はたらかないで、たらふく食べたい 増補版 ――「生の負債」からの解放宣言 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480437204

作品紹介・あらすじ

カネ、カネ、カネの世の中で、ムダで結構。無用で上等。爆笑しながら解放される痛快社会エッセイ。文庫化にあたり50頁分増補。解説 早助よう子

感想・レビュー・書評

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  • アナキズムはよく理解できていないけど、著者の語りは尖っているのかいないのか、とにかく緩くて面白い。

    また、先人の思想や生き方の紹介が、とても分かりやすく思わず、表記してある文献を紐解きたくなる。

    はたらかないで、たらふくたべたい
    はい!同感

  • 植本さんとポッドキャストでお話させていただいたときにレコメンドしてもらったので読んだ。タイトルにあるとおり、いかにはたらかないか、そもそもお前ら資本主義社会、消費社会に迎合しすぎではないか?繰り返し説かれることで自分の当たり前が音をたてて崩れていくような感覚で新鮮な読書体験だった。

     冒頭のアリとキリギリスの反転させた話が本著を象徴していて、(キリギリスがアリを食べてしまう…!)「働かざる者食うべからず」という価値観をぐらぐら揺さぶってくる。グローバリズムの浸透で自己責任論がますます幅を聞かせる世の中で「自分の生を負債化」させて好きでもない労働に従事する人生に意味があるのか?と聞かれると確かに…と思うことがいくらかあった。著者自身は実家暮らしで非常勤講師、親の年金で暮らしていることを宣言していて「結局親にパラサイトしてるだけ」というクソリプが飛んでくることなんてつゆ知らず、ひたすら働かないで生きていくための思考を展開していくのがオモシロかった。以下興味深かったところの引用。

    "犠牲と交換のロジックがうまれたからこそ、自分の行為に見返りをもとめることが一般化してしまったのである。"

    "人間は物ごとを区別して。そこに善悪優劣の価値判断をはさみこんでいる。そうやって、不変の秩序をつくりだし、ほんらい渾沌とした世界を、有限で管理可能なものにしたてあげているのである。"

     一番驚いたのは歴史の紹介。自分の主張とからめながら過去の偉人たちについて比較的ファニーに紹介してくれるのだけど、めちゃくちゃ分かりやすかった。こんなに徳川家の話がすっと頭に入ってきたのは初めてかもしれない。(自分が歳をとって歴史に対して関心が増しているのも影響しているかもしれない)引用もオモシロいのだけど、ひらがなの多用と詩のようなラインが織り交ぜられた独特のグルーヴを持つ文体も読んでいて楽しかった。本著でも引用されていた伊藤野枝の自伝がかなりオモシロそうなので次はそれを読みたい。

  • 本屋の店主さんがオススメしていたので読みました。
    普段読まない主張や文体で新鮮。
    好き嫌いが分かれそう。
    おもしろいリズムだと感じましたが、流し読みしてしまう。
    ただ、今の社会に疑問を持つ、自分を持つ、という視点を思い出させてくれて良かった。

  •  "はたらかないで、たらふく食べたい''
     そうできたらなあと思いつつ、でも仕事をしないとお金が稼げないしということで、何とか仕事に就いて働く、それが普通の生活だと思って生きている人が多いのではないだろうか。

     働かないと生きていけない、それは本当なのか、もっと違う生き方もあるのではないか。アナキズムや労働運動に関する研究や実体験をバックにしつつ、著者は饒舌にアジる。始めのうちは文章が露悪的に感じられたが、読み進めていくと、段々その文体に快感を覚えるようになってくる。

     語りの面白さに加え著者の生活態度の可笑しさもあり、笑ってしまうところが多いが、一編一編の内容は現代社会の本質を鋭く突いており、とても考えさせられる。

  • 栗原康のことはまったく知らず、本屋で表紙を見てなんとなしに買ってみたのだが、これがびっくりするくらいおもしろかった。

    アナキズム研究が専門で大学の非常勤講師をやっているとのことだが、文体はまるで町田康のような、ふざけているのか真面目なのかわからない、いや絶対にふざけているのだけど、ちょうどいい塩梅のふざけっぷりで、良い。文体だけでなく、自らの情けなさと滑稽さを魅力的に書けるあたりも似ている。

    文体や語り口もいいのだが、そもそも主張がわたしの好きなものだったので、おもしろく読めたのだと思う。ちょっと過激な主張ではあるけど、賛同する人はけっこういるんじゃないだろうか。
    主張と文体が、合ってる。

  • 高等遊民たるアナキズム研究者によるエッセイ。「はたらかないで、たらふく食べたい」すばらしい殺し文句。

    移動中に読みはじめたのだけれど、仕事の合間に読む本ではないと思い、残りは部屋で布団にゴロゴロしながらダラーっと読んだ。ちゃんと読んだら負け!と思っている時点ですでに負けている。美味しいものを自分のお金で好きなだけ食べるために、本を買うのを我慢しないために、あくせく働いている私は、まったくこの域に達していない。

    あほらしいあほらしいと思いながら、引用されている本が気になって検索してしまう。思想エッセイは面白みにかけるものが多いのだけれど、この独特な文体で押しきってしまう。この人、なんやかやでモテそう。

  • めちゃくちゃぐでーっとしている。

  • 「自由に生きる」の私なりの解釈が言語化されているようで、読んでいて気持ちよかった。
    特に文庫版あとがきの最後のページ(266ページ)。これに尽きる。
    文体も自由さが見てとれた。

  • ニートのアナキストがいかに労働が悪かをあの手この手で示そうとするお話。
    やや説得力に欠ける部分もあるが、これまでにあまり触れた事のない視点で、考えさせられる部分は多かった。資本主義貨幣経済の中で生きているうちに、いつしか都合の良い道徳観にまみれて、人ととしての豊かさとはなんたるかを忘れてしまっていたのかもしれない。
    無償の施し、固定観念をぶっ壊して考える力の尊さを学んだ。

  • 気になっていた伊藤野枝の本もよんでみようと思う。あとさつまいも植えます。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。東北芸術工科大学非常勤講師。専門はアナキズム研究。著書に『大杉栄伝 ―― 永遠のアナキズム』(夜光社)、『はたらかないで、たらふく食べたい ――「生の負債」からの解放宣言』(タバブックス)、『村に火をつけ、白痴になれ ―― 伊藤野枝伝』(岩波書店)、『現代暴力論 ――「あばれる力」を取り戻す』(角川新書)、『死してなお踊れ ――一遍上人伝』(河出書房新社)、『菊とギロチン ―― やるならいましかねえ、いつだっていましかねえ』(タバブックス)、『何ものにも縛られないための政治学 ―― 権力の脱構成』(KADOKAWA)など。

「2018年 『狂い咲け、フリ-ダム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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