地域を豊かにする働き方: 被災地復興から見えてきたこと (ちくまプリマー新書 185)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (169ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480688873

作品紹介・あらすじ

震災により、私たちは「地域」をベースに暮らしていることが痛感された。しかし地域社会は、20世紀型の経済発展モデルに疲弊しきっている。本書は、国内外8000工場を踏査した「現場学者」が被災地を訪ね歩き、地域、そして自分自身が豊かになる働き方を考えた渾身のレポートである。

感想・レビュー・書評

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  • 震災後の地域の産業の復興への動き。コミュニティ、女性、自立精神、若い経営者、ネットワーク、地域への責任感、などキーワードが見えてくる。

  • 601-S
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  • ●地域を豊かにということなので、地域経済をうまく回すにはどういう施策がとられるべきなのかといった内容かと思ったが、震災復興に重きを置いた説明だった。

  • 「地域」の定義は、職・住が揃ったまとまりを持つ生活圏みたいなところを指すようだ。大合併前の人口3万人程度の市町村がイメージとか。自分は基本的に職と住が分離した都会暮らしなので、そこの「地域」のリアリティが微妙にピンと来ないのだよね。そういう人が日本の人口の半分くらいだろうか。

    ・大槌町の事例
    役場が流されたことが象徴的に報じられた町だが、岩手県でももっとも被害の割合がひどかった。人的被害が全人口の8.6%におよび、市街地の半分以上が浸水し、主力産業の水産加工業は設備をあらかた流され、湾岸は70cm地盤沈下した。もともと高齢化・人口減が進んでいた地域でもあり、「いったいどうするのだろう」と思ってしまうが、さまざまな復興事例が紹介される。

    小売とか飲食とかから先陣きって復興が進み、地域で暮らしていくためのインフラであるなと実感。また農林水産業を基盤として食品加工や観光をするみたいな六次産業の事例も紹介されるが、こちらは似たことをやる人が増えると競争厳しくて埋没しそうな懸念も感じる。

    「人材」の重要性が説かれる。社員にどんどん独立をさせるモノづくり中小企業。独立すれば3倍働くと。そうかもな。素晴らしい話ではある。地方で人材を育て、それを求めて企業が進出するようになればと。企業進出が人材育成につながれば好循環になるが。

    ・浪江町の事例
    原発隣接地で前町民が避難。東電からの補償金が職についたり事業をはじめるとその分減額されてしまう。難しいところだが補償金が避難民をスポイルしてしまう側面は否定できないような。うまい制度設計はできないものか。

    避難先(二本松市)で再開業しやすいのは建設運輸業ついで飲食業。飲食業は小売業みたいな在庫負担が少ないし、避難先のコミュニティを顧客にしやすいよう。あと布団屋さんの事例も。

    しかし町民離散の状況で事業再開をためらう人は当然多い。避難先の同業の商売を邪魔する懸念は、言い訳の側面はあるかもしれないが確かにあるだろう。特に高齢であるほど、これを機に商売をたたむのはやむをえないか。補償金もあるし。

    ・日立地区の事例
    機械系の中小企業の場合、食品加工業ほど地域との密着度はない。昔は系列との付き合いばかりだった。しかし最近の若手経営者は、系列頼みがきかなくなったせいもあるが地元志向が高まり、近隣の事業者で勉強会を立ち上げたりのネットワーキングが見られるようになった。

    それが震災できいて、ツイッターで呼びかけて精密水準器を全国から借りるような事例があった。さきざき、被災時の応援受注や従業員の引き受けなどにも広がるか。もちろん取引関係があるところ同士の支援も健在。



    近年、モノづくり系の中小企業では、従来に比べて独立するための初期投資がかなり大きなものになり、後継者不足による廃業が増えて、集積の厚みが失われつつある。かつては中古機械50万円で独立できたのが、今は初期投資1億円。

  • サンプラザ出てきてウケた(笑)
    復興について考えるきっかけになりそう。生徒に薦めたい。

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  • iPhoneが欲しい、オートバイが欲しい、要するに全国に流通する工業製品が欲しい、という欲望がある限りは、カネが欲しい、中央並みに欲しい、ということから脱することが出来ません。それは極端な二元論だとしても、昨今の地域礼賛型理論には、やはり中央とカネの交換をする、ということから抜け出られていないものが多いと思っていました。本書は、少し前に出版されたものですが、そういう視点ではなく、被災地復興、日本の地方工場という立場だからこそ出来ることは何か、ということに主眼が置かれています。僕は直接地域に対して仕事をしていないという、少し後ろめたい気持ちがいつもあるので、「地域」とか「自立」とかいう言葉が自分にとっての思考停止キーワードになりかねません。とはいえ、地域もやはり鎖国しているわけではないわけで。
    辺境からこそ見えるものがあるし、辺境だからこそ出来ることがある、と、綺麗事に見えるかもしれないけど、そういう感想を持ったのです。

  • 震災被害のみならず、津波被害や原発被害で、その名のとおり、ゼロからの再出発を余儀なくされた条件不利地域において、地域の事業がいかに再生し、地域における雇用がいかに取り戻されたのかについて、被災地でのフィールドワークと事業主らへの聞き取りにもとづくケーススタディが掲載されている。
    はじめのほうで取り上げられた事例が、マスメディア等でもよく取り上げられる事例であったこともあり、一時期読み進める意欲を失っていたのだが、あらためて続きを読み進めてみて、筆者のポイントがマスメディア等で報道されるいわゆる「社会起業」賛美とは異なることがわかった。
    タイトルにあるとおり、本書のポイントは、被災した条件不利地域が、その二重三重のハードルの中でいかに事業を再生したのかを丁寧に記述することで、少子高齢化を迎える日本社会においてあらためて「労働」「雇用」のありかたについて問題を提起し、その問題を解決するためのヒントを探ることにあったのだと思う。

    本書に置いてしめされるキーワードは、中小企業、企業の地域化、女性、若手経営者、地域外同業種・地域内異業種のネットワーク、地域への思いや責任感など。NPOや社会起業の意義なども、これらさまざまな企業との関わりのなかで位置づけていく必要があることを実感する。

  • 仕事をすべき一番熱い「現場」としての被災地にフォーカスしたレポートですが、講演で聴いた時のような関先生の熱さが伝わってこないのが残念。

  • 東日本大震災の被災地で、工夫を凝らして経済復興しているケースをレポート&考察した本。
    ちょっと傲慢な物言いかもしれないけれど、こういう事例に触れるとなんだか感動してしまう。

    深い洞察の詰まった良書。

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著者プロフィール

1948年富山県生まれ。成城大学大学院博士課程修了。東京都商工指導所、東京情報大学助教授、専修大学助教授、一橋大学教授を経て、2000年から一橋大学大学院教授。。主な著書に『現場発 ニッポン空洞化を超えて』『北東アジアの産業連携』『現場主義の知的生産法』などがある。1997年にサントリー学芸賞、1998年に大平正芳記念賞特別賞などを受賞。

「2009年 『キラリ!輝く元気企業』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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