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- Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480439178
作品紹介・あらすじ
静かさとなつかしさに満ちた市井に生きる人々の、つつましい人生に心を寄せながら、慣れない手つきで愛情深く綴った代表的作品集。
感想・レビュー・書評
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太宰に師事したということだけは知っていたが、その作品は初めて読む。
本書は、第二創作集『小さな町』と第四創作集『日々の麺麭』を合本にしたものとのこと。
『小さな町』の前半には、著者が戦時中に新聞配達員として働いていた下谷竜泉寺町での生活を描いた作品が収録されている。「小さな町」の初めの方に「昭和二十年の三月十日に空襲に遭ってこの町も無くなってしまったが、私の追憶の世界では、その町の姿が、その道筋や町並みがそこに住んでいた人たちの俤と共に、曾て在ったようにいまも彷彿として残っている」とある。丁寧に一軒一軒、一人一人を描く著者の文章を読みながら、読者は著者の追憶の世界に引き込まれていく。
もちろん新聞配達の仕事柄、人の出入りは激しいし、やくざな生活を送っている人もいる。著者自身、それほど向上心のあるような生活をしている訳ではない。ただ、そんな人たちへの著者の眼差しは、適度の距離感を保ちながらのあたたかさを感じる。
それは、戦後の窮乏生活の時代に北海道の炭鉱勤務をしたときを描いた作品からも強く窺われる。
『小さな町』の各編が私小説的要素が強く感じられるのに対して『日々の麺麭』に収められた作品は、より普通の小説のようだ。世間的には決して幸福とは思われない市井の人々のささやかな生活、その喜怒哀楽を淡々と描いているところがなかなかいい。
最後は『風貌』。太宰の一面を垣間見ることができて、なかなか良かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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