- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480805140
作品紹介・あらすじ
新人作家の柳佳夜がある日エゴサーチすると同姓同名のVTuberがヒットした。なりすまし? その意図は? その正体を暴くべく奔走する柳が見たものは――
感想・レビュー・書評
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自分の身体はただの肉体でしかなくて。心が思うように動いてくれるものではなく、栄養を欲して、人間の温もりを欲して、自分の意識を縛る鎖のようなものだと気付かされた。前から人間という生き物の不自由さや面倒くささには気づいていたけれど、それを言語化したうえでさらに、人同士の身体の違いについて考えされられた小説だった。
人間が「体をもつ」ことの意味を突きつけられた。
読みやすかったしすごく考えてされられて面白かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
“身体”を疎ましく思う女性が主人公。彼女はツテを頼りに持ち込みでデビューした兼業作家だが、2作目が編集者に認められず苦しんでいる。そんなとき、エゴサーチで自分の筆名と同じYouTuberが注目を集めていることを知り……。
自分の身体に対する疑問、不信を突き詰めるとこうなるだろうという小説だった。精神の容れ物であるとしても、身体を生かすためには様々な要求に応えなければならないという矛盾や、女性であることの不合理がこれでもかと詰め込まれている。会社という組織の中でも彼女は異端だ。
ラストシーンは非現実的だが受け入れられた。 -
会社員として働きながら小説を書いている主人公が、エゴサーチに必死なところがリアルだった。
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凄い...。言葉・身体・存在・行動。それに向けられる悪意。それと葛藤する"人間"を抉る物語でした。ある場面では現実の差別が我が事のように悔しくて涙が出た。ある場面では言葉・身体・存在(例えばSNSアカウントも存在の一つ)・行動への希望を得た。
自分も身体への違和感や苦痛は子どもの頃から持っているけれど、それとは別に、性暴力に遭って以来後遺症でどんどん身体がままならなくなり、本もゆっくりしか読めなくなってしまった、そんなままならない身体の今ゆっくりでもこの本を読み終えることができて良かった。
ラストに向かう描写の悲哀というか皮肉というか、表現が正しいか解らないが"自分が成仏する"ような感覚を得た。主人公が"言葉の重み"を獲得するに至る場面に震えた。李琴峰さんの小説はどんどん凄い場所に昇っていく(語彙力がなくてすみません)。出会えて良かったし、ぜひ読んでほしい作家さんです。
個人的な身体感覚を一つ話すと、私は心に刺さる小説を読むと生きていることへの確信を得たように身体が内側から震え出して、地面から浮き上がるように魂が軽くなるのを感じる。どんな時も本は光。素敵な小説を読ませてくれてありがとうございます。
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こじらせた女性が主人公。イマイチ共感できないのは俺が男だからなのか。
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身体性をめぐる物語。ひとつひとつの体の動きに対する描写が執着的なほど細やか。登場人物たちのキャラクターもハッキリしていて、ページが進むほどに加速度が増す、脳の快楽物質があふれだす小説体験。
これまであまり自分の身体性について掘り下げて考えたことがなかったけど、そうか、身体が邪魔という考え方があったのねと思わされた。 -
柳佳夜は会社では佐藤慶子と名乗り、勤めの傍ら 小説を書いている.会社には同性愛者の優香、男の社員で福島亮太らがいる.小説家としてのライバルは山下菜摘(川上冬華)でかなり売れている.慶子はエゴサで自分の名前を他人が語っているのを知り、密かにその人物の特定を試みる.その過程が本書の中で最も楽しめた部分だ.中国系の小池嘉美がその張本人だと判明し、二人がやり取りする場面が面白かった.あまり公表されない小説家の実態が描写されているのが良かった.作者は台湾生まれだが、日本語を駆使できる能力は素晴らしいと感じた.
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現代の作家さんてそんなにエゴサしてるんだな…そうか……
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24.肉を脱ぐ
エゴサの先には何もないどころか、とって変わられた自分がいた
肉体に支配されたくない
見た目やジェンダーでない
ただこの心だけ、精神だけで生きたい
そんな彼女の気持ちが…わかる気もするけれど
それこそが最後の狂気へと向かわせる