はじめてのギリシア神話 (ちくまプリマー新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 138
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480683588

作品紹介・あらすじ

世界の始まりを描いたギリシア神話はどんな風に成立したか。2000年を経てもなお魅了されるストーリーやキャラクターを紹介しながら、その歴史的背景を探る。

感想・レビュー・書評

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  • ギリシア神話の世界観や背景の意図、世界各地の神話との比較。そして現在、神話はどう息づいているか。
    そういったことがコンパクトにまとめられており、入門書として非常にとっつきやすい。
    それにしてもギリシア神話、ダイナミックである。

  • オデュッセイア読んでみようかな

  • 164-M
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  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/771689

  • ギリシア神話を日本神話中心に各国の神話と比較しながら紹介していく形の本でした。
    キャラクターの名前は少し覚えづらいですが、読みやすくするための工夫があるため、書名のとおり「はじめて」ギリシア神話を読む方にはおすすめです。

  • ・たくさんの神と人間と英雄と怪物がいる。

  •  ギリシア神話に登場する神々についての紹介と、ギリシア神話と日本を含めた他地域の神話との比較。著者の専門は「インドからヨーロッパまでの諸民族の神話を比較して古い形を再建しようとする」(p.198)「比較神話学」という分野だそうだ。
     何の本で知ったのかは忘れたが、「比較神話学」という分野があるのは知っていて、古い形の再建というのは言語だけじゃないんだ〜と思った記憶があり、すごい面白そうだなあと思っていたが、インドやローマ、リトアニアの神話などで「神々の名前や三連の尊称の共通性」(p.197)というのがあるのを知って、とても興味深かった。再建という意味での比較ではないのだろうけど、日本の神話自体や神話の形成の過程との共通性というのも面白い。例えば、「『処女母神』の神話は世界の他の地域にもあります。キリストの母のマリアは処女懐妊したとなっていますし、仏教の開祖の釈迦の場合も、母親の摩耶夫人(マーヤー)は白象が体内に入る夢を見て受胎し、ネパールのルンビニー園で散歩をした時に右脇腹から出産したとされています。日本神話の主神アマテラスもスサノオと持ち物を交換して、そこから子供を生じさせています。」(p.90)ということで、神話独特の発想みたいなものが普遍的に現れる、というのが面白かった。(でもなぜそういう話が出来るかという理由は「物語の語り手である男たちがそういう神話を望んだから」(同)だけなのはちょっと物足りない感じもするのだけど…)。他にも、ギリシャ神話がローマに入った時には「古いローマの神々と外来のギリシアの神々をどのように共存させるかが問題となりました。しかし現実的なローマ人はこの問題を読み替えによって解決しました。」(p.59)というところは「日本には古くからの土着の神々が知られていましたが、そこに仏教が入ってきました。その時、争いを避けるためにローマの場合と同じように日本の神と仏教の仏を同じ存在でただ国が違うから別の姿になっているだけだという『本地垂迹説』という説明をしたのです。」(同)とか、日本史しか見ていないと日本特有の事情に思えるものも、似たようなことは世界で起こっているんだなあということが分かる。あと他の神話との比較ということではないが、ギリシア神話の解釈として、「『神話は歴史である』とする歴史的な解釈」(p.205)=エウヘメリズム的解釈と、「アレゴリズムを駆使しして世界を丸ごと描こうとしたもの」(同)=アレゴリズム的解釈、という2つがあるらしいが、これは日本や他の地域の神話の解釈にもあてはまるのだろうか?と思った。
     あとやっぱりおれとしてはギリシア神話の神々の名前やエピソードが今の英単語の語源になっていたりする部分は勉強になった。「英語で海洋の意味のoceanはオケアノスに由来します」(p.28)とか「神ヤハウェは、最初は人間たちの堕落ぶりに怒って滅ぼそうとしますが、洪水が引いてからノアの捧げものを受けると、二度と洪水は起こさないと誓い、その約束のしるしとして空に自分の弓を置いたと記されています(弓は英語ならボー(bow)で、雨の後に出現するのがレインボーつまり「虹」です。)」(p.58)、「アテネという都市は、ギリシア語ではアテナイという複数形で呼ばれていました(その名残で、英語では今もアセンズ、Athensと複数形です)。アテネが守護する都市であり、「アテナの子どもたち(の都市)」という意味で、アテネの複数形のアテナイという名前だったのです。」(p.88)、「しかしヘラは乳を吸われているのに気づき、この見知らぬ赤子を突き離したので乳が飛び散り、銀河になったというのです。英語では今も銀河をギリシア語に由来するギャラクシーGalaxyとかミルキー・ウェイMilky Wayと呼んでいますね。」(p.127)、「アマゾンは子孫を儲ける時だけ近隣の部族の男と交わり、子供が生まれると、男の子は殺すか奴隷として売り、女の子だけを残して育てるのです。弓を引くのに邪魔なので右の乳房を切除していたというので、「なし(ア)+乳(マゾン)」という名がついたとされます。」(p.176)、「パンは牧人と家畜の神とされますが(略)音楽を奏でているが、怒ると人や家畜に恐怖を引き起こすとされるところがサテュロスとの違いでしょう。恐怖はパンが引き起こすとされていたので、英語ではパニックと呼ばれています。」(p.181)などなど。確かにずっとなんてアテネのことをAthensって呼ぶんだろう、とか思っていただけに、納得。ただこれを知っても、授業で紹介するには至らなさそうだけど、面白かった。Pp.60-2には、神々の「ギリシア名=ローマ名=英語名」を対応させて、例えば「クロノス=サトゥルヌス=サターン(土星)」とか「アルテミス=ディアナ=ダイアナ」とか載っているのも、今の英語の固有名詞の理解を深めるのに役に立つ。
     と、これまで神話そのものというよりはその背景や周辺的な事項について、わりと面白いと思った。ただ実はこの本はそれよりももちろん神々をめぐるエピソードが色々書かれているのだけれど、肝心のそういうストーリはなかなか頭に入ってこない。やっぱり子どもの時にマンガとかで読んでおかないと、登場人物が多すぎるし名前もスッと覚えられないギリシア名だし、正直難しかった。日本の神話も似たような感じなのだろうか…?最後に参考文献が紹介されているが、『ギリシア・ローマ神話辞典』を描いた高津春繁という人は比較言語学の人じゃなかったっけ?と思いながら、比較言語学やる人は神話の研究もやるのか(その逆?)とか思ったりした。読んでないけど、家に『図解ギリシア神話』があった気がする。これで神様の図を見れば、ちょっとは頭に入るのかなあ、と思った。(21/02/18)

  • 登場する神々や英雄たちの紹介はもちろん、ギリシア神話の世界的な位置づけや他の神話との共通点なども分かりやすく解説されていて面白かったです。FGOユーザーにもお勧めです。

  • 93
    ・人間の光と闇を神に例えて物語として伝えている。
    ・女性の登場人物は、否定から肯定、破壊から建設へと可変していくことが多い。(味方につければ頼もしく、敵に回すと恐ろしい)
    ・権力闘争が繰り返し行われることで進化していく。

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著者プロフィール

和光大学表現学部教授。
1953年生まれ。比較神話学、宗教史学。『神話学入門』(講談社、2019(初出は『神話学講義』、角川書店、1999))ほか、宗教学、神話に関する著書多数。

「2024年 『パンテオン 新たな古代ローマ宗教史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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