- Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480688545
作品紹介・あらすじ
戦場から市場へ-戦火が絶えなかった東南アジア大陸部は、"メコン圏"構想のもと国境を越えた人やモノの動きが活発になっている。交通と経済・社会との密接な関係の解明を目指す著者が、「変化」と「活気」の中にあるこの地域の過去と現在を語る。
感想・レビュー・書評
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「東南アジアを学ぼう」という題名の本であるが、本書で実際に扱っているのは、マレーシアを除く東南アジアの陸地部分、国名で言えば、ミャンマー、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナム、そしてミャンマー・ラオス・ベトナムと国境を接する中国内陸部である。それらの地域を、筆者は「メコン圏」と呼んでいる。本書では、そのメコン圏を、その開発のために道路整備が進んだ3つの経済回廊を通して紹介している。回廊を実際に通行したら、どのような場所を通過するのか、ということが紹介の主な内容であり、ある意味では、旅行記的な内容でもある。面白い視点だと思ったが、本書は2011年の発行であり、情報が少し古いのが残念だった。
2008年の年末から2009年の年明けにかけて、ラオスに旅行に行った。訪れたのは、首都ビエンチャンと、世界遺産でもあるルアンプラバン。当時、仕事の関係でバンコクに1人で住んでおり、年末年始の休みの間に、タイ周辺の行ったことのない場所に行こうと計画し、訪問したものだ。もう15年も前の話なので、今では変わっていることも多いと思うが、当時のラオスは、首都のビエンチャンでさえ、本当にのんびりとした何もない場所、何十年前かの日本の地方都市という雰囲気の場所だった。そのことが気に入ったし、実際にのんびりと過ごすことが出来た。印象に残っていることはいくつかあるが、そのうちの1つが、ルアンプラバンの旅行代理店で見た、長距離バスの案内だ。ルアンブラバンから夜行バスが出ていて、そのバスは、33時間かけて中国の昆明まで行くという案内だった。何となく虚を突かれた感じがしたのだが、確かにラオスと中国は国境を接していて、バスが出ていてもおかしくはない位置関係にあった。気持ち的に大いにそそられたが、仕事始まりも迫っており、そのバスに乗ることはなかった。
それから15年、今ではなんと、ビエンチャンと昆明をつなぐ鉄道が出来たようである。その鉄道はルアンプラバンも通る。ネットで調べてみると、ビエンチャンからルアンプラバンまでは所要時間2時間。そして、ビエンチャンから昆明までは約10時間ということなので、ルアンプラバン-昆明間は、おそらく8時間程度。私が見た所用時間33時間の夜行バスは、利便性という観点からは全く太刀打ちできない状態だ。
というようなことを思い出しながら、それなりに楽しく読んだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
東南アジアの国々を概観する。
但し、国ごとの記載ではないのでじゃっかんわかりづらい。
また、実際にルートに沿って旅をするのであればいざ知らず、そうでない多くの読者にとっては、感情移入することも地名を覚えることも容易でない。
このため、結果として流し読みせざるを得ないようにも思う。
それでも、メコン川が各国にもたらす交通機能、農業機能、あるいは逆に断絶性を中心に実感することはできる。
そう、東南アジアの各国(特にインドシナ半島)は、メコン川との関係なくしては語られるのが難しいのである。
(以下、印象に残った事項を列挙)
中国によるダム開発、それによる下流への影響(水量変動、生態系・漁獲高:p.49、
メコン川を通じた上下流の交易(補完的な貿易):p.52、
中国のシーサンパンナ地域と東南アジアの関係(とくに、タイ族の出自、孟(もう)といった文字はタイ語で国の意):p.59、
チェンナイ・チェンマイをとおってバンコクへはタイ族の下ってきたルート:p.66、
タイ側からビエンチャン近郊のターナーレーンへのメコン川をわたる鉄道はラオスにとっての鉄道(だからビエンチャンの住民たちがしょっちゅう対岸のタイまで買い物に行くということなのかもな。また、この下流は両岸に同じ文化を育んだのに後に分断することになった):p.91,96、
メコン川での発電と隣国タイへの売電による「バッテリー」をめざすタイ:p.100、
ベトナムの南国統一鉄道の、鉄道による破壊と復興の歴史:p.118、
交通の要衝たるダナン(天然の深水港)はフランスからも米国からも進出の拠点にされた:p.124、
トンレサップ湖はメコン川の洪水が雨期にはバックで入り込む天然の遊水地:p.146、
タイの通貨バーツがこの地域の共通通貨化していくだろうとの事前の見込みに反して実際には中国からの進出が進む現状:p.179、、、
といったようにメコン川をとりまく、この国々にとって重要なトピックが結構網羅されているようにも思ったのも確かだが。 -
メコン川流域のベトナム・ラオス・カンボジア・タイ・ミャンマーと中国の雲南省・広西壮族自治区からなる高地経済圏、メコン圏の三つの経済回廊を旅して人やモノの往来を見る。
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今度、東南アジアに行ったら、なるべく道をよくみてみることにしよう。
人の動き、流れみたいなのが分かるかも。もうちょいいろんな知識をいれてから読みたい本だった。 -
1988年にメコン、インドシナを戦場から市場にしようとタイが呼びかけた。
プノンペン郊外には多数の縫製工場がある。主要な輸出品目となった。多数の労働力を必要とするから、人件費の安いカンボジアが注目された。300か所くらいある。繊維産業に従事しているのが400万くらい。 -
柿崎一郎著「東南アジアを学ぼう」ちくまプリマー新書(2011)
*タイの成長は1985年のプラザ合意で日本の円高が容認されたことから日系企業が生産拠点を海外にうつつ動きが加速。さらにちょうどそのような時期にあたる1988年にタイのチャチャイ首相が「インドシナを戦場から市場へ」という有名なスローガンを掲げたのです。
*南北回廊は2つのルートから構成され、1つはタイのバンコクと雲南省のクンミンを結ぶルート、もう1つがクンミンからベトナムのハイフォンを結ぶルート。東西回廊は、ミャンマーのモーラミャインからタイ、ラオスを経由したベトナムのダナンに至るもので、インドシナ半島をほぼ東西に横断して東西両岸の港を結ぶものとなっている。
*アジア諸国と日本。経済的に先進した国として、積極的に支援の手を差し伸べる事も重要ですが、もはや日本が「親」でメコン圏が「子」であるような一方通行的な関係を構築する時代ではありません。アジア諸国の人々が日本から学ぶものも依然として存在しますが、逆に日本人がアジア諸国から学ぶべき事もたくさんあると思っています。その中でも重要なものの1つとして、「活気」と「変化」だと思います。アジア諸国の各地で見られる「活気」や「変化」は日本からはジョジョに失われてしまいました。よりよい生活をしたいという人々の素朴な意欲がこれらの活気や変化の根源にある事は間違い有りません。自らの目指す方向が定まらず倦怠感が漂う日本で生活する我々が忘れてしまった物を彼らはごく当たり前のように持っています。「百聞は一見にしかず」という言葉があります。是非自分の目で確かめる機会を持っていただければと強く願っています。 -
勉強になりました。
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東南アジアを旅した気分になります。
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「東南アジア」という言葉を聞いて、皆さんはどんな所を思い浮かべるでしょうか?(冒頭の一文)
鉄道が大好きな著者の心意義が伝わってくる。
局地経済圏のインフラを自身の体験と知識から解説してくれている。
わかりやすい入門書、但し、本当にインフラのみ。 -
2011/04/30