文庫旅館で待つ本は (単行本 --)

著者 :
  • 筑摩書房
3.75
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本棚登録 : 748
感想 : 44
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480805133

作品紹介・あらすじ

戦前から続く老舗旅館・凧屋の名物は、様々な古書が揃った文庫=図書コレクション。若女将が書棚から選ぶ「あなたと同じにおい」の一冊が人生を動かす――。

感想・レビュー・書評

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  • 戦前から続く老舗旅館・凧屋の名物は、様々な古書が揃った文庫があること。
    そこの若女将は、本のにおいに敏感すぎて、ただの一冊も読み通せたことがことがないが、客には同じにおいのする書物を勧める。
    大抵の客はその書物を読むことで、抱えていた思いの出口を見つけ、喜んでくれる。

    不思議な感覚でもあるが、今の自分にはどんな本をすすめてくれるのだろうか?と思ったりした。
    確かにその時々で影響を受ける書物があるかもしれない。
    この物語も悩みを抱える人に寄り添い、心が晴れるような書物をすすめている。
    しかし、最後の五冊目は若女将の人生にまで関係する内容だったのに驚くとともに、ときおり祖母が出てきていたのに納得できた。

    ーーー祖母は小説が好きで、作り話のなかにときどき覗く本当を探してる。ーーー

    私も小説を読んでは、そのなかに自分と共感するものを探しているのかもしれない。



    一冊目〜川端康成『むすめごころ』

    小学校からの腐れ縁の三人の恋愛事情…葉介の普通じゃないは、今、みんなにとって案外普通かも。


    二冊目〜横光利一『春は馬車に乗って』

    則子は、長年夫婦を続けてきたが夫と過ごす毎日に疲れ果てていた。そして夫をちっとも愛していないことに気づいた。


    三冊目〜志賀直哉『小僧の神様』

    亡き妹が遺した息子の母となったが、彼の個性に何度も振り回される。あの子を引き取らない選択をした親族より、あの子を虐待していた妹夫婦より、一番あの子を傷つけてしまうのではと思う。
    自分を放り出したりせず、寄り添ってくれているのは伝わってると…


    四冊目〜芥川龍之介『藪の中』

    卒塾旅行で四人の少年たちの引率で来たのは塾長の息子。
    彼らと塾長の溝は何故⁇その真相がわかったとき。
    真実は人の数だけある。


    五冊目〜夏目漱石『こころ』

    2回目の来訪となる葉介と一緒に葉介の父親が『こころ』を寄贈しようと持ってきたのだが、それは海老澤文庫にあるべき同じ蔵書印のあるもので…。


  • 最近、ブックホテルや書店に宿泊とか、わたしにとっては夢のような場所がある。
    いつか泊まってみたいと思う。
    まずはそれを、本で体験!!
    この作家さんの本を読むのは、二冊目。
    凧屋旅館には、読書スペースがあり、宿泊中本が貸してもらえる。
    若女将は、その人にあった本を、本の匂いとお客様の匂いで選ぶ。
    若女将から渡された本を読んだお客様が悩みを解決して日常に帰っていく。

    なかなか読み進めない。
    そういえば、前もそうだった。
    読みにくいんだった、今回は途中で読むのをやめてしまった。

    • yyさん
      ひまわりさん、こんにちは。

      レビューの「今回は読むのを途中でやめてしまった」のところ。
      あるんですよね、時々そういう本に出合ってしま...
      ひまわりさん、こんにちは。

      レビューの「今回は読むのを途中でやめてしまった」のところ。
      あるんですよね、時々そういう本に出合ってしまう。
      期待して読み始めたのに、途中から「違うかな」とか「難しくて無理!」っていう本。
      そういう時、私はブクログを諦めて「抹殺」してしまうのだけど、
      こうやって表現するのもありなんだって、感心してしまいました。
      2024/03/30
    • ひまわりさん
      yyさん、こんにちは。
      私も合わない本は抹殺してました。
      忘れて、また借りてしまうのです、図書館で。
      なので残してみることにしました
      yyさん、こんにちは。
      私も合わない本は抹殺してました。
      忘れて、また借りてしまうのです、図書館で。
      なので残してみることにしました
      2024/03/30
  • 奥深さが良い一冊。

    海辺に佇む小さな旅館を舞台に本と宿泊客の生き方を結んだ連作短編集。

    名だたる文豪の作品が寄贈されてある「海老澤文庫」から、若女将が宿泊客にぴったりの一冊を選んでくれるというストーリー。

    誰もの"今の心"にリンクする一冊が見事で、若女将の寄り添いの距離感も程よくて一話進むごとにこちらまで心ほぐされ、ほっこり。

    でもそれだけで終わらない、過去の業に斬り込んだ奥深い展開が秀逸。

    こういう話にはめっぽう弱い。

    導き出された善悪の先の指針がスッと心に沁み込みんでくる。

    今さらだけれど「こころ」を読んでみたい。

    • あいさん
      くるたん、お久しぶり(^-^)/

      ブクログを公開してまた始めようと思うよ。
      プロフィールにも少し書いたけど、結構辛かった。
      また...
      くるたん、お久しぶり(^-^)/

      ブクログを公開してまた始めようと思うよ。
      プロフィールにも少し書いたけど、結構辛かった。
      またゆっくりくるたんの本棚を見させてね。
      私のことは、たんたんでも、けいたんでも、あいちゃんでも、好きに呼んでいいよ(笑)

      この本どんな本か知りたくても、読んでいる人が少なくて、ろこちゃんが読んでいて助かる〜
      さすがです!
      過去の業、私も絶対好きだなぁ(*≧艸≦)
      紹介ありがとう。
      2024/04/12
    • くるたんさん
      たんたん!お久しぶり。゚( ゚இ‸இ゚+)゚。

      プロフィール読ませてもらったよ。
      大変だったんだね。哀しみたくさん乗り越えたたんたん、お疲...
      たんたん!お久しぶり。゚( ゚இ‸இ゚+)゚。

      プロフィール読ませてもらったよ。
      大変だったんだね。哀しみたくさん乗り越えたたんたん、お疲れ様。

      心よりお悔やみ申し上げます。

      やっぱり「うさぎになった日」読んでるね♡もうさ、キュンキュンしちゃうイラストだよね。

      本棚がめちゃくちゃ共読本があってうれしい(♡︎´艸`)

      この本はなかなか良かったよ。
      表紙も好きってのもあるんだけど、読むにつれて…。
      良かったら読んでみてね✩⡱
      2024/04/13
  • なとり記
    https://natoriki.theblog.me/

    Home | Naffy
    https://www.na-ffy.com/

    筑摩書房 文庫旅館で待つ本は / 名取 佐和子 著
    https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480805133/

  • この作家さんは、図書館が好きなんだろうなぁと思う。「図書室のはこぶね」も学校図書館を舞台にした、時空を超えた物語だった。
    文章を書くのが得意で作家になる人と本を読むのが好きで、そのうち書く側にまわる人、きっとこの作家は後者のタイプでは?と妄想してしまう。
    物語の舞台となる凧屋旅館、文庫があって提供される料理はどれも美味しそう、しかも温泉もある。こんな旅館、あったら絶対泊まってみたい。

  • 終盤でなるほどこうきますか!という展開に。
    淡々と進むのかなあと思っていたからびっくり。
    個人的に、則子さんをひそかに応援してた(⁠◍⁠•⁠ᴗ⁠•⁠◍⁠)

  • 海を思わせる青色の表紙。本棚を背に立つ女性と"文庫旅館"の文字に興味をかき立てられた。

    夏の甲子園。「八月十五日、正午」に響くサイレンの音。序章ですぐ本の世界に引き込まれた。
    曽祖父に本読みをせがむ女の子はなぜ本を読むことができないのか…
    「別に悪い人間といふ程のものもゐないやうです。大抵田舎者ですから。」
    暗誦される一文が大きな意味を持つことが後に明かされていく。

    〈老舗「凧屋旅館」の若女将がすすめる本には、訪れる客と同じにおいがする〉
    本好きにはたまらない設定で、しかもその本が"文豪の古書"となればページをめくる手も自然に速まる。

    川端康成、横光利一、志賀直哉、芥川龍之介、夏目漱石 

    一冊目から三冊目までは、穏やかな海に立ち上がってくる波を感じる。
    においに敏感な若女将から今、必要とする客に手渡される一冊の本。
    四冊目の『藪の中』、そして海老澤文庫に置かれていなかった五冊目へと物語の移行がとても見事だった。
    さらりとした終わりを迎えるだろうとの予想をはるかに超えるもう一つの物語。本の繋がりが明かしていく"血のつながり" に心を揺さぶられた。

  • めちゃくちゃ面白い小説でした!
    古書を収めた文庫を併設する老舗旅館の若女将である円が、訪れるお客様に同じにおいを纏った文豪たちの小説をおすすめするという物語で、章ごとに1冊の小説が1人のお客様に読まれ、そのお客様の抱えている悩みや問題が晴れ、前に進んで行く・・・
    という、よくあるほっこり系のいいお話で、更に川端康成をはじめとする文豪たちの小説にその方の人生を照らし合わさって凄く面白いなと思いながら読み進めていたら、なんと、それだけじゃなく、まだその上を行く作品でした。
    そして、本というものをとても敬って描かれ、本の尊さをより深く感じた作品でした。
    登場した5冊の本を知らなくても面白く、というよりはそれらの本を読みたくなりまさした。

    ***ここからネタばれ***
    凧屋旅館、丹下家の歴史が明かされていくという、後半はまるでミステリーを読んでいるかのようでした。まさか円のひいおじいさんがこんな秘密を、罪を抱えていたなんて、丹下一家にこんな歴史があったなんて、こんな風に繋がっていくなんて、驚愕でした!第1章(1冊目)のお客様で、円に川端康成のむすめごころをすすめられた葉介が、凧屋旅館の文庫の持ち主であった海老沢さんの孫だったなんて!思いもしませんでした。

    円達と一緒にすべてを知った、海老澤呉一の息子であることが判明した葉介のお父さんさんが、円のおばあさんである女将に「どちらさま?」と聞かれ「兄さんだよ」と返答し、さらに女将が「にいさん、凧屋旅館へようこそいらっしゃいました」という場面は、頬に涙がつたいました。久しぶりに持った感情でした。

    5冊目の夏目漱石の「こころ」が、こんな風に重ねられるなんて、なんていう表現力なんだろうと、著者である名取佐和子さんに感動と尊敬を抱きます。

    近い内に「こころ」を読もうと思います。
    以前から読みたいなと思い、自分に文学作品は読めるのかな?と、読むタイミングを見計らっていたのですが、読みたい思いが強くなりました。

    いやぁ・・・
    本当に面白い素晴らしい作品だった・・・

  • 凧屋旅館の若女将、丹下円。
    旅館にある海老澤文庫から選ぶ古書は、彼女が宿泊客と同じ匂いがすると感じる本。そしてその本は、今求めているものがなにかを教えてくれる。5冊の本に導きだされた答えが、新しい一歩を踏み出すために必要なものであり、それぞれのこれからがよい方向に向かうことを願った。5冊めでは、海老澤文庫がどういうわけで凧屋旅館にできたのかなどがわかる。読み終えて、はじめの「序」をもう一度読むと感慨深かった。

  • 名取佐和子の文庫旅館で待つ本はを読みました。
    若女将の円が居る凧屋旅館には、文庫が置いてあるレトロな部屋があり、訪れるお客さんに若女将がお勧めの本を伝えます。
    5話構成です
    次が読みたくなる本です。
    一冊目は川端康成のむすめごころ。
    二冊目は横光利一の春は馬車になってです。
    三冊目は志賀直哉の小僧の神様
    四冊目は芥川龍之介の藪の中
    五冊目は夏目漱石のこころです。
    こころは高校の教科書に出てきました。
    最後に若女将の円が本の匂いで読めない真相も分かります。
    映画になってほしい本です。
    お勧めの一冊です。

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著者プロフィール

名取 佐和子(なとり・さわこ):兵庫県生まれ、明治大学卒業。ゲーム会社勤務の後に独立し、2010年『交番の夜』で小説家デビュー。著書に『ペンギン鉄道 なくしもの係』(第5回エキナカ書店大賞受賞)シリーズ、『金曜日の本屋さん』シリーズ、『シェアハウスかざみどり』『江の島ねこもり食堂』『逃がし屋トナカイ』『寄席わらしの晩ごはん』『七里ヶ浜の姉妹』『ひねもすなむなむ』『図書室のはこぶね』(京都府私立学校図書館協議会司書部会「中高生におすすめする司書のイチオシ本2022年度版」第6位、「埼玉県の高校図書館司書が選んだイチオシ本2022」第8位、うつのみや大賞2023第4位)ほか多数。

「2023年 『文庫旅館で待つ本は』 で使われていた紹介文から引用しています。」

名取佐和子の作品

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