱いがイノセントな娼婦・きん子は、フェリー二の名作『道』のジェルソミーナを彷彿とさせる(たぶん作者も『道』を意識している)。しみじみと哀切な佳編である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
大阪西成を舞台にした短編小説群。
どの話に出てくる登場人物はみな孤独な感じ。そして「つながりを求めない」と言いながら、互いを求め合って、つながろうとして、何かを悟り、刹那的な末路となっていく話が多い。
もう何十年も前の世界であるはずなのに、都会の片隅で生きる人たちの話は今でもありそうな感じがした。「個」=「孤」である存在といえる。「孤」であるから惹かれ合うのかもしれない。自分がなぜ「孤」であるか、人一倍わかっているからこそ「個」である、そういう人たちの物語であるとも考えられる。
「崖の花」と「朝のない夜」が特に印象に残った。 -
飛田釜ヶ崎界隈が好きだ。
記録用→主人公の8割がたが最後に死ぬやつ。 -
摂南大学図書館OPACへ⇒
https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50115640 -
昭和の貧民街遊郭が舞台の短編集。社会のどん底に生きる人々の描写に引き込まれた。
黒岩重吾は会社の先輩のススメ。2作の「ホテル」シリーズを読んでから「西成海道ホテル」を読むよう言われている。よくわからないけどその順序が大切なようなので言われた通りしようと思う。