「覚える」と「わかる」 ――知の仕組みとその可能性 (ちくまプリマー新書 417)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480684417

作品紹介・あらすじ

覚えた!わかった!と素朴に使うけど、その時、人間のなかでなにが起きているのか。丸暗記、真似る、理解といった働きから、批判的思考や知の可能性までを探る。

感想・レビュー・書評

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  • 非常に勉強になる一冊だった。
    人間がどうやって学んでいくのか、知識を得られるのかが詳細に説明されている。
    また、人間の脳の進化を利用した研究によって、AIの進歩など驚愕の可能性が示されていて、興味深い内容だった。
    覚えること、わかることに対する自分の捉え方が変わった気がします。

  • タイトルを見て、ネットで購入してしまった。覚えて、思い出すという脳の働きが、わかる、ひらめくときの脳の働きとよく似ている。そういう話を昔どこかで読んだ。そして、自分自身の経験からも、それは正しいと感じている。だから、思い出すことを繰り返すのが、覚えることだけではなく、理解することに大きくつながるのだと思っている。そういう話を期待してしまった。これはすぐに読んで、自分の知識をアップデートしないといけないと思った。しかし読み進めていくと、そういう内容ではなかった。まあしかし、これはこれで新たな考え方のヒントにはなった。「アジャイル」ということばは初めて知った。まあ、走りながら考えるということだろうか。僕なんかは、ほとんどいつもそうだ。計画を立てて計画通り進んだためしがない。というか計画する時間がほとんどなくなった。とりあえずやってみる、うまくいかなければ修正する、ほぼそういう毎日だ。徳の話もおもしろい。「中庸の徳」が大切である。最終章の話は、SFで昔から出てくるわけだけれど、現実が次第に近づいてきているということだろう。AI技術にはストップをかける必要もあるという著者の声がほんの少し聞えた。あと2年で定年である。延長もできるらしいがそのつもりはない。時間がたっぷりできる。ウエルビーイング、人生の善いあり方、それを真剣に考えてみたい。

  • 「人間の知能の大まかな全体像」を示す本だとのこと。

    構成は、最初の2章は「覚える」ことと「わかる」ことの違いを押さえる。
    あれ?これで表題の内容が終わっちゃう? と思われる。
    そのあと、臨機応変に対応する知の話に展開する。

    さらに、「知的徳」と「批判的思考力」へ向かう。
    「徳」の話が出てくるところが意外だった。
    それは著者が哲学の人だからか?
    そこからテクノロジーが人の知を拡張する未来の話になって終わる。

    全体としてびっくりするほど新しい話が出てくるわけではないが、「覚える」ことや「わかる」ことをいくつかの局面に分けて考えていくので、こちらも理解を整理しながら読み進めることができる。

    覚えることには、暗記する以外にも、身体で覚えることもある。
    そのために、知覚や感覚を磨く必要があり、それによって技術の習得が進んでいくとのこと。
    (こういう議論は心理学者の領域か?と思うのだけれど…)

    「わかる」こと、物事を理解するとは、それについての知識を獲得することだともあった。
    それには内容の理解と、意味(その知識がどう働くか)の理解というレベルがある。
    深い理解とは何か、とあったので、自分としてはそこが知りたくて、ちょっと前のめりになったが…
    深く理解するとは、内容の理解と意味の理解の両方をよく知っているとうことだとのことだった。

    このあたりまでの話は、割とわかりやすいとも言えるし、どこかで聞いたことがあるなあ、とも思えるような内容だった。

    それ以降は、状況に応じて対応する「アジャイルな」知の働きに話が進む。
    状況を把握するには、知覚と情動が必要だとのことで、人工知能との対比で説明されていた。

    情動の次に「知的徳」の話に続く。
    さっき書いたように、ここが一番自分にとって驚いた部分だった。
    「徳」とは「卓越した性格」のことで、何事にも中庸であるとよいらしい。
    何か急に孔子様の姿がちらついたのは幻影か?
    真理の探究や課題解決には、知的徳の発揚たる「開かれた心」「知的な粘り強さ」「好奇心」などが関わっているという話になってくると、これは最近はやりの「非認知能力」とか「グリッド」の話か?とも思えてくる。

    最終章では、テクノロジによって人間の知性が拡張する未来について、問題提起されて締めくくられている。
    この話についてもっと読みたかった。
    人工知能の研究者とは違う観点が出てきたら面白いかも、と思うから。

  • 人間の知能について考察が、いろんな視点から展開される.気になったフレーズを書き留めておく.(p83) 直観は候補の絞り込みを行うことによって、私たちの物事の理解におおいに貢献するのである.(p143) 理性の適切な情動に裏打ちされてはじめて、証拠や推論はきちんと吟味されるのである.第5章の「機会がひらく知の可能性」でマインドリーディング装置の出現を想定した議論が楽しめた.「心のプライバシー」というタームは今後の展開に興味がある.

  • 哲学的な知の考察。人間の心の働きや知の仕組みなどが、心理学とは異なる用語で表現されている。「知ると分かる」「科学技術の善用と悪用」「正しく恐れる」などについての記述が面白かった。特に「知的徳」については、これを獲得していくために人は学ぶ必要があるのだなと感じた。徳を高めていきたい。

  • 書名に関する部分は1~2章で、全体的には知能に関する科学哲学的内容。人間と人工知能とを分けるのは「関連性の状況依存性」にどう対処するのかという「フレーム問題」を解決できるか否かとのこと。さらっと読めるので、「知能」に関する哲学的議論の全体像を把握するにはちょうどよい。

  • 信原幸弘『「覚える」と「わかる」 知の仕組みとその可能性』。気になってたので読んでみた。3章くらいまではなるほどの嵐でおもしろかった。4章の徳のことや5章のこれからの心のことは「初歩的な(プリマー)」レーベルなので浅め。ただそれでも、4章や5章の導入部で述べられる「現状の心はどんな感じか」という記述は、普段意識することがないので面白かった。

  • 教材研究用

  • 【請求記号:141 ノ】

  • 図書館がおくる、「クラブ・サークル向けおすすめ図書」

    クラブ・サークル名 軽音楽部
    請求記号 Ti-417
    所蔵館 2号館図書館

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著者プロフィール

信原 幸弘(のぶはら・ゆきひろ):1954年、兵庫県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授なをつとめる。東京大学名誉教授。専門は心の哲学。著書に『意識の哲学』(岩波書店、2002年)、『シリーズ 心の哲学』全3巻(編著、勁草書房、2004年)、訳書にパトリシア・チャーチランド『脳がつくる倫理―科学と哲学から道徳の起源にせまる』(共訳、化学同人、2013年)がある。

「2022年 『「覚える」と「わかる」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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