チュ-バはうたう

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 200
感想 : 44
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480804112

感想・レビュー・書評

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  • ならば、私が、吹いてやる。
    印象的なフレーズがあちらこちらに散見できる。言葉の選び方とつなぎ方が素敵だ。とても清廉なお話。
    本書は3作品が収録されているが、やはり白眉はタイトル作の「チューバはうたう」。これはチューバのお話であって、チューバだけのお話にとどまらない。他人には説明のつけられない自身の欲求というか、抑えきれないエモーションの物語。途中、ちょっと理屈っぽい箇所が玉に瑕だけれど、それを補って余りあるクライマックスの躍動感!音楽物だけに、まさに言葉のオーケストラかくあらん。とても素敵だった。
    「飛天の瞳」「百万の星の孤独」は良作ではあるがちょっと作りすぎな印象が残る。残念。

  • せやねん、チューバやねん。
    重くて、目立たんくて、息が必要で、そんでもって、低音を支える楽器。

    著者が、チューバを好きなこと、
    そして、かつてのわたしがチューバを好きだったことを思い知らされました。

  • 表題作を含めて3つの短編集でした。チューバを吹く女性を主人公にした表題作は、実際に経験したことを書いてるんだろうなァ、と思いました。数ある楽器の中で、チューバ吹きを少数言語を学ぶ人に例えるところなど、あるある、と同感致しました。小生はホルン吹きですが、さしずめホルンはイタリア語あたりかなァ?
    百万の星の孤独も、いろんな人生を抱えた登場人物たちが緩く重なりながら展開していって、まるでそれぞれの人生を切り取って見せてくれているようでした。

  • 題名に惹かれた。表題作品の主人公がチューバをこよなく愛するのはよくわかるのだが、それがなんとも説明口調でまどろっこしく。いまいち楽しめない話でした。

  • 何年かぶりの再読。表題作のみ。音楽をするのではなく、チューバが吹きたい、という強い気持ちが、ブラスバンドにもオーケストラにも、その他のバンドにも所属することをよしとせず、多摩川の河川敷で一人チューバを吹いていた主人公。ある時、黒帽子のインディペンデントのクラリネット吹きに声をかけられその楽団に加わることになり...。ライブのシーンで、Spiel!(吹いて!)と言われて、チューバを渡され、吹きまくるシーンに胸が熱くなる。「あんたが往復チケットを買うか、片道チケットを買うかだ」と世界放浪の演奏旅行に誘われたこと、どうなったかは描かれなかったけど、きっと、日本を飛び出て、演奏旅行に加わるんだろうな、という予感を孕んだワクワク感。/セルヒオ・オルテガ、ビクトル・ハラ「不屈の民」、El pueblo unido jamas sera vencido 連帯する人民は決して打ち倒されない 聞いてみたい。

  • 面白い!三本の短編で構成されている本であるが、一つ一つが読み応えがあり楽しく読ませてもらった。
    そうだよ!音楽は理屈じゃないのだと、主人公に共感していました。

  • 3編で構成されている本ですが、タイトルの「チューバはうたう」しか読み切れませんでした。(あと2編は興味を削ぐものでしたので)。
    そのことを差し引いても高評価な一冊でした。
    花形楽器以外を手にするすべての人の心の中を、すっきりと気持ちよく代弁してくれているような話で、読後がとても爽快でした。

  •  3つの短編からなる小説。最後の物語もいいが、やはり最初の二つが個人的には好き。思わず楽器を引っ張り出して演奏したり、あるいは大声でも鼻歌程度でも何か歌ってみたり、音楽をやってみたい気分にさせられた。
     チューバという、ある種マイナーでユーモラスな形状の楽器が、あるいは南洋の観光地のいかがわしいバンドが放つ音が、突然嵐のように襲い掛かってくる。チューバを愛しながら人生の岐路に立つ女性に、そしてハッタリに満ちた波乱の人生を歩んできた病床の老人に。それが最終的にどういう結末を迎えるのかはわからない。ただ一瞬の風のように、過去の思い出や未来への不安を今だけは跡形もなく吹き飛ばしてしまう音楽の力を感じさせずにはいられない。その力は読者にも追い風となって、エネルギーをもらった気分になる。
     淡々として、時に理屈っぽい文体なのだが、逆にそれも音楽の力を描写するための計算なのかもしれないな。傑作。
     

  • 文体的にはやや読みにくい、かな。区切りが中々見え難い。
    矢張り改行って大事ですね。
    でも凄いチューバが好きなのは上手く説明でき無いと言うのは伝わってきましたし、ちびで小太りな先輩がお気に入りだったんですけども、記憶の中の人でしかないのが残念だったなあ。
    あと、プラネタリウム!プラネタリウム見に行きたくなりました!!!

  • 表題作含め3編の短編集。
    わたしも学生時代6年間チューバをやっていたので、ただならぬ興味を感じて読んでみた。この表題作の主人公は自分で楽器を購入してひとりで吹くというすごいスタイルを貫き通していて、なんかもう色々すごいと思った。マジでかいんだよチューバ。
    主人公の人生の中ではあまり重きを置かれていない様子の恋人が、微妙に勘どころを外しつつも主人公の音楽人生の原点とも言えるバンドの来日演奏会に連れて行ってくれ、その様子が山場。楽器吹きなら一度は体験してみたい、昇天するようなカタルシス。いいなあ。羨ましくなった。
    初めて読んだ作家さんだったけど、他二篇も面白かった。どれも淡々としてはいるけど、静かな興奮を感じることができる感じ。

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著者プロフィール

瀬川 深(せがわ しん)
1974年、岩手県盛岡市生まれの小説家、医師。イェール大学に研究の職位を得て渡米し、アメリカに在住している。栃木県立宇都宮高等学校、東京医科歯科大学医学部卒業。
2007年、「mit Tuba」で第23回太宰治賞を受賞、受賞作を含めた作品集『チューバはうたう』で単行本デビュー。以降、『ミサキラヂオ』『我らが祖母は歌う』『ゲノムの国の恋人』といった著作を刊行。

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