「無言館」にいらっしゃい (ちくまプリマー新書 39)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (122ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480687401

作品紹介・あらすじ

何も語らないけど、たくさんの言葉があふれている。「無言館」は、そんな美術館です。戦没画学生の描いた絵は静かに、生き生きと私たちの心に迫ってきます。

感想・レビュー・書評

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  • 太平洋戦争で亡くなった「戦没画学生」の遺作を収集し保存するための慰霊美術館、長野県上田市の『無言館』の館長窪島誠一郎さんが優しくメッセージを伝えるように語りかけてくれる。2022年24時間テレビでドラマ化されたとは知りませんでした。
    この本には直接登場しませんが、設立に貢献された福岡県出身野見山暁治氏は2023年6月逝去(102歳)。春に訪れた福岡県立美術館企画展では、学生の前で講話なさっておられました。
    名前の由来は「何も語らないけど、たくさんの言葉があふれている美術館―だからムゴンカン」とのこと。みんな絵の前で黙って立ちすくみ、何も言わずに静かに帰っていくという。
    正規に学校に通う期間を無理矢理短縮させられ、繰り上げ卒業させられて戦地へ向かわなければならなかった画学生。戦争に役に立つからと理系の学生は残され、戦争の役に立たない芸大生は戦地に向かわされたという話も聞く。油絵、水彩画、デッサンなどが約二百点展示。「戦争が画学生の大切な夢を奪い、苦労して育てた両親やカゲで支えてくれた兄弟姉妹、勉強の手助けをしてくれた先生や友人たち、たくさんの人たちの夢や希望を奪った」「画学生たちはこの絵を戦争にゆく直前に描いた」「人間が生きているうちに自分の仕事にこめることのできる命」「何かにうちこむことによって生かすのが生命」「画学生の絵は今もちゃんと生きている」「絵を描くことへの愛情があるから、いきいきと私たちの心に光かがやいてみえる」
    どの絵もかれらの周りにいた愛する人々、幼い頃から自分をかこんでいた何でもない身近な風景を描いたものばかりとのこと。いつか訪れてみたい場所の一つになった。

  • ふむ

  • 小学校高学年から読める。戦没画学生という重いテーマを、子どもたち向けに軽い文体で書いてある。非常に読みやすく、すぐに読み終えることができる。それでいて、大事なことについて、深く考えることができる。

  • 長野県上田市にある戦没画学生の絵を飾る美術館。それが無言館。実は行ったことが無い。行こう行こう行こうと思って行ってない。そこの館長が無言館の紹介を兼ねて様々なメッセージを伝えます。画学生たちが描いた絵もいくつか載ってます。

    実はこの著者には一度お会いしたことがある。高校時代に講演会に来てくれた。実に安い謝礼で来たってことボヤいてました。
    その講演の中で、「彼ら(戦没画学生)は戦争の被害者かも知れないが負けて無い。絵を描き残したことによって戦争に打ち勝った人たちなんだ」と涙ながらに伝えていたのは、今でも覚えてる。当時の俺はスルーしてたけど。

    その講演の話は、おそらく本書の「人間には命は二つある」という行に当たるんかなと思う。

    若年者向けに書かれているんだろうけど(プリマーだし)、描き方がホントに若年向けに伝えようと必死に書いてるのがよくわかる。言っちゃなんだけど相当キモイ。ほんとに若者に通じるのか、だいぶ疑問。
    それでも伝えたいことはわかる。伝えようとする努力もわかる、そして伝えようとしている。シニカルに構えるより、その姿勢は見習うべきなのかなと、社会人になって思うようになりました。

  • 無言館とは、戦没画学生の作品と遺品を収めた美術館である。
    本書は、その館長さんによる作品。

    本書の内容は、まあその美術館の紹介に過ぎないのだけれど、
    このような活動をされていることに敬意を表したい。

    いつか、無言館に行ってみたいと思った。
    本書の役割は、そう思わせることだろうから、筆者の意図は成功しているのだろう。

  • いろいろと考えさせられる1冊でした。

  • いつか行ってみたい所です。数年前、青森で企画展を見ました。戦争が、未来を奪う行為であることを淡々と伝えているような気がしました。

  • [ 内容 ]
    何も語らないけど、たくさんの言葉があふれている。
    「無言館」は、そんな美術館です。
    戦没画学生の描いた絵は静かに、生き生きと私たちの心に迫ってきます。

    [ 目次 ]
    「無言館」ってどんな美術館?
    戦争で死んじゃった画学生たち
    画学生の描いた絵ってどんな絵?
    画学生が伝えたかったこと
    なぜ、戦争に行ったの?
    人間には命が二つある
    だから、命は大切なんだ
    何のために勉強するの?
    戦没画学生って超カッコイイ!
    戦争はどうして起こるの?
    ずっと平和だといいね
    「無言館」にいらっしゃい

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  •  今までに5回、作者と私は「出会」っている。

     最初は25年前。
     朝日新聞の東京版の記事の中で遭った。
     著名な作家水上勉氏が、生き別れの息子と再会を果たしたとの記事だった。息子は成長して青年となり、明大前で小劇場を経営しているのだという。劇場名は「キッド・アイラック」、喜怒哀楽にに由来する。テレビさえ持たない学生だった私の脳裏に、劇的すぎるストーリーがくっきり残った。

     2度目は5年前。
     ある業界団体相手の仕事で、明大前にある相手の事務所を訪ねた帰りのこと。通りがかりに入った喫茶店でだった。
     何気にふと壁を見ると壁の絵が只ものではない。「KAITA」とサインがある。知る人ぞ、の夭折の天才村山塊多ではないか。さすがに田舎の喫茶店とは違う。店内の静けさも良い。楽に文庫本が半分は読めた。
     勘定をして出たが、オーナーが居合わせたら、
    「ご馳走様。あれ、村山塊多でしょ。すごいですね。静かで本も読めたし、ありがとうございました」と、言ってたところだった。
     ビル名表示を見たら、「キッド・アイラックビル」とあった。記憶が瞬時に甦った。あの「青年」の店だなここは。確信があった。

     3度目は本屋の中。
     「おや」と見つけた新刊本が『「明大前」物語』。四半世紀にわたる謎が全て霧消した。父との再会から、明大前での生活、美術館の設立、全てが自伝的に綴られていた。名無しの「青年」は、著者で、オーナーで、美術館もやっている「窪島さん」になった。

     次はNHKの「日曜美術館」。番組の冒頭のところで、「あ、俺この人知ってる」と不覚にも口走ってしまった。顔を見るのも初めてなのに。

     番組は戦没画学生の作品を集めた「無言館」の紹介特集。

     「描きたい」という切な思いからも、愛しい人からも、もぎり取るかのように切り離され、「未熟」で「未完」なままの作品だけを残した彼ら。
     簡単な言葉で語ることさえも憚られる。黙って見るしかない作品群。

     そして五度目。最後の出会いは、あまりにも唐突すぎた。
     
     2月の青森駅は吹雪の中、行き交う乗降客は皆無口だ。PCが2台入ったバッグは忌々しい重さで、階段にはエスカレーターもない。雪の付いたキャスターは思ったようには転がらず、乗り遅れそうになっていた。
     
     ポスターが見えた。走りながら見る。
     コピーが無理やり目に飛び込んでくる。

     「姉さん、もし帰れたら巴里に行かせてもらえますか」

     即座にわかった。
     東京駅の中の東京ステーションギャラりーで、
    「無言館展」を開催中との告知だ。

     「東京駅までなんか行かないの。仙台で降りるんだから」
     人には聞かれないように声を殺して叫ぶ。

     「ばかやろぉ、帰ってこれるワケねえじゃねえかよ、還れたはずないだろう」

     「巴里になんか、行けたはず、ないんだよ」

     描きたかったのかそんなに。見たかったのかパリが。そんなにも。
     親父が死んだ時と同じ位。涙が、でた。

     『「無言館」にいらっしゃい』
     窪島さんのお誘いはあまりに優しい。
     ルビが振ってあって小学生でも読める本です。

  • 無言館紹介本の一つ
    無言館が何かは調べて欲しい。

    語りかけるように筆者が読者に訴えかえる本
    よく言えば親しみやすいのだが、中学生や小学生をターゲットにしてるのかな?って本にも見える。

    ともあれ、戦没画学生の遺作を紹介しながら今再び現代に問いかえる『平和』とは何か?生きるとは何か?
    是非読んでおきたい一冊

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著者プロフィール

くぼしま・せいいちろう
1941年、東京生まれ。
印刷工、酒場経営などを経て、
64年、東京世田谷に小劇場の草分け
「キッド・アイラック・アート・ホール」を設立、
また
79年、長野県上田市に
夭折画家のデッサンを展示する
私設美術館「信濃デッサン館」、
97年には、戦没画学生慰霊美術館「無言館」を設立した。
主著:
実父水上勉との再会を綴った『父への手紙』
(筑摩書房、NHKテレビドラマ化)、
『信濃デッサン館日記・Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ』(平凡社)、
『無言館ものがたり』『無言館の青春』(講談社)、
『「無言館」への旅』『高間筆子幻景』『絵をみるヒント』
『父 水上勉』『母ふたり』(以上、白水社)など多数。
受賞:
第四十六回産経児童出版文化賞、
第十四回地方出版文化功労賞、
第七回信毎賞、
第十三回NHK地域放送文化賞を受賞。
二〇〇五年、「無言館」の活動で
第五十三回菊池寛賞受賞。

著書一覧:
『父への手紙』
(筑摩書房、1981年、ちくま文庫版:1985年)、
『信濃デッサン館日記』
(平凡社、1983年、講談社文庫版、講談社、1986年)、
『詩人たちの絵』
(平凡社、1985年、平凡社ライブラリーoffシリーズ版、2006年)、
『手練のフォルム』(信濃デッサン館、1985年)、
『野田英夫スケッチブック 
 アメリカでみつけた二十の小品にみる一日系画家の肖像』
(弥生書房、1985年)、
『信濃デッサン館日記 2』(平凡社、1986年)、
『母の日記』(平凡社、1987年)、
『デッサン集 夭折の画家たち  双書 美術の泉』
(岩崎美術社、1989年)、
『漂泊 日系画家野田英夫の生涯』(新潮社、1990年)、
『わが愛する夭折画家たち  講談社現代新書』
(講談社、1992年)、
『田中恭吉ふあんたぢあ 
「月映」に生きたある夭折版画家の生涯』(彌生書房、1992年)、
『美術館のある風景』(彌生書房、1994年)、
『信濃デッサン館日記 3』(平凡社、1995年)、
『ウッドストックの森から』(西田書店、1995年)、
『絵画放浪』(小沢書店、1996年)、
『無言館   戦没画学生「祈りの絵」 アートルピナス』
(講談社、1997年)、
『関東周辺  ロマンティック美術館  ウイークエンド ナビ』
(フレーベル館、1998年)、
『信州の美術館めぐり  とんぼの本』
(窪島誠一郎・宮下常雄・岩淵順子 共著、新潮社、1998年)、
『「無言館」ものがたり』(講談社、1998年)、
『無言館を訪ねて  戦没画学生「祈りの絵」第Ⅱ集
 アートルピナス』(講談社、1999年)、
『信州の空 カリフォルニアの風 往復書簡』
(窪島誠一郎・野本一平 著、小沢書店、1999年)、
『信濃デッサン館20年 夭折画家を追って』(平凡社、1999年)、
『鼎と槐多 わが生命の焔信濃の天にとどけ』
(信濃毎日新聞社、1999年)、
『無言館ノオト  戦没画学生へのレクイエム  集英社新書』
(集英社、2001年)、
『無言館の詩 戦没画学生「祈りの絵」 第Ⅲ集
アートルピナス』(講談社、2001年)、
『信濃絵ごよみ 人ごよみ』(信濃毎日新聞社、2002年)、
『「無言館」への旅  戦没画学生巡礼記』(白水社、2002年)、
『北国願望・わが愛する美神たち』(北海道新聞社、2002年)、
『石榴と銃』(集英社、2002)、
『「無言館」の坂道』(平凡社、2003年)、
『高間筆子幻景  大正を駆けぬけた夭折の画家』
(白水社、2003年)、
『「明大前」物語』(筑摩書房、2004年)、
『京の祈り絵 祈りびと  「信濃デッサン館」
「無言館」日記抄  かもがわCブックス』
(かもがわ出版、2005年)、
『戦争と芸術 「いのちの画室(アトリエ)」から』
(安斎育郎・窪島 誠一郎 著、かもがわ出版、2005年)、
『雁と雁の子 父――水上勉との日々』(平凡社、2005年)、
『鬼火の里』(集英社、2005年)、
『うつくしむくらし  窪島 誠一郎 ひとり語り 文屋文庫』
(サンクチュアリ出版、2006年)、
『「無言館」にいらっしゃい  ちくまプリマー新書』
(筑摩書房、2006年)、
『「無言館」の青春』(講談社、2006年)、
『「信濃デッサン館」「無言館」遠景 赤ペンキとコスモス』
(清流出版、2007年)、
『鼎、槐多への旅  私の信州上田紀行』
(窪島誠一郎 文、矢幡正夫 写真、信濃毎日新聞社、2007年)、
『かいかい日記 「乾癬」と「無言館」と「私」』
(平凡社、2008年)、『私の「母子像」』
(清流出版、2008年)、
『傷ついた画布(カンバス)の物語 戦没画学生20の肖像』
(新日本出版社、2008年)、
『戦没画家 靉光の生涯 ドロでだって絵は描ける』
(新日本出版社、2008年)、
『無言館の坂を下って 信濃デッサン館再開日記』
(白水社、2008年)、
『美術館晴れたり曇ったり』(一草舎 、2009年)、
『わが心の母のうた』(信濃毎日新聞社、2010年)、
『約束 「無言館」への坂をのぼって』
(窪島誠一郎 著、かせりょう イラスト、アリス館、2010年)、
『無言館はなぜつくられたのか』
(野見山暁治、窪島誠一郎、かもがわ出版、2010年)、
『「戦争」が生んだ絵、奪った絵  とんぼの本』
(野見山暁治・窪島誠一郎・橋秀文 著、新潮社、2010年)、
『いのち  わたし、画学生さんのぶんまで生きる
 「約束」シリーズ』(アリス館、2011年)、
『わたしたちの「無言館」』(アリス館、2012年)、
『粗餐礼讃 私の「戦後」食卓日記』(芸術新聞社、2012年)、
『夭折画家ノオト 20世紀日本の若き芸術家たち』
(アーツアンドクラフツ、2012年)、
『夜の歌 知られざる戦没作曲家・尾崎宗吉を追って』
(清流出版、2012年)、
『父 水上勉』(白水社、2012年)、
『繪摘み etsumi 「信濃デッサン館」「無言館」
 拾遺 窪島誠一郎』(書肆壷中天、2013年)、
『母ふたり』(白水社、2013年)、
『蒐集道楽 わが絵蒐めの道』
(アーツアンドクラフツ、2014年)、
『絵をみるヒント 増補新版』(白水社、2014年)、
『窪島誠一郎・松本猛 ホンネ対談 
<ふるさと>って、なに?!』
(窪島誠一郎、松本猛 著、新日本出版社、2015年)、
『父・水上勉をあるく』
(窪島誠一郎 文、山本宗補 写真、彩流社、2015年)、
『「自傳」をあるく』(白水社、2015年)、
『くちづける 窪島誠一郎詩集』
(アーツアンドクラフツ、2016年)、
『最期の絵  絶筆をめぐる旅』(芸術新聞社、2016年)、
『明るき光の中へ 日系画家野田英夫の生涯』
(新日本出版社、2016年)、
『手をこまねいてはいられない 
 クモ膜下出血と「安保法制」』(新日本出版社、2016年)、
『日暮れの記 「信濃デッサン館」「無言館」拾遺』
(三月書房、2017年)、
『愛別十景 出会いと別れについて』
(アーツアンドクラフツ、2017年)、
『同じ時代を生きて』
(武田志房、窪島誠一郎 著、三月書房、2017年)、
『無言館  戦没画学生たちの青春  河出文庫』
(河出書房新社、2018年)、
『戦没画学生 いのちの繪 一〇〇選』
(窪島誠一郎 著、無言館 監修、
 株式会社コスモ教育出版、2019年)、
『ぜんぶ、嘘』(七月堂、2019年)
『村山槐多詩集』
(村山槐多 著、窪島誠一郎 編、書肆林檎屋、2019年)、
『「無言館」の庭から』
(窪島誠一郎 著、かもがわ出版、2020年)、
『美術の眼  窪島誠一郎コレクシオン I』
(窪島誠一郎 著、アーツアンドクラフツ、2020年)
『美術の眼 2 窪島誠一郎コレクシオンⅡ』
(窪島誠一郎 著、アーツアンドクラフツ、2020年)、
『美術館随想 窪島誠一郎コレクシオンIII』
(窪島誠一郎 著、アーツアンドクラフツ、2020年)、
『無言館随想 窪島誠一郎コレクシオンⅣ』
(窪島誠一郎 著、アーツアンドクラフツ、2020年)他。

「2019年 『親を愛せない子、子を愛せない親たちへ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

窪島誠一郎の作品

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