青ひげの卵 (ちくま文庫 あ-65-1)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480438430

作品紹介・あらすじ

平穏で平凡で平坦な日常生活。その下で静かに息づき、崩れる"何か"──『侍女の物語』『誓願』を放った世界的作家が描く6つの短編。解説 大串尚代

感想・レビュー・書評

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  • 祝文庫化!

    <発表2> マーガレット・アトウッドのゴシックの視点 (中島 恵子会員)
    Newsletter 68 - 日本カナダ文学会公式ブログ(17/10/01)
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    筑摩書房 青ひげの卵 /
    https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480831378/

    青ひげの卵 マーガレット・アトウッド(著/文) - 筑摩書房 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784480438430

  • 1993年の単行本の文庫化だけれどカナダでの出版は1983年だから40年前の短編集。しかし古さは全く感じず、むしろとても現代的な印象を受けた。女性にまつわる普遍的な課題や問題が含まれていたせいかもしれない。

    どの女性も自分の人生、日常を淡々としかし懸命に生きているだけだけれど、そこには実は綻びが生じており、彼女らはそれを修復する努力をしているが、それが叶う場合も叶わず破綻する場合もある。

    表題作の主人公は、とても賢く要領も良く仕事も出来、心臓外科医の夫がいる。夫はそこそこイケメンな上に仕事柄とても女性モテるが、お人よしで単純な人物、主人公は夫を溺愛しているけれど彼を愚鈍だと思っている。しかしホームパーティの日、夫と親友のある場面を目撃し…。その瞬間世界がくるりと反転する感じが怖かった。主人公は夫を裏表のない善良な人間だと信じるあまり見下しているふしがあったが、実際はお人よしで何も気づいていないのは主人公のほうで、夫と親友は彼女をあざ笑っていたのかもしれない。小さな疑惑の卵から孵化するものはなんだろう。

    浮気を繰り返す恋人の可愛がっている猫を誘拐してゴミ箱に捨てる女性の「ぶさ猫」は、そんなことをしたくないのにそこまで追い詰められてしまう彼女が悲しかった。信頼していた精神科医がある日突然死んでしまう「罪食い人」、病んだ女性の話をただただ聞き続ける精神科医はある意味「罪食い人」だったのかもしれない。

    「緋色のトキ」は、トキを見に出かけた舟でのハプニングのおかげで主人公は夫とのギスギスしていた関係を修復できたので唯一ハッピーエンドかも。「サンライズ」は、常に自殺の手段を常備している主人公の気持ちが今の自分にはとても共感できた。

    ※収録
    ルゥルゥ、もしくは<言語>の家庭生活/ぶさ猫/青ひげの卵/罪食い人/緋色のトキ/サンライズ

  • 装画とミステリアスなタイトルに惹かれて購入。著者のことも、話の内容も全く知らなかったが、だからこそ新鮮に楽しんで読めたのかもしれない。
    『ぶさ猫』と『サンライズ』が特に好きだった。

  • 日常にひっそりと隠れていたり、当たり前な風情でそこにあったりすることやもの
    大っぴらには詳らかにしないけど、さりげなくまき散らす
    わたしだったらギャーギャー言っちゃいそうだけど
    そのまき散らす感じが、ちょうどいい
    まだ諦めてない(!)愛のあるちょっぴり淋し気なまなざしに、きゅんとする

  • なんか別世界に誘われてるかのような。

  • 「人を愛するのは荷が重すぎる。」

    なんだろう、挨拶くらいは交わすけどきちんと話したことのなかったひと(まったく違うタイプだとおもっていたから)、賑やかでちょっぴりせわしなくて自信たっぷりで(彼女の鎧)、核心だけははぐらかす癖、けれど好感をもてないわけではない(表現方法の違いってだけ)、そんなひとと、ずっと話していた一日の終わりのようなあとあじ。人生経験とそれ相応の疲労と感慨。
    ひとつだけたしかなことは、防水スプレーで猫は死にうる、ということ(苦しい記憶)。あの物語の、衝撃とどうしようのない悲しみで、わたしもずぶ濡れ。
    そして、互いに持ち合わせていないそれぞれの心許なさを見せ合って、共犯の笑みを浮かべる。



    「つき合い始めの頃は、自分たちが日々勤しんでいるのは対話(dialogue)なのだと思っていた。遅かれ早かれ、意見の一致に到達する。そんな二者間の意見の調整、折衝のプロセスに従事しているのだと。ところが、いま考えてみると、あれはけっして対話ではなかった。あれは互いを貶め合う言葉のゲームにすぎなかった。」

    「「人生なんて、どう見たって糞の山積みだよ」。分かりきったことのように、彼は言った。「無人島か何かだと考えてみると良い。そこから逃げ出す方法はないのだから、腹をくくって、そいつとどうやって取っ組んでいくか、それだけ考えることだね」。」

    「もちろんチップは忘れない。彼女はウェートレスにたいしては思いやりがある。彼女自身、二度とこの仕事はしたくないと思うからだ。」


  • 男への隷属によってしかアイデンティティを形作れない女たちの失敗。こうなりたくはないよね、という、自分の中のミソジニーをまざまざと感じさせられる。

  • 前半の3作品が特に好きだった。
    人間関係を通じた内省。

    92
    僕の人生を君と共有したい。いつだったか、彼は彼女にそう言った。そんなことは他の誰にも言ったことはない。彼はそうも言った。あのとき彼女はどんなにとろけるような気持ちがしたことだろう。どれほどこの言葉を玩味したことだろう。でも考えてみれば、彼はけっして、君の人生を僕と共有してほしいとは言わなかった。現実には、二つの言葉は似ているようでまるで異なる事態を指していた。

  • マーガレット・アトウッドとアリス・マンローをいつもごっちゃにしてしまう…。
    男を愛するとき、男とかかわるとき、女の心にポッカリ空く穴。埋められない溝。痛み。
    まあ、最近はそんな気持ちも体験してないので、人ごととして平和に読めるわけだがw

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