羊の怒る時 ――関東大震災の三日間 (ちくま文庫 え-21-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 140
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480439048

作品紹介・あらすじ

激動する大地、飛び交うデマ、虐殺される朝鮮人……関東大震災を自らの体験をもとに描いた記録文学の金字塔。解説 天児直美・石牟礼道子・西崎雅夫

感想・レビュー・書評

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  • 江馬修『羊の怒る時 関東大震災の三日間』ちくま文庫。

    今年2023年は関東大震災から100年目を迎える。1925年に刊行された100年前の関東大震災を追体験する記録文学の金字塔が待望の文庫化。

    巻末には、2編の解説とエッセイを収録。

    『解説──「あとがき」にかえて』天児照月
    『解説 江馬修『羊の怒る時』の意味』西崎雅夫
    『存在の根底を照らす月明り』石牟礼道子

    関東大震災の発生から三日間とその後の混乱の様子が描かれているが、余りにもリアリティのある描写に東日本大震災の時を思い出した。しかし、本作は震災と描写だけには留まらず、流言蜚語がもたらした悲劇の様子をも克明に描いている。

    過酷な状況の中で、露わになる人間の本性。人びとの不安が、さらなる不安を生み出すという異常な人間の心理。関東大震災では10万人以上が命を落としたようだが、虐殺された朝鮮人は7千人近くだったと言う。何とも残酷で痛ましい史実だろう。


    1923年9月1日11時58分、関東一体が大きな揺れに襲われ、代々木初台に居を構えていた作家の江馬修も家族と共に被災する。マグニチュード7.9と言われる大地震、関東大震災である。

    多くの住宅は倒壊し、東京は火の海に包まれる。生き残った住人が不安に怯える中、再び激震が襲うという貼り紙を皮切りに、300人の朝鮮人が暴徒化し、日本人を襲おうとしている、朝鮮人が火を放っている、朝鮮人が井戸に毒を投げ込んでいるなどの流言蜚語が飛び交い、多くの朝鮮人が虐殺される。


    本日、夏の全国高校野球大会の決勝戦が行われ、連覇を賭けて臨んだ仙台育英を破り、圧倒的な声援を受けて、慶応が107年ぶりに優勝した。107年前というと関東大震災が起きる前ということなのかと驚くと共に、長い歴史を感じた。

    本体価格840円
    ★★★★★

  • 『羊の怒る時』|感想・レビュー - 読書メーター
    https://bookmeter.com/books/6095543

    影書房
    http://www.kageshobo.com/main/books/hitsujinoikarutoki.html

    筑摩書房 羊の怒る時 ─関東大震災の三日間 / 江馬 修 著
    https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480439048/

  • こんなに心に響いて読み応えがある本は久しぶりだった。
    関東大震災のときの、地震の様子、朝鮮人虐殺の日本人側の群衆の動きが細やかに描かれている。
    最初の方で、日本人の赤ちゃんを朝鮮の学生たちが救ってくれる。親は、ものすごく感謝するけれど、この後、朝鮮人の虐殺が始まっていく。
    集団パニックはこういうものなんだろうと思う。
    でも、冷静に考えられる人もいるけど、その人たちの力はあまりに弱い。

  • 関東大震災から100年目なので読んだ。

  • 読中・読後、辛くて堪らなくなってしまった。だが、「過去を学ばぬものは未来に対しても目を閉ざしていることになる」から、心身のあたうかぎり、折に触れ読み返したいと思う。ーー本書は、関東大震災(1923.9.1)とその後の2日間を、直に目の当たりにした作家が、小説のかたちで表したものだ。その眼は、『どこから出たかもわからない』デマゴギーから、日本庶民が朝鮮の無辜の人びとをどう扱ったかを、震災の様子ともども明確にとどめている。いちばんのおそれは、石牟礼道子さんが末尾の解説で語っているが、『五十年百年経って、われわれが同じことをしない保証がない』ことだと思う。ーーきょうは、あとは茨木のり子の詩「あの人の棲む国」を読んでやすむ。

  • 関東大震災に触れるのは、吉村昭さんの小説、NHKのドキュメント、そしてこちらの話と3度目です。情報がないことによる恐ろしさを感じました、また情報が多すぎる現在の問題も考えさせられました。

  • 関東大震災から100年かぁ…と手に取ったものの、重い重い。
    読みながら少し休み、また読み、休み、と9月1日までには読み終われなかった。
    史実として、虐殺が行われたことを不勉強で全く知らなかった。随分ダメージを受けている。

  • 渋谷区初台に住む作家江馬修が関東大震災に遭遇した3日間を中心に書かれたルポのような小説である。当然渋谷区初台も大きく揺れたわけであるが家が倒壊したり火災になったわけではなく、高台にある彼の住まいから明治神宮の方向が3日間赤く燃え続けていたのが見えていた。そして震災初日の夕方から朝鮮人が暴徒化しているという噂が流れ始め、自警団が組織されるようになっていく。そんな様子に違和感と恐怖を感じながらも仲の良い朝鮮人を救えない焦燥感が描かれている。

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著者プロフィール

江馬 修(えま・しゅう):1889年、岐阜県高山市生まれ。田山花袋の書生や代用教員のかたわら、創作に励む。1916年に刊行した『受難者』で人気作家となり、1926年、『追放』を執筆後に渡欧。大作『山の民』は1938年に発売されて以来、改作を重ねた(2014年に春秋社により復刊)。1975年没。他の著書に、『氷の河』『本郷村善九郎』『飛騨百姓騒動記』『延安賛歌』などがある。

「2023年 『羊の怒る時 関東大震災の三日間』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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