- Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480437778
作品紹介・あらすじ
夭折の芥川賞作家・野呂邦暢が密かに撮りためた古本屋写真が存在する。2015年に書籍化された際、話題をさらった写真集が再編集で奇跡の文庫化。
感想・レビュー・書評
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2015年に盛林堂書房から刊行された元版に、新たな写真を加え、野呂のエッセイ、編者の対談を増補した一冊。
野呂邦暢という作家の名前を知ったのは、2010年に『夕暮の緑の光』がみすず書房から刊行されたときで、それ以降も愛読者というまでには至らなかった。『愛についてのデッサン』も、野呂の書いたものだからというよりは、古本屋を舞台に、古本屋主人を主要登場人物にしている作品だということに興味を持ったからである。
そこで本書。1976年頃の東京の古本屋を写した写真。当時は彼の地元の諫早から上京するのは大変だった時代。スマホで何百、何千枚でも手軽に撮れる現代とは違って、フィルムカメラで一所懸命に撮った感が窺われる。ピンボケしたものや見切れたものもあり、じっくりファインダーを覗いて写せたものではないことが良く分かる。
それでも何とか、古本屋の景色を、写真という何度でも見直すことのできる形に残しておきたかったのだろうか。
45年という月日が経ち、個々人的にはともかく、世の中一般としては書物に対する考え方はだいぶ変わった。そして東京という場所では、建物や景観は変化が激しい。それなのに、店舗の出入りは多少あれども、神保町の古書街のお店は現在も多くが健在である。
『昔日の客』や野呂自身のエッセイなどから、野呂が古本屋巡りを愛していたことは知っていたが、本書の写真を見ていると、均一棚から宝物を探す野呂の姿が浮かんでくる。
編者の一人小山力也氏の、野呂の写した足跡を辿る45年の時間を往還する一文は、とても参考になる。
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恥ずかしながら芥川賞作家である野呂邦暢という作家を全く知らなかったが、その野呂邦暢が70年代に撮影した主に東京の古本屋の写真集。素人だから写真自体は決して巧くない。ピントの合ってない写真も多い。それが味かというなんとも微妙。
東京に住んでいる人間なら懐かしいという感じなのかもしれないが、地方在住の人間からすると時代を感じさせる写真だなぁで終わってしまうのが悲しいところ。 -
写真だけでなく、エッセイも素晴らしい
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「理想をいえば、自分が一度読んで感銘をうけた、本は手ばなすべきではない。」 確かに理想。
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昔見た神保町の古本屋街
新刊書店もいいけど
それとは違う古本屋の面白さ -
1970年代後半に、上京しては駆け足で都内の古書店を横断しつつ隠し撮りのように撮られた写真が集められています。亡くなった後に撮られたと思われる、祭壇とともに写る自宅の書棚には、第二次世界大戦についての書籍が目立ちます。切実に活字を希求した世代の想いが、ピンぼけの写真の向こうから伝わってきます。
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諫早出身の芥川賞作家が、都内の古本屋を写した100枚以上の写真をもとに、古本屋ラバーの野呂邦暢とその仲間が語るエッセイ集と対談。
古本屋への愛が満ちている。昭和40~50年代のかおり。 -
1980年に42歳で急逝した芥川賞作家野呂邦暢の撮った1970年代の東京などの古書店写真がメイン。それに編者の一人「古ツア」小山力也氏による現状との比較、野呂の古本エッセイ9編、さらに編者岡崎武志氏と小山氏の対談で構成されている。写真は私の大学生~卒業直後ぐらいのものなのでなつかしい。特に神保町は親戚の本屋もあり時々行っていたので確かにこんなだったなあと思う。(いまでも近いかな)
野呂の文章もその時代を切り取った感があるし、編者二人の対談を含めた文章も古本屋とそれを愛した野呂への愛情が感じられる。 -
ため息をつきながら読む。そこにあるのは、自分の記憶にある古書店の姿に似ている。そこにある本や、値札をじっくりと眺める。きっと掘り出し物があるだろうから。