教科書の文学を読みなおす (ちくまプリマー新書 92)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (158ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480687951

感想・レビュー・書評

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  • 『文豪はみんな、うつ』(岩波明, 2021年)以降も「純文学はとことん暗い!」とその類の作品を避けてきた。今でも進んで手に取れないけど、ハンデを克服したい気持ちもあるっちゃある。そこで今日は純文学の良さを熟知されている著者からお話"だけ"伺うことにした。

    本書では教科書に登場する文学作品をテーマ別に解説してくれている。
    2008年刊行だから運が良ければ学生だった頃に出会うこともできたわけで、そしたら純文学に心を許す未来もあったのかなとか思ったり。(二人称複数形が「君たち」だから本書が学生対象であることは間違いない) いま、14年後の別の未来で自分は純文学と距離を縮めることが出来るのか…?

    目から鱗が落ちたり苦手意識が覆ることはなかった。が、しかし!著者のように純文学を敬愛する方が大切にされているポイントは、何となく掴めたと思う。(紹介されていた文学作品よりもそこに目が行ったという…)

    第一に共感力。過去の人間の悩み苦しみを自分の事のように捉え、一緒になって思い悩む。自分みたいに「辛気臭い」と回れ右するのではなく、その場で本の作者と膝を交えるがごとく対話を試みるのだ。そしてその対話は議論に姿を変え、同時代を生きる同志らと交わされることになる。

    あとは…全然上手く言えないけど、時代という線引きをしないところ。登場人物の考え方を時代だから、あるいはその時代ならではだと片づけたりせずにあたかも現代を生きる人間が考えているように捉える。その表れが「古典と近代は、つながっている」のひと言。更に与謝野晶子と『伊勢物語』の歌、『坊ちゃん』とヤマトタケルの伝説…といった具合に別時代の作品に次々と共通項を見出されたのには脱帽した。

    かと言って、暗澹たるイメージを拭い切るにはまだ至れていない。何より作品を手に取らない限りは克服に近づくことすらできないよな。。
    それでも↑の共感力とかは見習うというか試していきたいと思った。負のオーラに囚われた時はその中を掻き分けてでも、著者の言う作品に秘められた「生きる指針/ヒント」を探し出してみよう、とも。(まるで決意表明…)

    本の感想じゃなくて、これこそ誰得な純文学の克服日記みたいになって申し訳ないです。。レビュー日記にレベルアップできるよう精進していきます汗

  • 夏目漱石がいくつも取り上げられているのは良かったが、自分が教科書で習ったかどうかというと・・・・?
    漱石作品で教科書に載っていた覚えがあるのは、「こころ」(抜粋)だけだったような。他社の教科書には載っていたのか?「虞美人草」とか。

  • 教科書に出てきているの、今漱石とはあるのかな。
    うちのところでは漱石やってないんだよなぁ。
    古典も扱ってないものは多いかも。
    (メインではないけど方丈記ぐらい?)

    読んでいたのは「舞姫」のみ。
    当初は拒絶反応が出ていたけど
    真相を知ってしまうとね…
    でも豊太郎が行った行為は決して許されることではなく
    そういうことをすれば待ち受けるのはそれ相応の
    報いなのです。

    あとは山椒大夫に関しても
    なるほど、と思えました。
    そういう解釈もあるのね。

  • 2008年の発行だから、当時の状況はよく分からないけど、
    漱石、鷗外を収録している教科書は少なかったと思う。2014年現在だと存在していないはず。

    それはともかく、
    教科書に使われている作品を通して、文学の普遍性を教えてくれる。すいすい読めてそのうえ古典が読みたくなる。
    現代の自分、
    近代の漱石、鴎外
    古典の紫支部、清少納言、鴨長明、吉田兼好
    現代、近代、古典の三段重ねで「人間の考えることは変わっていない」ことが分かる。

    でも漱石や鷗外は方丈記も源氏も読んでいたと思うけど、その流れは現代まで届いているかな?

    うん、方丈記を読もう。源氏は無理だな。

  • 教科書の文学って、なんかお堅いイメージがありませんか?ですが、一旦見方を変えてみると、とても面白いものなんです!

  • NDC910.26
    「教科書の文学が、こんなに泣ける、せつない、情けない…なんて思わなかった!わずかな成功例と無数の失敗例に、人生を学ぼう。古典から漱石まで、お堅いイメージが一変する一冊。

    目次
    第1章 人間は、いつも恋をしてきた―『それから』(文学者は、みんな恋愛小説家だった;苦しい恋から逃れる方法 ほか)
    第2章 若者は、なぜ旅に出るのか?―『坊っちゃん』(人生は、旅である;坊っちゃんは、意外と知識人 ほか)
    第3章 悲しみは、時空を越える―『舞姫』(文学は変わらない;人間の心も、変わらない ほか)
    第4章 人生は、「仮の宿り」である―『草枕』(人生は、自分のためにある?;自分一人のためにある草庵 ほか)
    第5章 自分の幸福は、他人の不幸?―『山椒大夫』(くるくる変わる幸福と不幸;鬼ヶ島は、なぜあるのか ほか)

    著者等紹介
    島内景二[シマウチケイジ]
    1955年、長崎県生まれ。東京大学文学部卒業。電気通信大学教授。日本文学研究者、文芸評論家。専門は源氏物語

  • 勉強になりました。

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著者プロフィール

1955年長崎県生

東京大学文学部卒業、東京大学大学院修了。博士(文学)

電気通信大学名誉教授

2020年4月から、NHKラジオ第2 古典講読「王朝日記の世界」を担当。2023年4月から再び「古典講読・日記文学をよむ」を担当。

主要著書
『新訳十六夜日記』『新訳うたたね』『新訳紫式部日記』『王朝日記の魅力』『新訳 蜻蛉日記上巻』『新訳 和泉式部日記』『新訳 更級日記』『和歌の黄昏 短歌の夜明け』(いずれも、花鳥社)、
『塚本邦雄』『竹山広』(コレクション日本歌人選。共に、笠間書院)
、『源氏物語の影響史』『柳沢吉保と江戸の夢』『心訳・鳥の空音』(いずれも、笠間書院)
、『北村季吟』『三島由紀夫』(共に、ミネルヴァ書房)
、『源氏物語に学ぶ十三の知恵』(NHK出版)、
『大和魂の精神史』『光源氏の人間関係』(共に、ウェッジ)
、『文豪の古典力』『中島敦「山月記伝説」の真実』(共に、文春新書)
、『源氏物語ものがたり』(新潮新書)、
『御伽草子の精神史』『源氏物語の話型学』『日本文学の眺望』(いずれも、ぺりかん社)、
歌集『夢の遺伝子』(短歌研究社)

「2023年 『新訳 建礼門院右京大夫集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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