変半身(かわりみ) (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房
3.26
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480804914

作品紹介・あらすじ

その島はすべてを狂わせる――。演劇界の鬼才と練り上げた世界観を基に、人間が変わり世界が変わりゆく悪夢的現実の圧倒的甘美さを描いた村田沙耶香の新境地!

感想・レビュー・書評

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  • ポーポーポーポーポーポーポーポーポーポーポーポーポーポーポーポーポーポーポー

    あの見開き1ページを見た時は
    鳥肌が立った。

    ポピ原人やらポーポー様やら
    ポーポ、ポハピピンポボピア星人など、
    村田沙耶香は「ポ」が好きなのだろうか。
    でも、確かに「ポ」には少し魅力を感じてしまう。


    変半身を読んで、ハッとした。
    私も洗脳されているのかもしれないと。
    私だって家畜だ。

    いや、
    人間より家畜の方が綺麗か。


    満潮を読んだということを
    誰かに知られたら、かなりまずい。

    この、文章を
    真面目に語っている感じが
    気持ち悪い。


    でも、読む手は止まらなかった。

  • 僕がこよなく愛する村田沙耶香の最新刊『変半身』を読みましたよ。
    非常に興味深く読ませていただきました。
    この新刊『変半身』は『変半身』『満潮』の中編2編で構成されています。
    特に僕は『変半身』が好きですね。

    僕の村田沙耶香歴と言えば『コンビニ人間』から始まって『消滅世界』、そして処女作の『授乳』『マウス』『ギンイロノウタ』『星が吸う水』『ハコブネ』『タダイマトビラ』と上梓順に読み進めてきたのですが、未読の『しろいろの街の、その骨の体温の』『殺人出産』『地球星人』『生命式』の4冊をすっ飛ばして、この最新刊に手を出してしまいました(笑)。通算すると本作は僕にとっては9作目となる村田沙耶香作品になりますね。

    本書に収録されている『変半身』はさすがに「クレイジー沙耶香」の最新刊ということもあって、キレッキレです。そしてカップリングの『満潮』は村田沙耶香得意の男女の『性』についてがテーマですが、またもや誰も考えつかないような視点から物語を展開させていきます。

    それぞれについてのレビューです。
    『変半身』
    「…ついに人間終了…」
    これが本書『変半身』を読み終わった後に僕の口から出た最初の言葉ですね。本書は、村田沙耶香が「『家族』の究極最終形態」を描き切り、2012年の三島由紀夫賞を惜しくも逃した怪作『タダイマトビラ』の別バージョン、あるいはスピンオフ版と言ってしまっても良いのではないでしょうか。
    『タダイマトビラ』が「狂気」に振りきった作品だとしたら『変半身』は、世間に騙され続ける人々の姿の究極の「滑稽さ」を描き切った作品だと思います。両極端に分かれている2冊ですが、どちらも方向や道筋は違っていても、究極の到達点は同じ場所だということですね。
    そのことを如実に示すヒントが本書には隠されています。
    『タダイマトビラ』で象徴的に描かれた交換し続けられる『蟻』の『アリス』が本書でも成功者の妻を演じ続けさせられる主人公・陸(リク)のペット(?)としてひっそりと登場しているのです。
    ここには重要なメッセージが隠されていると言って良いのではないでしょうか。
    『タダイマトビラ』を未読の方は、本書を読む前でも後でもいいので、ぜひ読んでみて欲しいと思います。
    『タダイマトビラ』に登場した「アリス」を飼う美女・渚さんの家に集まる女の子たちの中に、本書の主人公・陸がいたのかと思うとちょっと胸熱です。

    『満潮』
    『満潮』は、村田沙耶香の過去の作品で『女性の性』をテーマとした『ハコブネ』や『星の吸う水』と同じ系列のお話ですが、今回は女性の性だけでなく、主人公の夫が男性としての『性』にこだわっているお話です。
    しかも、この夫は「男性も『潮』を吹くことができる」と主張し、日々、浴室にこもって「『潮』を吹くため」に努力する情景が真摯に描かれています。
    男の僕が言うのもなんですが、この夫が実際に何をしたいのか訳が分かりません(笑)。
    しかしながら、主人公の夫婦ふたりが協力してなにかに打ち込む姿は、なんとなく「ああ、そういうものなのだろうな」と読まされてしまうのです。
    村田沙耶香恐るべしですね。

    以上が、本書『変半身』のレビューですが、『変半身』『満潮』の2編どちらも村田沙耶香ファンをうならせる珠玉の2編だと思います。

  • なんか、すごい作品でした笑
    人間は信仰なしでは生きられず、歴史や伝統、世の中のルールなどもすべて誰かに創作された宗教のようなもので、途中でそれがごっそり変わったとしても、人間は何の疑問も持たず受け入れて生きてく皮肉な生き物である、そんなメッセージ性を感じました。
    ただ、作品の設定、展開が村田沙耶香ワールド全開で、特に後半の『満潮』は世界観が全力ダッシュすぎて追いつけず、ぶっ飛び具合に笑ってしまいました。
    でも読んでる間は独特な世界感に浸ることもでき、読後感もあり良い読書体験でした!

  • 近未来の千久世島。そこには太古から受け継がれてきたポピ原人とポーポー様の伝説があった。
    年に一度おこなわれる祭り"モドリ"では、14歳になる男女が集められ、ポーポー様に生贄を捧げるための怪しげな儀式がおこなわれる。
    同じ中学校で美術部員の陸と花蓮と高城くんの3人も選ばれ、祭りの当日を迎えるが、そこで目にしたのは……。

    というのが表題作「変半身」。「満潮」も村田さんらしくてとても面白かったけど、今回はダントツでこっちが良かった。
    度肝を抜かれるほど狂っていて、小説はかくも自由なものなのかと喜びに天を仰ぎたくなる。
    いや、狂っているのはこの話を狂っていると感じる私たちの方なのかもしれないが。

    >たとえば体の中にびっしり蜘蛛がいて、指から出てくるのはその体液だったら?身の回りのもの何もかもが信じられなくなってきた。マグロと言われて皿に載っている物体。でも、本当に?井戸水だと言って飲んでいる水。でも、本当に?窓の外に月と海が見える。でも、本当に?

    島民から、地域振興の敏腕プロデューサーと尊敬される榊が、あっという間に島からポーポー様とポピ原人を捨てて新しい歴史と観光をつくってしまったように、私たちは常に何かに騙されているのかもしれない。誰かの手によってつくられたものを、ただ無垢に信じている。

    >「真実を飲み込め!」子供に向かって私は叫んだ。
     「真実「っぽいもの」を飲み込め!世界中の詐欺師に騙されろ!」

    >「みんな、自分に都合のいい嘘を信じるんだ。人間ってそういう仕組みなのかな」
     「そうかもね。新しい真実を信じるとき、人間の頭はクラッシュする。その瞬間だけが、本当に「無」になれるときなのよ。次の瞬間には、新しい信仰が始まってしまうんだから」

    >「伊波が言うみたいに、なにも信じずに生きていくことができるって、本当に思う?信じないことを信じているだけだろ?なにも信仰しないで生きていくことなんてできないんだ、僕らは」

    信仰の入れ物。遺伝子の家畜。
    自分が人間であると思わされ信じ込んでいる私たちは、ただの"人間教"。ただの信者。
    でも少なくともこの小説を読んだ私の頭は今も心地よくクラッシュしたままだ。何かを信じながらでしか生きられないとしても、私はその信仰そのものを疑うことをやめたくない。何度も何度も信じて疑って壊して信じ直してをくりかえして、そうして生きていきたい。
    私が小説を執拗に求め読み続けているのも、そういう脳内麻薬のようなクラッシュを欲しているからなのかもしれない。

  • その島はすべてを狂わせる…
    人間が変わり世界が変わりゆく悪夢的現実の圧倒的甘美さを描く…

    今まで読んだ村田沙耶香作品で一番個性的でした。想像の斜め上を行くストーリーは理解が追いついていない自覚があるのに読む手を止められない。読後感は不思議な混乱。

  • 狂っている。奇書。
    信仰の対象や信仰のための行為を理解できない外の人間には狂気としか思えない。
    でも誰しもが何かを信じている。私が正しいと信じていることも、理解できない外の人間には狂気に見えるのだろうか。

    生半可な気持ちで手を出してはいけない本。理解できない狂気は読んでいてところどころ気持ちが悪くなる。

    読後この話を他者に説明すると、自分の頭がおかしいんじゃないかって思えてくる。なんだよポピ族って。なんだよポーポー様って。笑わずに説明できるか。でもこの作品の登場人物たちは真剣なんだよ。

  • 拝啓

    いつも村田先生には、我々に息づく何らかの常識・価値観を破壊して頂き、感謝しております。

    今回は「文化と慣習」。ありがたく概念粉砕を拝受しました。

    同録の『満潮』。性への真摯に感銘いたしました。

    今後ともよろしポーポーポー

    敬具

  • 「変半身 KAWARIMI」 村田沙耶香(著)

    2019 11/25 (株)筑摩書房

    2019 12/25 読了

    現在
    村田沙耶香強化週間です^^;

    この世界で自分の事を本当に理解出来るのは
    自分しかいないはずなのに

    人は共感したがる。

    正直で純粋で傷ついている女性に

    無理しないで、もっと自分を大切にして。

    と村田沙耶香はメッセージを送り続けているのかもしれない。

  • 表題作と「満潮」の中編2編収録。まずは「変半身(かわりみ)」千久世島という離島で生まれ育った14歳の少女・陸と親友の花蓮。島にはポーポー様という神様とポピ原人というものの伝説がある。山のもんと海のもんは仲が悪い。年に一度のポーポー祭りの最終日には「モドリ」という秘祭があり、参加できるのは14歳から。陸たちはこの祭りに今年から参加することになっているが…。

    序盤は、映画『ミッドサマー』的な、閉ざされた集落の秘密の儀式の話かなーとワクワクしながら読み始めたのだけど、まあ、短いスパンで二転三転四転と、どんでん返しが繰り返され、思いがけない着地点にびっくり。ほえー。

    着想としてはとても面白いと思う。普通に現実世界でもうさんくさいプロデューサーという肩書、実際冗談抜きでこういうことしてる人いそうだし。それにしても秘祭のネタばらしは悪趣味だなあ。登場人物たちが腹を立ててくれているからまだマシだったけど。

    ものすごくスピーディーに展開するので、それほどねちっこい不快感なく読み終えられた反面、あまりにもテンポが速すぎてダイジェスト版みたいな印象も受けた。もっとじっくり長編として書いても面白い題材だったんじゃなかろうか。とか言いつつ、これが大真面目な長編だったら、途中で投げ出しちゃう可能性大だけど(苦笑)

    「満潮」のほうは、『星が吸う水』や『ハコブネ』の系譜の作品だったように思う。どちらも性行為が楽しくないがゆえに結婚した夫婦。突然大真面目に「潮を噴きたい」と言い出す夫。二人の潮談義は、できれば明るく笑って読むのが正解だろう。性の話は薄暗いところに隠さず、陽気に処理したほうがきっと良い。なのでラストは結構前向き。

  • 『僕たちはそういう生き物なんだ。信仰の入れ物なんだ。そういう風に作られてる。僕たちは遺伝子の家畜なんだよ』―『変半身』

    このところ村田沙耶香を立て続けに読んでいる。その中で表題作は少しだけ毛色の変わった作品という印象を受ける。他の作品に比べて、ほんの少しだが、中立的な立場から書いているように見えるからだ。あるいは学術的、と言ってもいいのかも知れないが、理解してもらいたいという気持ちが他の作品に比べて強いように思う。

    とはいえ主張(?)していることそのものは他の作品と大きな違いがある訳ではない。他人が当たり前と思っていることは本当に当たり前のことなのか、という疑義の提示。ファンタジーを描いているつもりはないのだろうな、ということは伝わってくるけれど、相変わらず言葉の描く先が普通の人々が想定している範囲から逸脱するのでディストピア風の世界が立ち上がる。けれど、その妙な律儀さとでも言ったら良いような態度と主張していることの常識からの乖離が諧謔的で面白い。繰り返すけれど、もちろんそれを意図している訳ではないだろうとは思う。

    『夢の中で、私は下半身を洗濯機に入れて立っていた。洗濯機の水がぐるぐる回転し、泡に包まれているうちに爪先が心地よい痺れに包まれ、這い上がってきた快楽が脚の間でぱちんと破裂した』―『満潮』

    村田沙耶香の多くの作品はどこか性的な感覚に通じるものがあるように思うが、これほどに直接的な表現で埋め尽くされているものは初めて読む。性的と言えば淫靡なものを想像しがちだが、淫靡さとは正反対であり、かと言って伊藤比呂美のようなあっけらかんとした性の解放的表現とも違う。語られていることは性的であり具体的でありながら、場違いな言明であるかのように俯瞰的なのだ。この作家の思い描く性はジェンダーという狭い枠を常に超えていて、いわゆる官能小説のように一方の立場から他方を貶めて性を描くことがないからこのような雰囲気になるのかも知れない、などとぼんやりと考えてみる。とはいえ、どこか正体不明なものを頭の中だけで解決しようと試みているような印象もまたつきまとうのではあるけれど。

    松岡正剛との対談で、村田沙耶香は性に対する目覚めは早かった、と述べている。そして、身体的な目覚めが知識による刷り込みに先行していたためか、後年映像などで覚えた興奮がどこか後付けのように感じる、とも言っている。その為か、肉体的なものに対しては肯定的で、羞恥心を覚えるようなものとは思っていない、とも。これは淫靡という言葉が醸し出す「隠されたものを想像して感じる」類の興奮が、身体主導の自然な興奮とは異なり、「大人の」知識によって整理あるいは強制されたものであるということを訴えているのかも知れない。もしかすると、彼女はその自身の身体感覚と世間一般の性的なものに対する暗黙の了解のずれを違和感として作品に還元しているのか。どこか危うさを感じる作家であることを再認識する。

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著者プロフィール

村田沙耶香(むらた・さやか)
1979年千葉県生れ。玉川大学文学部卒業。2003年『授乳』で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)を受賞しデビュー。09年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島由紀夫賞、16年「コンビニ人間」で芥川賞を受賞。その他の作品に『殺人出産』、『消滅世界』、『地球星人』、『丸の内魔法少女ミラクリーナ』などがある。

「2021年 『変半身(かわりみ)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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