母は死ねない (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房
3.50
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本棚登録 : 363
感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480815705

作品紹介・あらすじ

育てたい。愛したい。それだけの願いを叶えることが、こんなにも難しい――。一人として同じではない女性たちと著者自身の切なる声をたしかに聴き取る。

感想・レビュー・書評

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  • 著者の筆力を感じる渾身の1冊

    誰もが強烈な記憶に残る幾つかの事件を取り上げ
    その被害者家族の感情描写に心を痛め寄り添いたい気持ちになる

    また母としての呪縛、女性の生きづらさや持ちがちな悩みや葛藤が上手く表現されており全女性に、読んでもらいたい

    ワタシは最近、育児からの脱却を始めた

    https://note.com/ruly_yasuka/n/n66a729bfa16b

  • 壮絶な体験をした母達の記録だった。家族のあり方を真剣に考えていこうとする彼女達にエールを送りたい。

  • 「出産も、子育ても、
    自分の思い通りにいかない日々を積み重ねていく。
    その時間から、人生も人も思い通りにはできない
    というのを学んだ」

    この言葉は、最愛のわが子が失踪し、
    すべての力をかけて子を探した母が、
    子の死を受け入れた時に語られた言葉。

    圧倒されるというか、刺さるというか、
    語彙力無さすぎて表現し難いのだけれど
    残しておきたい言葉が他にもたくさんあった。

    その一部↓

    誰も好き好んで被害者になったわけではない。
    不条理な暴力にあっただけだ。
    その苦しみの上に、さらにスティグマを抱えて
    生きていかなければならないのだろうか。

    .

    私自身は、きっとこれからも間違い続け、
    不完全な母であり続けるだろう。
    また知らず知らずに、
    子供を傷つけてしまうに違いない。

    .

    人生は失うことの連続だった。
    これからも大切なものを失っていくのだろう。

    .

    いつかこの生を終える時が来るだろう。
    その日はゆっくりと来るかもしれないし、
    突然来るかもしれない。
    それでも人間はこの世に生を受けた時点で、
    終わりが必ずくる。
    生まれてすぐなくなる子もいれば、
    百二十歳まで生きる人もいるし、
    悲しい終わり方もある。

    .

    「花畑の花を踏みにじる権利なんて誰にもありません」

    .

    その日の情景はいまだに忘れられない。

    .

    子どもは母と一体化した相手ではなく、
    自分の思い通りにならない他者である。

    ...

    母は、人は、弱くても、不完全でもいい
    この本は、そう教えてくれた。

  • レポなのか?小説なのか?判別しかねる書き出し。
    借りた本でもあったので、3、4話で離脱。極端で、ちょっとついていけない、と思う私は、幸せ者か?

  • 命をお腹に宿した時、命をこの世に産み落とした時、その命に何かあった時、なぜ母親が苦しまねばならないのだろう。母親も一人の人間として喜びも苦しみも抱えて生きている。全ての母と子が一人の個として尊重されつつ大切にされる社会になることを願う。

  • 2023/10/22
    なぜそんなに人気なのかは分からなかった。

  • ちくまに連載された、さまざまな母が登場する17の短篇ノンフィクション。アベレージはもちろん高く、著者自身の話を含めてどれを読んでも静かに面白い。「母は死ねない」はこの作品のテーマや結論というよりは、ある話では著者の確信になったり、疑いの対象になったりしながら全編を漂っている。

  • 読み終えて
    自分の母親のことをしばらくの間考えた  

    ガリガリ君サイン
    知らなかった

  •  ここには様々な母が登場する。わが子を殺された母や難病の子を育てる母、精子提供で子を産んだり、特別養子縁組で子をもった人もいた。夫との関係も困難で、暴力や暴言で自尊心が失われた女性たちもいた。生き抜こうともがいても、死を選んだ母もいた。
     本書で取り上げた母や娘たちは、母であることの、あるいは母に対しての、理想と現実とのギャップに苦しんでいた。母親たちが「かくあるべき姿」があると思いこむ背景には、それぞれの問題だけが存在するのではない。母であることの美化も卑下
    も必要ない、かくあるべき親子も家族もないことに気づかせられる一冊だ。

    京都外国語大学付属図書館所蔵情報
    資料ID:659482 請求記号:367.3‖Kaw

  • 重かった。
    子育て大変なんて簡単に言えなくなってしまうほどに。感想もうまく言葉にできない。
    母は死ねない、ってそうだよね、と軽い気持ちだったけど、そんなもんじゃなかった。
    装丁からも静かな重みが伝わってくる。

    ここに出てくるのは母であり、娘である。
    そして不完全な1人の人間である。

    「らしさの呪縛」が心に残る。
    それは、気付かぬうちに自分の中にもあり、社会からも押し付けられるもの。

    いつでも思う。
    自分はちゃんと親できてるんだろうか、と。
    誰かと比べても仕方がないのに、比べてしまう。
    自己嫌悪にも陥るし、時に仄暗い安心を得たりもする。
    まさに不完全な自分を突きつけられるんだ。

    ここには、
    悲しい事件の被害者、難病を患うお子さん、特別養子縁組、同性で親になる事、お子さんを喪う事、自身が障がいを持っている事…どこかで自分がニュースの中の事としか考えていない方々が出てきて、その強さや、弱さや、語られる言葉は、自分にはすぐには消化できないものもあった。自分がもしその立場だったら、と考えても、何も出てこなくて、人は結局その立場にならないと分からないものなんだろう。その立場にたったって、どうしようもない中できっと無理くり進むしかないという感じなんだろうなと思う。分かるなんて偉そうなことはきっとできないから、ただ読み、受け止める事しかできないのだけど。

    親になりたかった人、なりたくなかった人、成り行きだった人みんな違っていいはずなのに。
    一度選んだ選択は全てではなく、そりゃ迷うこともあるし、前に進むことも、戻ることもあるのに
    どうして他人が何かを決めようとするんだろう?
    普通って言葉は使い方が難しいけど、少し特別な環境の方が多かったから、誹謗中傷の表現も多くて良くも悪くも人は1人では生きていけないのだと感じるが
    最近は、やはり簡単に負の言葉をぶつける事がとても気になる。
    逆もあるんだと思うのだけど。

    色々な感情が渦巻いてしまって上手く表現できない。
    耳に障がいをお持ちの母の強さが、とても印象に残った。
    特別養子縁組をされて移住した方が住む、人に優しい街も。


    親も子も別の人間で別の人生がある。

    母は死ねない、というか、死にたくない。
    自分が恵まれているから言える事なのかもしれないけど。子育て大変と愚痴をこぼしながら、自信なんて持てないままで、前に進む。

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著者プロフィール

河合 香織(かわい・かおり):1974年生まれ。ノンフィクション作家。2004年、障害者の性と愛の問題を取り上げた『セックスボランティア』が話題を呼ぶ。09年、『ウスケボーイズ 日本ワインの革命児たち』で小学館ノンフィクション大賞、19年に『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』で大宅壮一賞および新潮ドキュメント賞をW受賞。ほか著書に『分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議』『帰りたくない 少女沖縄連れ去り事件』(『誘拐逃避行――少女沖縄「連れ去り」事件』改題)、『絶望に効くブックカフェ』がある。

「2023年 『母は死ねない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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