近代とホロコースト〔完全版〕 (ちくま学芸文庫)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (497ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480510211

作品紹介・あらすじ

近代文明はホロコーストの必要条件であった--。社会学の視点から、ホロコーストを現代社会の本質に深く根ざしたものとして捉えたバウマンの主著。

感想・レビュー・書評

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  •  ホロコーストについては、ナチスドイツの敗戦後、おびただしい事実の発掘や研究がなされてきたが、第三帝国という特殊ドイツ的な事情が反ユダヤ主義と結び付いて起こった事象と捉えられがちであった。
     特に、社会学等の社会科学の領域では、通常の歴史の流れの中断、文明社会の身体にとりついた腫瘍とみなされた。
     著者、バウマンにとってもそうであった、ユダヤ人の妻ヤニーナの戦争時代を書いた手記『冬の朝』を読むまでは。

     本書の執筆動機、目的は、緒言に端的に記されている。「本研究の種々の検証の目的は、…専門研究者による発見を社会科学全般に提供し、社会学的考察の主要テーマと関連させる形で解釈し、社会学の主流に合流させ、現在の周辺的位置から社会理論と社会学的実践の中心的位置に移すこと」とされる。
     キーワードは、『近代』、特に官僚制である。

     ホロコーストに関する歴史学等の先行研究、ーヒルバーグ、アーレント、ミルグラムなどの研究ーを丹念にたどりながら、著者の社会学的考察が進んでいくところは、大変読み応えがある。第7章の「道徳の社会学的理論に向けて」は、デュルケム、サルトル、アーレント、レヴィナスの議論を参照しながら理論的考察がなされていて、予備知識がないと理解が難しいが、著者の言わんとすることは明快に示されている。

     ホロコーストの問題が決して過ぎ去った過去のことではなく、現代を生きる我々は、何をどのように理解しなければならないのか。いろいろなことを、深く深く考えさせてくれる一冊であった。

  • お前の職場や社会のクソさ,実はホロコーストと根は同じなんやで,という本

  • 316.88||Ba

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著者プロフィール

1925年、ポーランドのポズナニのユダヤ人家庭に生まれる。ナチス侵攻によりソヴィエトに逃れ、第二次世界大戦後ポーランドに帰国。学界に身を投じワルシャワ大学教授となるが、68年に反体制的知識人として同大学を追われる。イスラエルのテルアヴィヴ大学教授などを経て、現在リーズ大学名誉教授、ワルシャワ大学名誉教授。現代の社会学界を代表する理論家である。邦訳書に『個人化社会』(青弓社)、『コラテラル・ダメージ――グローバル時代の巻き添え被害』(青土社)、『コミュニティ――安全と自由の戦場』(筑摩書房)、『リキッド・ライフ――現代における生の諸相』『リキッド・モダニティ――液状化する社会』(ともに大月書店)、『廃棄された生――モダニティとその追放者』(昭和堂)など多数。

「2012年 『液状不安』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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