絶滅危惧個人商店 (ちくま文庫 い-52-4)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 95
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480439369

作品紹介・あらすじ

あなたの町にもきっとある! 素晴らしき個人商店を訪ねて聞いた店主たちのヒストリー。駄菓子屋、銭湯など18軒、いまだ健在なり。解説 北條一浩

感想・レビュー・書評

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  • 井上理津子『絶滅危惧個人商店』ちくま文庫。

    東京を中心に今や絶滅危惧種となりつつある趣きのある個人商店を実際に訪ね、その店の特色や生い立ちなどを店主にヒアリングしたルポルタージュ。

    東京の下町では、まだまだ個人商店は健在であるが、たまにオフィス街の片隅に味のある古い個人商店が残っていると驚く。しかし、ここ数年の新型コロナウイルス感染禍で個人商店も打撃を受け、絶滅の危機にあるのかも知れない。


    地方では個人商店は確実に消えつつある。現在、自分はまあまあの田舎に暮らしているが、半径2キロ圏内に個人商店が1軒しか無い。しかも、やっているのか、やっていないのか解らない商店で、利用したことが無い。半径2キロ以内には、かつては商店だったんだろうなという建物の痕跡が数軒ある。

    先日、少し離れた所にミニスーパーともコンビニともつかぬ個人商店を発見した。『何でも揃う』という看板は惹かれて、店の中に入ると確かに食料品から生活雑貨、衣類なども並んでいた。その片隅に昭和初期には当たり前だった金色のアルミの弁当箱を発見した。店のおばさんに確認すると大昔に仕入れ、売れ残った最後の1つとのこと。値札通りの1,000円で売ってくれた。

    地方では、こういう面白い味のある個人商店がどんどん消えている。狸や狐の出るような郊外に出店する大型ショッピングセンターや大型チェーン店に押され、個人経営の食品店、八百屋、魚屋、文房具屋、本屋、衣料品店は消える一方だ。かつては栄えた駅前もシャッター通り商店街と化し、開いているのは飲み屋くらいだ。

    本作でも紹介されている個人経営の本屋も古本屋も絶滅に近い。自分の住んでいる所では、辛うじて1軒だけ個人経営の本屋が残っている。普段、本を買いに行くのは隣町の地元資本の大型書店であるが、たまに個人経営の小さな本屋を覗くのも面白い。個人経営の本屋は特色を出そうと地元在住作家や地元関連の書籍を並べたり、努力している。古本屋に至っては全滅である。隣町の全国チェーンの古本屋しか無いのだ。神田の古本屋街などは本当に羨ましい。

    少子高齢化の加速とコンビニや大型ショッピングセンター、大型全国チェーンの台頭により個人商店はますます絶滅の危機に瀕している。特長のある良い個人商店には是非とも生き残って欲しいものだ。

    本体価格840円
    ★★★★★

    • kaonioさん
      これは読みたいと思う。
      これは読みたいと思う。
      2024/02/26
    • ことぶきジローさん
      kaonioさん。是非に読んでみて下さい。
      kaonioさん。是非に読んでみて下さい。
      2024/02/26
  •  最近は個人商店って、ほとんど行くことがない。まあ床屋さんとクリーニング屋さんくらいか。大型スーパー、コンビニ、ドラッグストア、各種チェーン店ばかりの利用だ。うちの町も、昔からの商店街はシャッター通りと化してる。

     本書で紹介されている商店は、いづれも創業から結構な年数が経っている。しかし跡を継いでくれる人がいないところも多いようだ。「家業」という言葉には代々の職業という意味があるが、健在なのは政治家くらいか。いや「政治屋」というべきか。

  • 2023.1.14市立図書館
    PR誌「ちくま」連載(2018〜2020)の書籍化(2020年12月)の単行本化。地元で長く愛されているような個人商店19軒を訪ね歩いて取材したレポートで、連載時にずっとおもしろく読んでいて、単行本になったものを図書館で借りて読み直し、文庫入りを待っていた。

    単行本のあとがきから3年、きびしいコロナ禍も経てこれらのお店はどうしているかずっと案じていたが(雑司ヶ谷霊園の花處住吉は2021年3月末で閉店したという記事をどこかで読んだ)、文庫版あとがきによるとおおかたの店は健在とありちょっとうれしくなった。

  • 読んでいるうちに自分も筆者と一緒にそれぞれのお店に足を運んで話を聞いているような気分になる素敵な本。
    チェーン店が台頭する現代で生き残ってるだけあってどのお店もドラマがあって彼らの人生を追体験しているみたい。
    お店や店主の歴史もそうだけど、長く営業しているだけあってそのお店のある街の歴史も一緒に話してくれる店主が多いから勉強になって面白い。
    私は比較的小さな街出身でこの本に出てくるような個人商店を沢山見てきてたはずだけど、いざ思い返そうとすると意外と頭の中に浮かんでこなくて悔しい。
    今度街をよく見ながらゆっくり歩いてみようかな。

  • こだわりの個人商店に通いつめ、
    その店主からお店の来歴、お店のこだわり、おもしろエピソードなどを根掘り葉掘り。
    大坂の人が東京の老舗を探訪ということで
    わからないなりの適度な距離感と
    よくぞここまでというしつこさで「お店の秘密」を洗いざらい。

    いやー面白かったです。

    登場したお店
    「中野屋」(日暮里)
    「かなざき精肉店」「魚作分店」(鶴見)
    「越後屋」(神田)
    「レ・アル かきぬま」(梅屋敷)
    「金星堂洋品店」
    「ミマツ靴店」(神保町)
    「ウエスタン」(吉祥寺・ハモニカ横丁)
    「木下自転車店」(阿佐ヶ谷)
    「須田時計眼鏡店」(西荻窪)
    「栄眞堂書店」(亀有)
    「たなべ書店」(南砂町)
    「竹屋文房具店」(大山ハッピーロード)
    「コバヤシ玩具店」(麻布十番)
    「青木屋」(池上)
    「花虎住吉」(雑司ヶ谷)
    「谷口質店」(成増)
    「熱海湯」(神楽坂)

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著者プロフィール

井上 理津子(いのうえ・りつこ):ノンフィクションライター。1955年奈良県生まれ。タウン誌記者を経てフリーに。主な著書に『さいごの色街 飛田』『葬送の仕事師たち』『親を送る』『葬送のお仕事』『医療現場は地獄の戦場だった!』『師弟百景』など多数。人物ルポや食、性、死など人々の生活に密着したことをテーマにした作品が多い。

「2024年 『絶滅危惧個人商店』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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