できない相談 (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房
3.27
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本棚登録 : 1356
感想 : 157
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480804907

感想・レビュー・書評

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  • ◎ ブクログ - 夏のオンライン特別座談会 ◎

    『読書の夏、近所の夏(汗)に、森絵都さんの「できない相談」を語ろうでちょんまげ?』

    司会: 皆様、接続具合はいかがでしょうか。今日はオンライン特別座談会にご協力いただきありがとうございます。
    さて代: あの〜、音声のみでいいですよね。今日スッピンなんで。
    司会: はい、もちろんです。それは”できる相談”です。では、早速ですが、字数が長くなりすぎると読者の皆さんに読み飛ばされてしまうので、いきなり本題に入らせていただきます。今日は森絵都さんの短編集「できない相談」でどのお話が気に入られたかをお話いただきたいと思います。結果は森絵都さんご本人にオンラインで読んでいただけると思います。では、横浜市中区にお住まいの さて夫さんから、お願いします。
    さて夫: どうも、さて夫です。オレ、普段、本なんてあんまり読まないんでどうしようかと思ったんだけど、これ面白いっすね。一冊に短い話が38もあって、まるでコントを聞く感じだなって。
    司会: どの短編が気に入られましたか?
    さて夫: そうっすねぇ。〈破局の理由は…〉ってやつかなあ。『日本有数のお嬢様大学に通う学生の中でもとりわけ有数のお嬢様である巨大財閥のご令嬢、翠川ひめ乃さんが恋人の椿山天彦さんと破局した』ってことで『その電撃スクープに大学は激震した』って大騒ぎになるんだよね。そんで、ひめ乃に学生が囲み取材をしていくんだ。なんだかやたら大袈裟だけどさ。椿山ってのが『ゴルフ界の福山雅治』って呼ばれててさ、『ゴルフ界の福山ロス』現象ってことで大騒ぎ。この短編は元々2016年から連載されてたのをまとめたものなんだけど、福山さんが結婚したあと『福山ロス』って言葉流行ったよね。森絵都さんも悪ノリだよね。
    司会: さて夫さんも大学生ですが、学生さんの気持ちが分かりましたか?
    さて夫: 真面目な奴らなんだよね。『納得のいく理由を』『価値観の違いでございましょうか』『答えになっていません』『私自身の狭量さこそ責められるべきものでございます』って、なんだかひめ乃を追い詰めて、オレ、可哀想になっちゃったよ。
    司会: それで、さて夫さんはどんなところに魅かれましたか。
    さて夫: やっぱ結末だよね。オチっていうか。たったの二行なんだけどさ。すんごい説得力なんだよね。二行で一気に落とすって感じ。最後にひめ乃がこう答えるんだ。『椿山天彦さんの愛…』
    司会: あーーーっ!、ダ、ダメです。ネタバレになるじゃないですか。
    さて夫: えっ、そうなの。いいじゃん。オレたちの他に誰もいないし。
    司会: 座談会だからブクログに載るんですよ。ネタバレに厳しい読者の方もいらっしゃるので…。
    さて夫: そうなんだ。すんません。気をつけます。

    司会: では次に千葉県鴨川市にお住まいのさて穂さん、お願いします。
    さて穂: さて穂でーす。OLしてまーす。森さんの作品大好きなんで、まだ文庫が出てないこの本をタダで読めて良かったです。どうもです。
    司会: は、はい。どの短編が気に入られましたか?
    さて穂: 〈ヒデちゃんの当たり棒〉かな。小学三年生のときに幼なじみのヒデちゃんと一緒にアイスを食べたっていう思い出話から始まるんです。アイスの棒に何か書いてあるっていうアレ、知ってますか?
    さて夫: 当たりとか、ハズレとかってやつだろ。オレ、前にあるんだ当たったこと。なんだか嬉しくてさ。
    さて穂: そうなんだ。この短編では『ヒデちゃんは当たり、自分は外れた』と明暗が分かれたの。そして、そんな主人公が『泣きそうな顔』をしていたら、『チッ、こんなんで運を使っちゃったよ』ってヒデちゃんが舌打ちしたんだって。
    さて夫: そのヒデちゃんってやつが?生意気だな。ヒデえやつだ。
    さて穂: (シーン)
    さて夫: あれ、あれ、すべっちゃったよぉ。
    司会: さて夫さんて大学生ですよね。オヤジギャグはまだ早すぎると思いますよ。
    さて夫: すんません。ダメだな。オンラインって空気読めないからさ、オレ、キライなんだよね。
    司会: ゴホン。さて穂さん続けてください。
    さて穂: はい。それで主人公は『アイスの当たりを「こんなん」と見下せるヒデちゃんと、見上げてやまない自分』と二人を比較して嘆いてしまうの。『そこには埋めがたい溝があり、越えがたい谷があった』とか、このあたりの表現の使い方って”森絵都さん節”だって思うのよね。ファンとしては。ふざけたシーンをやたら真面目な文章で理詰めに攻めていく感じ。私、これたまらない。
    司会: 主人公のその後はどうなんですか。
    さて穂: 『その後の彼の人生は大当たりとは無縁のつましいもの』っていう感じで『そこそこの大学』に入って『そこそこの勤め先』に勤めて、全て『そこそこ』の人生を送るの。そして、やっぱり『間一髪で犬の糞を避けた人』とかが『あーあ、これで今日一日の運は使いはたした!』とか言ってるのを聞くと、『どいつもこいつも、なぜに目の前の幸運を素直にありがたがらないのか』って苛立っていくのよね。
    さて夫: オレは素直に嬉しかったけどね。それで結末はどうなるの?
    さて穂: 結末はね、そんな主人公も最後にね、『古希に達した今年、彼が…』
    司会: だ、だーーーーーめ!って言ってるでしょう。”ネタバレは食べ物の恨みより怖い”って世間で言われてるのを知らないんですか?
    さて夫: 知らねー。何、それ?
    さて穂: 知らなーい!あなた、神経質すぎるんじゃないですか。うざいよ、いい加減。鴨川シーワールドでシャチに水をかけられちゃえばいいのに。
    さて夫: 中華街、QQ屋台屋のかき氷もマンゴーがたっぷりかかっていて美味しいぞって関係ないか。
    司会: 夏だから水でも氷でもなんでもいいんですけどね。ネタバレすると、もう司会で雇ってもらえなくなるんですよ。やめてくださいよ。それにこんなことやってるから、どんどん長くなって、もう他のレビューに行ってしまった人もいると思いますよ。皆さん、そんなに暇じゃないんですから。脱線しすぎです。
    さて夫・さて穂: すみません。大人しくしてまーす。

    司会: じゃあ、行数がヤバくなってきたので最後。お住まい非公表のさてさてさん、上手く決めてくださいね。
    さてさて: はい、トリを務めます、さてさてです。皆さん、こんにちは!私は先日読んだ森さんの傑作「ラン」にあまりにも感激して、森絵都さんに一生ついていくことに決めたんです。この座談会企画、そんな森さんに読んでもらえるってことなので頑張ります。
    司会: よ、よろしくお願いします。そんな さてさてさんはどの短編がお気に入りでしょうか?
    さてさて: 正直なところ38編もあって迷いましたね。どれもこれも数ページなのに起承転結が見事で、最後にキチンとオチが入っているのがすごいなって。あと、先程、さて穂さんが言ってたように、”森絵都さん節”という感じで、本来笑う箇所で大真面目に畳み掛けていく展開がたくさん出てくるんですよね。これ、たまらないと思いました。
    さて穂: さてさてさんも同じ感想で嬉しいです♡
    司会: すみません、行数がないので簡潔にお願いします。
    さてさて: すみません。ダメなんですよね。私のレビューはいつも長くなってしまって。いつも読んでくださってる皆さんにはこの場を借りて改めて御礼申し上げます m(_ _)m
    さて穂: 私、さてさてさんのフォローをさせていただいてるんですけど、あの長文ってパソコンで打ってらっしゃるんですよね?
    さてさて: さて穂さん、いつも”いいね!”をありがとうございます。実は私のレビューは全部スマホでの打ち込みなんです。
    さて穂: えっ、ウソ、絶句なんですけど。あんな字数とても打つ気にならない…。
    さてさて: 実はそうなんです。
    司会: いや、そうではなくて、ここはプライベートな会話をする場ではないので。早く進めていただけませんか。
    さてさて: ごめんなさい。フォロワーの方と話ができるとは思わなかったので、つい興奮してしまいました。すみません。えっと、短編、好きな短編。あっ、〈2LDKの攻防〉、これですね。2LDKの部屋に暮らす共働きの夫婦が出てくるお話です。『浩美は日曜日の午後に必ず念入りな掃除をする』というのが奥さん。『念には念とばかりに掃除機のヘッドを部屋から部屋へ』と掃除をするんですが『唯一、夫である晋一の書斎を例外として』というなんだか訳ありの夫婦なんですよね。そのきっかけが十年前の結婚直後に『晋一がビールを片手に書斎で島耕作シリーズの最新刊を読んでいる』時に『けたたましい轟音とともに乱入してきた』と書斎を掃除しようとした妻に『土足で聖域を踏みちらかされた気がした。人権を蹂躙された気さえした』とこれまた”森絵都さん節”で大袈裟な表現なんですが『せっかくの休日に、なんだよ』って言ってしまったんですよね。旦那さん。
    さて夫: 強いなー、旦那さん。奥さん、怖くないのかな。
    さてさて: いやいや。すぐに『いや、その…あとで、自分でかけるから』とモニョモニョごまかしたんですけどね。でもそれ以降書斎だけは10年間ずっと掃除してもらえなくなったんです。
    さて夫: だよね。そんなに甘くないよ。
    さて穂: でもおかしいよ。共働きなんでしょ。どうして奥さんだけ働くのよ。旦那も働けって感じしない?
    さてさて: それは同感。でも大丈夫。そんな夫も『晋一が向かったのはベランダだ。いつから洗濯が自分の分担になったのかとふと疑問に思う』と旦那は洗濯担当だってことがわかる。
    さて穂: なんだ、分担してるんだったら、いいわ。それで、その話ってオチがあるんですか?結末はどうなるんですか?
    さてさて: はい、これが上手いんです。そんな洗濯担当の旦那さんがベランダから書斎に戻ったあと、『リビングの裕美は広げていた雑…』
    司会: わわわわわぁーーーーーーーーーーっ!ストップー!だから…。
    さてさて: ハイハイ。ネタバレはダメなんでしょ。分かってますって。”ネタバレと二度漬けは禁止ですからー!”
    さて夫: おおおおおっ!有名な さてさてさん特許申請予定の決めゼリフ登場!
    さて穂: 生で聞けたなんて幸せ!生きてて良かった!
    さてさて: ど、どうも。お二人とも私のレビューをよく読んでくださってるんですね。ありがとうございます。
    さて穂: ひさしぶりに聞けて幸せです。そう、さてさてさんのサインが欲しかったんです。お願いできますか。
    司会: いい加減にしてください。これはプライベートな場ではない、って言ってるでしょ。
    さてさて: さて穂さん、じゃあ後で。ところで、司会さん、今日のこの座談会ですが、森絵都さんに確実に読んでもらえるんですよね。
    司会: いや、その、なんというか。
    さてさて: えっ、まさかここまで引っ張って嘘だとか言うんじゃないでしょうね。
    司会: いや、あの、その、確実に、と言うか、なんというか。(…ブクログのレビューに載れば、もしかしたら森絵都さんが見てくれるかもしれない、なんて今更言えそうにない、ヤバイなぁ…)
    さて夫: なに、モニョモニョ言ってんだよ。
    さて穂: そうよ。森絵都さんに私の気持ちが伝わったらと思って時間作ったんだから。
    さてさて: 約束してくれるんですよね。司会さん!

    司会: そ、そ、そ、それはー!「できない相談」です。

    一同: orz orz orz

    • 5552さん
      さてさてさん、こんばんは。
      さてさてさんのレビューを拝見して、何年かぶりに森絵都さんの小説を読みました。
      面白かったです。
      皮肉っぽい...
      さてさてさん、こんばんは。
      さてさてさんのレビューを拝見して、何年かぶりに森絵都さんの小説を読みました。
      面白かったです。
      皮肉っぽいものが多いですよね。意外でした。

      森さんにさてさてさんのレビューの熱意が伝わっていたら良いですね。
      2020/08/26
  • 森絵都さんっぽくない短編集。
    その人なりのちょっとした抵抗やこだわりがテーマになっていて、プッと笑えるような面白さがあった。
    一つ一つがすごく短いので、あっという間に読めた。

  • こんなに小さな本で

    面白い話が38編も楽しめて

    とても得した気分。

  • 面白過ぎるよ、森絵都さん、、、
    絵都さんの長編はいくつも読んできたけれど
    こんな変化球が隠されていたとは。

    そうそうなのよ、、、、鮨くらい好きに食べさせろとか、芸能人の不倫にいちいち騒ぐんじゃねぇとか、
    PCのくせに勝手に自動更新するな(笑)とか
    どうでもいいことだからこそ、気にせずにはいられない出来事が世の中には山ほどある。
    もしかしたら自分しか感じていないのでは?
    と思っていた小さな違和感が、共有され
    急にスポットライトを浴びた感じの短編の数々。
    どれをとっても飛び切り面白い。
    おすすめです。

  • 読みながら、昔読んだ『ショートトリップ』を思い出して懐かしくなった。もう10年以上前のことだし内容も覚えていないけれど、文庫版をお風呂に入りながら読んで楽しんだことは覚えている。

    表紙のイメージも似ている。『ショートトリップ』は黒い表紙に白い線のイラストだったけど、こちらの本は白い表紙に鉛筆らしい優しい黒線。
    もしかして!と思って調べたら、同じ人がイラストを担当していた。なんだか嬉しい。

    今回は日常の小さな抵抗のお話。ゆっくりペースで少しずつ読んだ。色々なNo!があって面白い。森絵都さんのショートショート、好きだな。いつかまた森さんの新しいショートショート作品を読みたい。その時には今日のことを思い出すのかな。

    図書館の本なので、以前のようにお風呂では読めないけど(笑)
    文庫版が出たら買って『ショートトリップ』の隣にそっと並べておきたい。

  • サクサク読めて、とても面白かった。
    普通によくあるような話のようで、それぞれの感じ方の違いで通じあえてないというか。

    自分の気持ちを折れない感じ。

    傘の話だけ、よくわからなかった。


  • ショートショートストーリー。
    設定も主人公もバラバラの2〜3ページの本当に短い話だけど、読み応えは充分。
    読書感想文の話は特に面白かった!

  • お名前は見たことのある森絵都さん。狭量な私の勝手な印象としては「ほんわか女子向き」「ゆるめ」「日常系か恋愛系」「小川糸さん的」「かわいらしい」など。そんな著作を初めて手に取ってみた。ちょい息抜きがてら。

    やっぱり思い込みってのは覆されるもので、印象が変わった。これは38編からなる短編集。ってかエッセイじゃないかな。どの話も、分かる分かる!と共感の嵐。そしてクスっと笑えるエッセンス。ライブの退場、読書感想文、パソコンの進化、満場一致?などなど著者の言いたいことが盛りだくさん。短いのにオチがあってユニークで、皮肉があったり。

    でもまぁかわいい印象は合ってたか。(笑)

  • ごくごく短いおはなしがたくさん入った短編集
    そのどれもが「これはしない」物語
    意地かもしれない、こだわりかもしれない
    いや、これは正当な理由だからかも

    どう読むかは読み手次第

    あるあるわかる
    すればいいのに

    両方味わえる日常のお話たち


  • 38篇の作品!
    ショートショートです。

    誰にでもありそうな、ちょっとした譲れない部分。
    シニカルなピリッと効いたところがあって、どれも面白かったです。
    これまでに読んだ森絵都さんの本と感じが違いましたが、とにかくたくさんのミニストーリーがあるので、きっとおもしろい!と思う作品もあるはず。

    ブラックでもなく、嫌味でもなく、ちょっとニヤリと出来たり、共感出来たり。
    通勤にピッタリな一冊です。

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著者プロフィール

森 絵都(もり・えと):1968年生まれ。90年『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞し、デビュー。95年『宇宙のみなしご』で野間児童文芸新人賞及び産経児童出版文化賞ニッポン放送賞、98年『つきのふね』で野間児童文芸賞、99年『カラフル』で産経児童出版文化賞、2003年『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞、06年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞、17年『みかづき』で中央公論文芸賞等受賞。『この女』『クラスメイツ』『出会いなおし』『カザアナ』『あしたのことば』『生まれかわりのポオ』他著作多数。

「2023年 『できない相談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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